【ベトナム進出/移住】SNS虚偽情報に最大5,000万VNDの行政罰
はじめに
2026年5月、ベトナム政府は新たな行政処分政令「174/2026/NĐ-CP」を公布しました。
本政令では、SNS上での虚偽情報や誤情報の共有に関する行政処分規定が強化・整理されており、最大で5,000万VNDの罰金が科される可能性があるとして注目を集めています。
なお、施行日は2026年7月1日です。
近年のベトナムでは、個人情報保護や電子商取引、広告、デジタルプラットフォームなどに関する規制整備が急速に進んでいます。
今回の政令も、そうした「デジタル空間全体の管理強化」の流れの一部として理解する必要があります。
一方で、SNS上では、「ベトナムでSNS投稿するとすぐ罰金」「言論統制が強化された」といった極端な情報も散見されます。
そこで本記事では、実際の政令内容をもとに、規制対象や罰金額、日系企業への影響について整理していきます。
本政令はSNSのみを対象としたものではありませんが、今回は特に企業実務との関係が深い「SNS・オンライン情報発信」に関する部分を中心に見ていきます。
「174/2026/NĐ-CP」とは?
- 政令:Nghị định 174/2026/NĐ-CP
- 公布日:2026年5月15日
- 施行日:2026年7月1日
正式には、『郵政・通信・無線周波数・電子取引・情報技術分野における行政違反処分に関する政令』という位置づけで、SNSだけを対象とした法律ではありません。
つまり、本政令は、「SNS・通信サービス・電子取引・デジタルプラットフォーム・ITサービス・オンライン情報発信」など、ベトナムのデジタル空間全体に関わる行政違反を整理した「包括的な行政処分ルール」に近いものです。
今回SNS規制が大きく注目されています。
ですが、実際には本政令の対象範囲はかなり広く、全8章・117条で構成されています。
どのような行為が対象になるのか?
今回、特に注目されているのは、「SNS利用に関する責任」に関する規定です。
政府系発表や法律情報サイトによると、以下のような行為が処分対象として挙げられています。
VND 20,000,000 〜 VND 30,000,000 の罰金対象
対象となるのは、以下のような情報の提供・共有行為です。
- 虚偽情報
- 誤情報
- 歪曲情報
- 誹謗中傷
- 組織の信用毀損
- 個人の名誉・人格侵害
- 公序良俗違反
- 売春・人身売買の助長
- わいせつ情報
- 社会倫理や公衆衛生に悪影響を与える情報
など
VND 30,000,000 〜 VND 50,000,000 の罰金対象
さらに重い区分として、次のようなものが対象として挙がっています。
- 国家機密の漏洩
- 個人の秘密情報漏洩
- 社会不安を引き起こす虚偽情報
- 経済・社会活動に損害を与える情報
- 国家機関の活動を妨害する情報
など
ここで重要なのは、単なる「間違い投稿」ではなく、「社会的影響がある」と判断される虚偽情報が重い処分対象となっている点です。
なお、罰金対象が掲載された報道内容等は、以下のリンク先もご参考になれます。
- 参考:『SAIGON News – Vietnam to hike fines for social media violations under new decree』
- 参考:『media.chinhphu.vn』
投稿削除・アカウント凍結も対象
また、今回の政令では罰金だけでなく、是正措置 “buoc khac phuc hau qua” も規定されています。
具体的には、
- 違反コンテンツの削除
- 情報の訂正
- アカウントやページ、コミュニティグループ等に対する停止措置
などが命じられる可能性があります。
外国企業・外国人も対象
政令の適用対象には、ベトナム国内の個人・組織だけでなく、外国の個人・組織も含まれています。
そのため、日系企業のベトナム法人だけでなく、
- ベトナム向け公式SNS
- ベトナム市場向け広告
- KOL施策
- ベトナム語コンテンツ
なども、実務上は注意対象になり得ます。
もっとも、「海外企業の全投稿が即規制対象」という意味ではありません。
実際には、
- ベトナム市場向けか
- ベトナム国内で影響があるか
- ベトナム語発信か
などによって、執行可能性は変わると考えられます。
日系企業が特に注意すべきポイント
今回の政令は、政治的投稿だけの話ではありません。
むしろ、実務上は以下のような企業SNS運用に影響が出る可能性があります。
①比較広告・誇張表現
例えば、「No.1」「唯一」「絶対」「100%保証」「業界最高」など、根拠が曖昧な誇張表現については、今後より慎重な運用が求められる可能性があります。
特に、競合比較や数値訴求を行う場合は、
- 出典
- 調査根拠
- 比較条件
を明確にしておくことが重要になります。
②KOL・インフルエンサー施策
ベトナムでは近年、インフルエンサーマーケティング規制も強化傾向にあります。
企業側としても、
- 誤情報投稿時の責任分担
- 削除対応や当局対応
などを契約上整理しておく必要性が高まっています。
③従業員のSNS発信
個人アカウントであっても、次のようなものを扱う場合は、企業側のリスク管理が重要になります。
- 会社情報や業務関連情報
- 顧客の個人情報
特にベトナムでは、「個人投稿」と「企業活動」の境界が日本より曖昧に見られるケースもあるので注意が必要です。
ベトナムは“規制が緩い市場”ではなくなっている
かつて、ベトナムは「成長市場だが、ルールはまだ緩い」というイメージで語られることもありました。
しかし現在は、個人情報保護を始めとして、広告やEC規制、データやSNS管理などの制度整備が急速に進んでいます。
今回の「174/2026/NĐ-CP」も、そうした流れの延長線上にあると考えるべきです。
おわりに
本政令により、ベトナムではSNS上の虚偽情報に対する行政処分が大幅に強化されました。
一方で、「SNS投稿したら即罰金」というほど単純な話でもありません。
重要なのは、次の点を理解することです。
- どのような情報が問題視されるのか。
- どのような運用リスクがあるのか。
- 企業としてどう管理体制を整えるべきか。
今後、ますます「情報発信の正確性」が重要になっていく可能性があります。
ベトナムは依然として大きな成長市場です。
一方で、「ルールが未整備な市場」ではなくなりつつあることも、同時に理解しておく必要があるでしょう。