【現地情報】ハノイ市、歩道使用料引き上げの背景
はじめに
2026年5月、ハノイ市人民評議会(HDND Ha Noi)は、歩道・車道の一時使用料改定案を可決しました。
これにより、ハノイ中心部では、
- 歩道を利用したバイク駐車
- 路上駐車
- 一部の公共空間利用
にかかる料金が大幅に引き上げられる予定です。
ネット上では、
- 「歩道利用が有料化される」
- 「店前駐車が厳しくなる」
- 「店舗ビジネスがさらに苦しくなる」
といったような声も見られます。
実際のところ、「歩道利用料」という制度自体は以前から存在しており、今回の動きは「既存制度の本格運用・徴収強化」と理解した方が実態に近いでしょう。
本記事では、
- ハノイ市の歩道使用料制度とは何か
- 今回何が変わるのか
- なぜ増額されるのか
を、実際の議決文や報道をもとに整理します。
ハノイ市では以前から「歩道利用料」が存在
まず前提として、ハノイ市では以前から「歩道・車道の一時使用料」が制度化されています。
その根拠となるのが、「Nghi quyet 06/2020/NQ-HĐND」です。
正式名称は「ハノイ市人民評議会の決定権限に属する手数料・使用料に関する規定」です。
この議決では、各種使用料、行政手数料などがまとめて規定されています。
そしてその中に、歩道・車道の一時使用料が含まれています。
具体的には、
- バイク駐車
- 自動車駐車
- 工事用スペース
- 一時利用
などに対し、㎡単位で料金が設定されています。
つまり、「歩道利用に料金が発生する」という制度自体は、2020年時点で既に存在しています。
今回の改定による大幅値上げについて
「Nghi quyet 10/2026/NQ-HĐND」による改訂
今回話題になっているのは、「Nghi quyet 10/2026/NQ-HĐND」です。
これは、「Nghi quyet 06/2020/NQ-HĐND」の一部修正・補足を目的とした議決です。
この議決では、主に、
- 歩道・車道の一時使用料の改定
- エリア別料金体系の見直し
- 一部制限道路の追加
- 使用料水準の引き上げ
などが行われています。
特に特徴的なのは、「都市中心部ほど高くなる」という料金設定です。
何が変わるのか?|中心部では大幅値上げへ
今回の改定で最も大きなポイントは、歩道・車道使用料の大幅引き上げです。
特にハノイ中心部では、自動車とバイク駐車に関する料金が大きく上昇します。
報道によれば、以下の価格にまで引き上げられる予定です。
- 自動車:一部中心エリア・用途区分において、最大40万VND/㎡/月
- バイク:一部中心エリア・用途区分において、最大22万VND/㎡/月
さらに今回の改定では、環状1号線・環状2号線・環状3号線など、エリア区分がより細分化されました。
つまり、「都心部ほど高い」という構造になっているわけです。
特に、ホアンキエム区、バーディン区、ドンダー区といった交通量・商業密度の高いエリアでは、負担増が大きくなる見込みです。
注意:お金を払えば歩道営業OKではない
ここで重要なのは、「使用料を払えば自由に歩道利用できる」という制度ではない点です。
近年のハノイ市は、料金徴収だけでなく、同時に以下の取り締まりを強化しています。
- 歩道占拠
- 違法駐車
- 無許可営業
特に旧市街周辺では、歩行空間確保や景観改善を目的とした歩道整理が、継続的に行われています。
つまり今回の改定は、無許可の歩道営業を広く認めるものではありません。
「許可された利用について、より厳格に管理・徴収する」方向性だと考えられます。
ハノイ市が使用料を引き上げる理由
深刻な交通問題
今回の値上げの背景には、ハノイ市の深刻な交通問題があります。
現在のハノイでは、自動車とバイクの増加が続いており、交通インフラ整備が追いついていません。
特に交通量の多い中心部では、「慢性的な渋滞・違法駐車・歩道占拠」が長年問題視されています。
そのためハノイ市は、中心部への車両流入抑制や駐車コストの可視化、公共交通利用促進や歩行空間確保を進めようとしています。
つまり今回の値上げは、単なる「財源確保」という視点だけではなく、都市交通政策とも連動した施策なのです。
背景にあるのは「管理型都市化」
今回の動きを理解する上で重要なのは、「ハノイ市が今後どんな都市を目指しているのか」という視点です。
近年のハノイでは、排ガス対策や公共交通強化、都市景観改善などが徐々に進められています。
公共空間の管理体制を強化することで、東南アジア特有のカオス型都市から、より管理・制度化された都市へ移行していく流れとも言えます。
今回の歩道使用料改定も、単なる「値上げ」ではなく、
- 歩行空間の整理
- 駐車需要のコントロール
- 中心部への車両流入抑制
- 公共交通への誘導
といった、都市管理政策の一部として見ることができます。
実際、近年のベトナムでは、
- 行政再編
- 都市圏形成
- 経済回廊政策
- ハノイ首都戦略
など、国家レベルで都市構造そのものを再設計する動きが進んでいると考えられます。
つまり今回の歩道利用料改定も、そうした「管理型都市化」の流れの中で理解すると、単なるローカルニュースではなく、ハノイの都市設計変化の一部として見えてきます。
なお、このハノイ都市改革や国家戦略については、以下の記事で詳しく解説しています。
店舗ビジネスへの影響は避けられない
今回の制度変更は、特に路面店ビジネスへ影響が出る可能性があります。
例えば、飲食店、カフェ、美容室、小売店などです。
ベトナムでは、「店前にバイクを停めやすい」ことや「店前にバイクが多いことが繁盛している証拠」として、バイクの店前駐車が集客力の一部になっているケースも少なくありません。
そのため、駐車料金上昇、駐車スペース縮小、店舗前利用制限などが進めば、店舗運営コストや集客動線にも影響が出る可能性があります。
特にハノイ中心部では、今後さらに、駐車規制、歩道管理、路上利用規制が強化されていく可能性が高いでしょう。
おわりに|これは「都市の変化」の話
今回の歩道使用料改定は、単なる値上げニュースではありません。
その背景には、都市インフラ不足と並行して進む「管理型都市化」という、ハノイ市全体の方向転換があります。
2020年の時点で制度自体は既に存在していましたが、2026年、ハノイ市はその制度を、本格運用へ進めようとしているように見えます。
日本企業や在住者にとっても、店舗戦略、不動産選定、エリア選びを考える上で、無視できない変化になりそうです。