【現地情報】ベトナムカフェから音楽が消えた?政令134号の影響

【現地情報】ベトナムカフェから音楽が消えた?政令134号の影響

はじめに

ベトナムでは「カフェから音楽が消えた」

2026年7月現在、このようなニュースが話題になっています。

ベトナムメディア「Dân Trí」では、「音楽ライセンス料を前に、あるカフェオーナーがAI音楽の利用を検討している」という内容の記事が掲載され、多くの関心を集めました。

もちろん、全てのカフェが無音営業になったわけではありません。
ですが、店舗で流すBGMをめぐり、著作権制度への関心が高まっています。

そして、その背景には「政令134号(Nghi dinh 134/2026/ND-CP)」があります。

背景にある「政令134号」

政令134号とは?

政令134号(Nghi dinh 134/2026/ND-CP)

ベトナムの知的財産法に基づく著作権・著作隣接権に関する施行令(政令17号)を改正・補足した政令

  • 公布日:2026年4月6日
  • 施行日:2026年4月9日

この政令では、AIやデジタルコンテンツの普及など、近年の技術やビジネス環境の変化に対応するため、著作権制度の運用ルールが見直されました。

政令134号の主な改正内容

①AIと著作権

生成AIの普及に伴い、「AIを利用して制作した作品の著作権をどう考えるか」という点が整理されました。人間が創作に実質的に関与した作品については、著作権保護の対象となり得ることが示されています。

②AI学習に関するルール

AI開発における学習データ(Text & Data Mining)の利用についても、運用ルールが整備されました。

③商業施設で流すBGM

カフェやレストラン、ホテル、ジムなど、商業施設で音楽を利用する場合の著作権・著作隣接権に関する運用が、より明確になりました。

④プラットフォーム事業者の責任

YouTubeやFacebookなどで著作権侵害コンテンツが投稿された場合の、サービス提供者の責任についても整理されています。

⑤著作権登録のデジタル化

著作権登録や申請手続きの電子化・デジタル化も進められています。

「カフェから音楽が消えた」と言われる理由

今回ニュースになっているのは、③に関する部分です。
以前から、店舗で音楽を利用する場合には、著作権・著作隣接権への配慮が必要とされていました。

しかし、政令134号の施行後、制度運用への関心が高まりました。
そして、音楽著作権管理団体であるVCPMCや、録音物の権利を管理するIPCCなどから、店舗へ利用許諾契約やロイヤルティ支払いに関する案内が送られるケースが増えています。

その結果、多くの店舗戸惑うようになりました。

  • 店舗で流している音楽は対象になるのか…。
  • Spotify PremiumやYouTube Premiumでも利用できるのか…。
  • どのような手続きが必要なのか…。

実際にベトナムメディアでは、

  • 当面はBGMを流さない。
  • AIが生成した音楽へ切り替える。
  • 著作権フリー音源を利用する。
  • テレビ放送のみを流す。

といった対応を検討するカフェオーナーの声も紹介されています。

日本企業への影響

この問題は、カフェやレストランだけの話ではありません。
ベトナムで事業を行う企業が、

  • ショールーム
  • オフィス
  • ホテル
  • 美容室
  • ジム
  • 商業施設
  • イベント会場

などでBGMを利用する場合も、著作権・著作隣接権への配慮がこれまで以上に重要になる可能性があります。

また、本政令ではAIやデジタル分野のルールも整備されています。
このことからも、ベトナムが知的財産保護をより重視する方向へ進んでいることがわかります。

おわりに

「カフェから音楽が消えた」というニュースは、一見すると小さな話に思えるかもしれません。

しかし、その背景には、ベトナムが知的財産保護を国際的な水準へ近づけようとする法制度の整備があります。

ベトナムで起きているのは、経済成長だけではありません。
法制度やビジネスルールも急速にアップデートされているのです。

こうした変化は、ベトナム進出を検討する企業にとっても知っておきたい重要な動きと言えるでしょう。