【ベトナム進出/移住】ベトナムが「公証」を減らそうとする理由
はじめに
ベトナムでビジネスを始めると、必ず一度は出会う言葉があります。それが「公証(công chứng)」です。
正直に言うと、私自身も最初は「具体的に何をするのか」を知りませんでした。
理由はシンプルで、自分自身で「やったことがなかったから」です。
しかし、ベトナムで会社設立や契約業務に関わると、この「公証」は避けて通れない存在になります。
そして今、その公証に関して一つの変化が起きようとしています。
ベトナムでは、一部の取引について「公証を必須としない」方向での見直しが検討されています。
では、そもそも公証とは何なのか。そして、なぜ今それが減らされようとしているのか。
今回は、ベトナム進出における「公証」の流れや、ベトナムが「公証」を減らそうとする理由を解説します。
「公証」とは何か?
公証とは、簡単に言えば、「その書類や契約が、正式なものであることを第三者が証明すること」です。
- この契約は本人が締結したものなのか。
- この署名は本物なのか。
- この書類は正しい内容なのか。
こうした点を、公的な機関が確認し「間違いない」と認めるのが公証です。
つまり、公証の役割を一言で言えば、“信頼の担保”です。
公証は「いつ」に必要なのか?
ベトナムでは、日本と比べて公証が必要になる場面が多いです。
代表的な例を挙げると、次のような時に公証を行います。
- 会社設立時の書類
- 委任状(代理人に手続きを任せる場合)
- 売買契約(特に不動産)
- 各種証明書の翻訳文書
- 外国企業関連の契約書類
例えば、日本の親会社がベトナム法人に権限を委任する場合、その委任状を「本物である」と証明するために公証が必要になります。つまり、公証は、“関係者同士の信頼だけでは足りない場面”で使われるものなわけです。
公証は「どこ」で行う?
では、公証はどこで行うのか。これはケースによって異なります。
ハノイで公証する場合
ハノイでは、各地にある公証機関で手続きを行います。
例えば、 Phòng Công Chứng Nhà Nước Hà Nội のような国家公証局のほか、認可を受けた民間の公証事務所も存在します。
ここでは主に、次のような書類の公証が行われます。
- ベトナム国内で使用される書類
- 契約書や委任状、翻訳文書 など
なお、外国語の書類であっても、ベトナム語への翻訳、及び、適切な手続きを経ることで公証が可能です。
日本で公証する場合
一方、日本で作成した書類をベトナムで使用する場合は、日本側での公証が必要になります。
手続きは、日本公証人連合会に所属する各地の公証役場で行われます。
さらに、その書類をベトナムで有効にするためには、以下のような認証手続きが必要となる場合があります。
- 公証 → 外務省による認証 → ベトナム大使館による認証
ただし、必要な手続きは、書類の種類や提出先によって異なるため、個別に確認することが重要です。
最近のベトナムの「公証」に対する動き
最近、ベトナムでは、「一部の取引について、公証を義務としない方向での見直し」が行われています。
つまり、「必ず公証しなければならない」取引を減らしたり、より簡易な手続きへ移行する、といった流れです。
一見すると、「手続きが楽になる」「コストが下がる」というポジティブな変化に見えます。
では、なぜこのような動きが出ているのでしょうか。
参考:VN EXPRESS – Du kien bo 6 giao dich buoc phai cong chung
なぜベトナムは公証を減らそうとしているのか
結論から言えば、公証に依存してきた手続き構造を見直す動きの一環と考えられます。
①手続き負担の軽減
公証には「時間」「費用」「手間」がかかります。
ビジネスのスピードが求められる中で、これらのプロセスが負担となっている側面は否定できません。
特にスタートアップや中小企業にとっては、手続きの簡素化は大きな意味を持ちます。
②デジタル化との整合性
現在、ベトナムでは行政のデジタル化が進められています。
一方で、公証は、
- 対面手続き
- 原本確認
- 物理署名
を前提とする仕組みです。
こうした特性は、オンライン化との整合性という観点で見直しの対象になりやすいと考えられます。
③公証の役割の再整理
公証は本来、書類の真正性を担保する仕組みです。
一方で、
- 契約内容そのものの妥当性
- 将来的なリスクの有無
までを保証するものではありません。
そのため、「どこまでを公証に依存すべきか」という役割の見直しが進んでいる可能性があります。
「公証」が減って変わること
公証が減ることで起きる変化の一つは、責任や判断の重心の変化です。
これまで、公証という仕組みは、第三者によって書類の真正性を確認し、一定の信頼性を付与する役割を担ってきました。一方で、公証の関与が減る場合、当事者自身による確認や判断の重要性が相対的に高まると考えられます。
言い換えれば、信頼の一部を外部に委ねることから、自ら判断していく比重が高まる方向への変化とも捉えることができます。
もちろん、これはすべてが自己責任に置き換わるという意味ではありません。
実務上は専門家や契約プロセスなど、別の形での担保も引き続き重要になります。
ただ、今回の動きは少なくとも、「どこまでを制度に依存し、どこからを自ら判断するのか」というバランスを見直す流れの一端である可能性があるでしょう。
おわりに
公証とは、本来「信頼を担保する仕組み」でした。一方で、手続きの複雑さやコスト、スピードとの関係性といった観点から、その在り方について見直しが議論されることもあります。
今回の動きは、単なる制度変更として捉えるだけでなく、“信頼をどのように担保するのか”という考え方の変化として見ることもできるかもしれません。
そしてこれは、ビジネスにおいても同じです。
「形式として整っているか」ではなく、「実態として機能しているか」
その視点を持てるかどうかが、意思決定の質を大きく左右します。
ベトナムでの事業や経営判断においてお困りのことがあれば、状況に応じた最適な進め方を一緒に整理することも可能です。お気軽にご相談下さい。