【ベトナム市場分析】急成長ブランド「Coolmate」の戦略
はじめに
ベトナム市場において「急成長ブランド」と聞くと、テクノロジー企業やフィンテック企業を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、2026年現在では、*D2Cブランドが急速に存在感を高めています。その代表例が、ベトナム発のアパレルブランド「Coolmate(クールメイト)」です。
Coolmate は単なる衣料ブランドではありません。EC・SNS・データ活用を前提とした、新しいアパレルモデルとして急成長しています。
本記事では、「Coolmateとは何か」「成長を続ける理由」を解説します。
*D2C:製造者(メーカー)が、仲介業者や小売店を通さず、自社のECサイト等で、消費者に直接販売するビジネスモデル。
Coolmate とは何か?
Coolmate は、ベトナム発のD2Cアパレルブランドです。主に男性向けの「Tシャツ・下着・ベーシックウェア」を中心に展開しています。
最大の特徴は、従来のアパレルのような「店舗中心の販売」「中間業者を挟んだ流通」ではなく、自社ECを軸とした直販モデルを採用している点です。
(参考:オフィシャルサイト)
近年では、イオンモールなどの商業施設での展開も見られます。このことから、オンライン中心のビジネスモデルから、オフラインへの拡張フェーズに入っていることが伺えます。

運営会社情報
Coolmate は、 CÔNG TY TNHH FASTECH ASIA によって運営されています。
- 社名:CÔNG TY TNHH FASTECH ASIA
- 本社:ハノイ(ベトナム)
- 設立:2019年2月20日
同社は、商品企画・EC販売・マーケティング・顧客データ管理を内製化する統合型D2Cモデルを採用しており、中間コストの削減やデータ活用による改善サイクルの最適化を実現しています。
拡大規模感|売上・ユーザー数
Coolmate は、ベトナムにおけるD2Cブランドの中でも特に急成長している企業です
- 売上:約3,500万USD 規模(推定)
- 顧客数:約120万人以上
- 注文数:累計500万件以上
また、同社は複数ラウンドの資金調達にも成功しており、グローバル投資家からの評価も高いです。
そのため、ベトナム国内のスタートアップの中でも成長性の高い企業として注目されています。
(参考①:VIETNAM.VN – 10 Vietnamese startups attract 4 trillion VND in funding)
(参考②:VIETNAM.VN – Coolmate successfully raises Series C funding, expanding its development strategy)
Coolmateのビジネスモデル
Coolmate の特徴は、ベトナム市場に最適化されたビジネスモデルを構築している点にあります。
重要なのは、「何を売っているか」ではなく、「どういった構造で売っているか」です。
①低関与商材への特化
Coolmateが扱うのは、Tシャツ・下着・ソックスといった、いわゆる*低関与商材です。
低関与商材には、次のような特徴があります。
- ブランド比較されにくい
- 強いこだわりが生まれにくい
- 定期的に買い替えが発生する
つまり、「選ばれなくても売れる」構造を作れる領域と言えます。
*低関与商材:消費者が購入時にほとんど考えず、手間や時間をかけずに選ぶ商品・サービスのこと。
②選ばせないという戦略
一般的なアパレルは、「多数の商品展開」「トレンドやブランド訴求」によって「選ばせる」ビジネスです。
ですが、Coolmateは逆です。
- 商品数を絞る。
- ベーシックに特化する。
- セット販売を前提にする。
つまり、比較や検討そのものを発生させないわけです。
これは単なるシンプル化ではありません。判断コストを削減する戦略です。
特に低価格帯の消費財においては、次のような特徴があります。
- 比較するほどの価格差がない。
- 品質差も体感しにくい。
- 購入の優先度が低い。
この領域では、「どれが良いか」よりも「早く決められるか」の方が価値になります。
Coolmate は、自分たちの領域を理解した上で、ここを正確に捉えています。
さらに、「男性ユーザーは購買意思決定がシンプル」「ベトナム市場は価格と合理性を重視する」という前提と組み合わさることで、「考えなくていいこと」がそのまま価値になるという構造を作っています。

③EC前提の構造(オフライン後付け)
Coolmate は最初から、EC・SNS・データを前提にビジネスを構築しています。
これは、従来の日本に見られるような「店舗 ⇒ EC」ではないことがわかります。
現在のオフライン展開は、
- ブランド認知の補完
- 体験機会の提供
という位置付けであり、主戦場はあくまでオンラインです。
④アパレル × データの構造
Coolmate の本質は、ここです。
同社は、
- 購買履歴
- リピート頻度
- 商品ごとの回転率
といったデータを蓄積し、「商品改善」「在庫やマーケティング最適化」に活用しています。
これは構造的には、SaaS企業に近い思考と言えるかもしれません。
このモデルが成立している背景には、EC市場が急成長していたり、スマートフォン中心の生活というベトナム市場特有の構造があります。Coolmate は、ビジネスとして「良いモデル」ではなく、「この市場で勝てるモデル」を作っているとも言えます。
なぜ、 Coolmate は急成長しているのか?
Coolmate の成長は、単に「良い商品を作っているから」だけでは説明できません。
むしろ、市場構造・消費行動・EC環境との一致が成長の本質です。
本章では、第三者情報や公式データを基に整理します。
①未成熟市場における“空白ポジション”の獲得
ベトナムのアパレル市場は、以下のような構造になっています。
- 低価格帯:ローカル製品中心で品質にばらつきがある。
- 高価格帯:インポート/国際ブランド中心で価格が高い。
この間に、「手頃な価格で品質の安心感があるベーシックブランド」のポジションは長らく空白でした。Coolmateはこの空白をD2Cモデルで埋めています。そのため、同社は2019年の創業以来、このモデルで500万件以上の注文を達成し、顧客基盤を着実に築いてきたわけです。
②中間層の拡大と“合理的消費”へのシフト
ベトナムでは中間層が増加しており、消費行動にも変化が見られます。
この層の消費特徴は以下の通りです。
- 安すぎるものには不安を感じる。
- かといって、ブランド料にはそこまで価値を感じない。
- 「安心できる品質」と「納得感のある価格」を求める。
つまり、“コスパ”ではなく“納得感”で買う層です。
Coolmate の商品ラインは、Tシャツ/下着/ソックスといった“ベーシック衣料”を中心としています。
品質や素材に一定のこだわりを持ちながら、比較的手頃な価格帯で提供されているわけです。
③SNSが購買判断の主要導線になっている
ベトナムではSNSが単なるコミュニケーションツールを超えて、検索・比較・購買の起点として機能しています。
特に若年層・都市部を中心に、FacebookやTikTokで新ブランドを知ります。
そして、そこで最初の印象や評価が形成されるケースが増えています。
この傾向は、EC商品の場合に、SNSで「見た瞬間の意思決定」が起きやすいという消費行動構造に繋がっています。
CoolmateもSNS上での広告・UGC・インフルエンサー施策を強化しています。そして、ブランド認知から購買への導線として大きな役割を果たしています。
成長の本質:判断コストの最適化
Coolmate の成功は、以下のポイントが一貫して噛み合っていることです。
- 比較検討を限定する商品設計
- SNSを中心とした集客導線
- データを活用した改善サイクル
- オンライン起点の購買体験
これらはすべて、ユーザーの購買判断コストを下げる構造になっており、結果として急成長に繋がっています。
おわりに
ベトナム市場を理解する上で重要なことの一つは、「派手な成長」だけでなく、構造的に勝っているビジネスを見ることです。
Coolmate は、一見するとシンプルなアパレルブランドです。しかし実態は、「EC・SNS・データ・UX設計」が統合された、非常に戦略的なモデルです。こうした企業は、気づかないうちに市場のスタンダードになっていきます。
普段とは違った角度からものごとを見ることは大切です。そのためにも、なるべく的確な情報をもとに戦略を考えることをおすすめします。
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