【現地情報】ベトナム・ハノイ|日韓投資戦略の決定的な違い

【現地情報】ベトナム・ハノイ|日韓投資戦略の決定的な違い

はじめに

ここ数年、日本企業のベトナム進出において、ホーチミン一極集中から北部エリアであるハノイへと視線が移りつつあります。なぜなら、製造業だけでなく、飲食、サービス、不動産、ITなど、あらゆる分野で新たな可能性が見え始めているからです。

しかし、ここで一つ重要な視点があります。それは「日本企業が見ているハノイ」と「実際にベトナム市場が動いているハノイ」には、少なからずギャップが存在するという点です。

現在、多くの外資企業がベトナム投資に積極的です。中でも目立つのは、韓国・中国・日本といったアジア勢の存在です。そして都市部、特に若年層市場では、韓国トレンドの影響力が年々強まっています。

ファッション、飲食、サービス、美容、空間デザイン、ブランディングに至るまで、韓国式の考え方や表現は、すでにベトナム人の日常に自然に溶け込んでいます。

つまり、日本企業がこれまでの成功体験の延長線上で進出すると、「商品やサービスは良いが、なぜか選ばれない」という状況に陥るリスクが高まっているのです。

だからこそ今、必要なのは感覚的な進出ではありません。現地の投資動向・エリア特性・競合国の戦略を正しく観察し、最初から“勝つ設計”を組んだうえで進出することです。

本記事では、ハノイを舞台に、

  • 日本と韓国の投資重要度の違い
  • 日本人エリアと韓国人エリアの違い
  • 投資の入り方・広げ方の違い
  • 飲食・サービス業に見る思想と設計の差
  • 日本式と韓国式の「勝ち方の違い」

を軸に、MISSION.Hの視点から日本と韓国の投資戦略の違いを考察していきます。

第一章|そもそも日本と韓国は、ベトナムに対する投資の重要度が違う

日本と韓国では、そもそもベトナムに対する「投資の位置づけ」が大きく異なります。
この違いは、現地にいる駐在員・在留者数を見るだけでも、かなり明確に表れています。

日本から見たベトナム

まず日本から見てみましょう。

日本は世界中に幅広く投資する「分散型」の投資国家です。外務省の集計データによれば、2025年10月1日時点におけるベトナム在留邦人数は16,636人、そのうちハノイ在住は5,853人となっています。これは集計拠点がハノイであるため、実質的には北部エリア全体を示す指標と捉えることができます。

この数字をグローバルで見ると、ベトナムは日本人在留者数が多い国として世界16位、都市別ではハノイは30位に位置します。つまり、日本にとってベトナムは重要市場ではあるものの、「最重要市場群の一角」というよりは、数ある投資先の一つという位置づけに近いと言えます。

参考:外務省|海外在留邦人数調査統計(2025年10月1日現在)

韓国から見たベトナム

一方、韓国の場合は様相が大きく異なります。

韓国外務省のデータによれば、ベトナム在留韓国人数は192,683人、そのうちハノイには88,811人が居住しています。こちらも同様に、集計拠点がハノイであるため、北部エリア全体の動向を示す指標として読むことができます。国別で見ると、ベトナムは韓国人在留者数が多い国として世界4位に位置します。

単純比較しても、ハノイにおける日本人と韓国人の在留者数には、圧倒的な差が存在します。

この数字が示しているのは、単なる人口差ではありません。
韓国にとって、ベトナム、そしてハノイは「周辺市場」ではなく「戦略中核市場」であるという事実です。

参考:재외동포청|재외동포현황(2025)*リンク先PDF

日本と韓国の投資意識の違い

つまり、

  • 日本:グローバル分散投資の中の一拠点
  • 韓国:アジア戦略の中核拠点

という位置づけの違いが、すでにこの段階で生まれています。

投資の重要度が違えば、当然ながら、出店スピード、資金投下量、人材配置、ブランディング設計、撤退判断基準まですべてが変わります。

この「重要度の差」こそが、後述する日本式と韓国式の投資行動、店舗設計、サービス思想の違いを生み出している根本要因なのです。

第二章|日本人エリアと韓国人エリアは、なぜここまで違うのか

ハノイには、日本人が集まるエリアと韓国人が集まるエリアが明確に存在します。
しかし両者は、単に「国籍が違う人が集まっている」というレベルの話ではありません。

街の構造、投資の入り方、店舗設計、生活動線の作り方まで含めて、まったく異なる思想で形成されています。

本章では、日本人エリアと韓国人エリアを比較しながら、ハノイにおける投資行動の違いが、どのように街の形として表れているのかを読み解いていきます。

日本人エリアの特徴|「通り型」で形成された日本市場

ハノイの日本人エリアは、中心部バーディン(Ba Dinh)区に位置します。
在ベトナム日本国大使館の周辺に、Linh Lang(リンラン)通り、Phạm Ke Binh(ファムケビン)通り、Kim Ma(キムマー)通りの3本があり、これらを軸に日本人向けの商圏が形成されています。

ベトナム人に「日本食といえば何か」と聞くと、多くの場合「ラーメン」「寿司」という答えが返ってきます。実際、このエリアにはラーメン店を中心に、寿司・刺身・居酒屋といった日本食レストランが密集しています。

加えて、日本語対応が可能なスタッフを配置したバーやラウンジなど、駐在員・出張者向けの夜間サービスも多く見られます。

ただし重要なのは構造です。

日本人エリアは“街”ではなく“通り”を中心に形成されている点にあります。あくまで点と点が連なった集合体であり、生活・教育・娯楽・消費が一体化したエリア設計にはなっていません。

印象としては、「日本食・日本サービスが集まった商業通路」という性格が強く、日本人の生活圏そのものを内包する設計ではないのです。

韓国人エリアの特徴|「街型」で構築された生活圏

一方、韓国人エリアはハノイ中心部から西側に位置するMy Dinh(ミーディン)エリアに広がっています。My Dinh 1、My Dinh 2を中心に、韓国人向けの飲食店、サービス、生活機能が集積しています。

ここには、韓国人が「本国と変わらない味」と評価するレベルの高い韓国料理店が多く存在します。味・価格帯・内装・接客思想まで含めて、単なるローカライズではなく“韓国の再現”に近い設計がなされています。

また、韓国語対応スタッフを配置したバーやラウンジに加え、周辺にはカジノ、スーパーマーケット、韓国人家庭向け幼稚園・教育施設なども整備されています。

構造的に見ると、My Dìnhは通り単位ではなく、円形的に広がる“街”として成立している点が最大の特徴です。

つまり、「住む・働く・食べる・遊ぶ・学ぶ」が、エリア内で完結できる設計になっています。これは単なる出店集合ではなく、生活圏ごと輸出する投資設計と言えます。

通り型と街型に表れる投資思想の違い

街の規模感、設計思想、機能集積度を比較すると、日本人エリアと韓国人エリアには明確な差があります。

  • 日本:商業機能中心の「通り型」
  • 韓国:生活機能一体の「街型」

この差は偶然ではありません。韓国にとってベトナムは「一時的市場」ではなく、「長期滞在・定住・拡張」を前提とした戦略拠点です。だからこそ、店舗単体ではなく街単位で投資設計が行われているのです。

このエリア構造の違いそのものが、すでに日本と韓国の投資思想の差を可視化しています。

次章では、この思想の違いが、飲食・サービス業の設計や投資回収モデルにどのように反映されているのかを、さらに深掘りしていきます。

日本人エリアに関する記事は以下も参考になれます。

第三章|投資の入り方・広げ方に見る、日本と韓国の設計思想

日本と韓国では、海外における事業展開の考え方そのものが大きく異なります。
もちろん最終的には企業ごとの差がありますが、国全体として見た場合、投資の「入り方」「広げ方」「撤退の考え方」に明確な傾向の違いが存在します。

本章では、日本式と韓国式の投資モデルを比較しながら、なぜハノイにおいて両国の存在感やスピード感に差が生まれるのかを読み解いていきます。

日本の投資特徴|成功確率を最大化する「慎重設計型」

日本の投資思想は、基本的に慎重設計型です。

投資を行う前に、

  • 市場性
  • 回収期間
  • 初期投資コスト
  • リスク要因
  • 投資スピード

といった要素を細かく精査します。そして、「想定通りに回るか」を徹底的に設計してから実行に移します。

言い換えれば、「10回打って10回当てにいく投資」に近い考え方です。

そのため、

  • 初動が遅くなりやすい
  • 意思決定プロセスが長い
  • 失敗を極力出さない設計になる

という特徴を持ちます。

これは品質管理やブランド維持の面では強みです。ですが一方で、市場変化が速い海外では、チャンスを取り切れないリスクも同時に抱える構造です。

韓国の投資特徴|打席数を増やす「分散実行型」

一方、韓国の投資思想は分散実行型です。

当然ながら計画は立てますが、日本ほど「完璧設計」を前提にしません。
むしろ、

  • まず入る
  • 走りながら修正する
  • 伸びるものを残す

という考え方が強く見られます。

感覚的には、「100回打って10本のホームランを狙う投資」に近いモデルです。

つまり、

  • 成功と失敗が出る前提
  • 意思決定が早い
  • 投資実行が大胆
  • 撤退判断も早い

という特徴があります。

上手くいく事業には一気に資本と人材を投下し、合わないと判断すれば迷わず引く。このスピード感が、ハノイにおける韓国系ビジネスの存在感を押し上げています。

投資モデルの違いが「街の姿」を変える

この違いは、単なる企業姿勢の差ではありません。投資の設計思想そのものが違うのです。

  • 日本:成功確率重視の「一点集中設計」
  • 韓国:打席数重視の「分散拡張設計」

重要なのは、海外市場は常に不確実性が高いという点です。その環境下では、「慎重すぎればスピード負けし、攻めすぎれば失敗コストが増える」というトレードオフが発生します。

ハノイにおいて韓国企業がエリア単位で街を作り、日本企業が点在型になりやすい背景には、この投資の入り方・広げ方の思想差がそのまま反映されています。

次章では、この設計思想の違いが、実際の飲食・サービス業の「価格」「内装」「回収モデル」「ブランディング」にどのように現れているのかを、さらに具体的に見ていきます。

第四章|飲食・サービス業に見る、日本式と韓国式の勝ち方の違い

投資戦略の違いは、必ず実務設計に表れます。

これまで見てきた日本と韓国のハノイに対する投資思想の違いは、飲食業・サービス業の「価格」「内装」「運営体制」「回収モデル」「ブランディング」において、はっきりと可視化されています。

本章では、現場レベルでどのような差が生まれているのかを整理していきます。

日本式モデル|リスク最小化とローカル拡張設計

日本人が関与する飲食・サービス業の多くは、間接管理型の運営設計になっています。

例えば、飲食店の場合、

  • オーナーは日本人
  • 店舗責任者はベトナム人
  • 日本人は常駐しない

という体制が一般的です。

運営は数値管理が中心となり、「原価率・人件費・家賃比率・利益率」といった指標を重視し、安定的に回る範囲で日本の味・サービスを再現する設計が取られます。

価格帯も、ローカルよりは高いが、在越日本人が無理なく通える水準に設定されることが多く、内装も過度に投資せず、回収期間を意識した設計が中心です。

集客設計としては、

  1. まず在越日本人を取り込む。
  2. その後、ローカルベトナム人へ拡張する。

という二段構えモデルを採用するケースが多く見られます。

つまり日本式は、「失敗確率を下げながら、徐々に市場を広げるモデル」と言えます。

韓国式モデル|現場主導とコミュニティ内完結設計

一方、韓国人が運営する飲食・サービス業は、直接管理型の色合いが強くなります。

例えば、飲食店の場合、

  • オーナーは韓国人
  • 店舗責任者も韓国人
  • 現場に常駐するケースが多い

という構造が一般的です。

そのため、「味の再現度・サービス品質・空間設計・顧客体験」を本国水準に近づけることが重視されます。

価格帯はローカルより高めですが、日本価格よりはやや抑えられた設定が多く、「在越韓国人が日常的に通える水準」に設計されています。

集客の主軸は、

  1. まず在越韓国人コミュニティを固める。
  2. エリア内でリピートを回す。

という思想です。

つまり韓国式は、「まず自国コミュニティ内で完結させ、強い基盤を作るモデル」と言えます。

価格・内装・回収モデルに表れる思想差

両者の違いを整理すると次の通りです。

日本式

  • 数字管理中心
  • 原価・回収重視
  • 投資抑制型内装
  • ローカル拡張前提
  • リスク最小化モデル

韓国式

  • 現場常駐型
  • 体験品質重視
  • 本国再現型内装
  • コミュニティ内完結
  • スピード回収モデル

この違いは、単なる経営スタイルではありません。「誰を最初の顧客に置くか」という市場設計の違いです。

  • 日本は「日本人 → ベトナム人」へ広げる設計。
  • 韓国は「韓国人 → 韓国人」でまず固める設計。

この設計思想の差が、ハノイにおける日本店と韓国店の雰囲気、価格帯、出店密度、リピート率の違いを生んでいます。

おわりに|日本企業が取るべき選択

重要なのは、日本式と韓国式のどちらが正しいかを議論することではありません。
本当に重要なのは、自社がどの市場設計で戦うのかを最初に定めることです。

  • 最初からローカル市場を狙うのか。
  • まず自国コミュニティを固めるのか。
  • 回収を優先するのか、拡張を優先するのか。

この設計を曖昧にしたまま出店すると、「価格も中途半端」「中身も中途半端」「顧客も定まらない」という状態に陥りやすくなります。

ハノイ進出において日本企業が取るべき戦略設計とは、まず自分たちは何で勝つのか、どこで勝つのかを言語化すること。そして、そのために必要な要素は何かを、感覚ではなく構造で整理することです。

その第一歩が「情報」です。ただ闇雲に情報を集めるのではなく、自社にとって本当に必要な情報は何かを定義することから始める必要があります。

市場を見る視点が定まって初めて、調査も、設計も、投資判断も意味を持ちます。
実はここからが、本当のスタートです。

ハノイの現地情報や市場調査、戦略設計でお困りの際は、いつでもご相談ください。