【現地情報】ハノイで上がる授業料|現在のベトナム教育コスト

【現地情報】ハノイで上がる授業料|現在のベトナム教育コスト

はじめに|高騰化するベトナム授業料

近年、ベトナム経済の成長が続き、物価や不動産価値、生活コストの上昇が多方面に波及しています。そして、その流れは「教育コスト」にも及んでおり、私立校だけではなく、公立校での授業料や付随費用の増加が目立ちます。

今回の記事では、最近の報道や制度変更等をもとに、ベトナム(特にハノイ)で授業料が上がっている背景や公立校と私立校の費用差等について解説します。

ハノイで“授業料上昇”が報じられている現状

質の高い公立校での授業料上昇

2025年11月、ハノイ市議会は「質の高い公立校(truong cong lap chat luong)」及び大学校等の授業料を改定。

特に「質の高い公立校」では、月あたり最大 VND 6.1 million(約30〜35万円前後)までの学費水準が報じられました。また同年、大学においても、複数校が2025‑2026 学年度の授業料値上げを発表。標準プログラムで年間数百万 VND の引き上げが行われています。

出典:DAN TRI – Ha Noi: Học phi truong cong cao nhat 6,1 trieu dong/thang

小学校、中学校での授業料上昇

そして、大学のみならず、小学校や中学校でも教育コストの値上げは見られます。

実際に、値上げを行った小中学校には以下のような学校があります。

  • Nam Tu Liem 小学校
  • Đo thi Sai Đong 小学校
  • Trang An 小学校
  • Chu Van An 中学校

値上げ幅は、授業料体系や学年によって異なり、一般的に月あたり VND 300,000 です。最も大きな値上げ幅は、Đo thi Sai Đong 小学校の4年生と5年生で、月あたり VND 4,350,000 から VND 5,000,000 で、VND 650,000 の値上げ幅となりました。

出典:VN EXPRESS – Học phi truong cong o Ha Noi cao nhat 6,1 trieu dong

これらの動きは、「ベトナム経済の成長」に伴う学費のインフレ現象と読み取ることができます。

Truong THCS Trung Vuong|質の高い公立中学校でハノイ市内ではトップクラスの学校
Truong THCS Trung Vuong|質の高い公立中学校でハノイ市内ではトップクラスの学校

なぜ授業料が上がっているのか?

授業料が上がっている背景には、一般的には次のような要因が絡んでいます。

経済成長に合わせた人件費・物価の上昇

ベトナムは全国的に経済の成長が見られます。特に、ハノイやホーチミンはもちろん、人口の多い地方エリアでも都市化の進展が目立ちます。これより、学校運営に関わる人件費・施設維持費・教材費が上昇。これが直接、授業料や補助費用の改定要因となっています。

“質の高い公立校”へのニーズの高まり

中間層〜富裕層の増加、国際化の進展により、より良い教育を求める家庭が増えています。ベトナムの国家戦略にも教育強化は掲げられており、国民としても関心が非常に高いテーマです。そのため、これに応える形で、施設・教育内容・サービスの質を向上させる学校が増え、それに伴いコストが上昇しています。

学校の運営方式の多様化

いわゆる公立校であっても、実質は私立に近い運営という区分が増えています。そのため、公立の安価・無料という旧来のイメージが通用しにくくなっています。こうした学校では、授業料や諸費用が高く設定される傾向が目立つようになっています。

ベトナムの著名人がまとめられた書物|ベトナム語で書かれていて大人の勉強本としても使用できる
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公立と私立の「学費の実態と差」

では、実際のところ、公立と私立の学費にはどれくらいの差があるのでしょうか?

  • 普通の公立校
    授業料の目安:政策により免除または非常に低額(地方・条件により異なる)
    特徴/注意点:費用は抑えられるが、施設・教育環境が標準的である。混雑の可能性がある。
  • 質の高い公立校
    授業料の目安:最大 VND 6.1 million/月
    特徴/注意点:教育と施設の質が高い。通いやすさと安全性で人気。昨今では費用上昇が目立つ。
  • 私立校(中高級〜国際系校含む)
    授業料の目安:年間数百〜数千万 VND(学校・コースにより大きく変動)
    特徴/注意点:授業内容や言語、サポート体制が充実。将来の海外進学や国際キャリアを狙う家庭向け。

学校によってもコストに差がありますが、上記のようなコスト幅があります。重要なことは、公立校でも授業料が高額になることがあり、「公立=安い・安心」の感覚だけでは判断できないということです。

参考①:VIETNAM Plus – School fees to be waived for all public school students nationwide
参考②:VIET BAO – Tuition fees at hot private secondary schools in Hanoi, highest over 800 million VND/year

ベトナムの「教育の高度化」と「広がる格差」

教育の高度化による格差拡大の助長

経済成長が続くベトナムでは、教育の高度化が確実に進んでいます。その結果、富裕層や中間層は公立の重点校、私立校、国際校など、これまでより幅広い選択肢を手にできるようになりました。

しかしその裏では、教育費の上昇が所得階層による“教育格差”をさらに広げているという現実があります。駐在員や中〜高所得層の家庭は選択肢を確保しやすいでしょう。ですが、一方で、一般家庭にとって学費の上昇は大きな負担です。そのため、希望する教育レベルに手が届かないケースも増えているのです。

ベトナム国民の“生活感”を理解することの重要性

この現実を理解することは、進出企業にとっても極めて重要な視点になります。なぜなら、商品やサービスをベトナム人に届けるとき、「その家庭がどの程度の教育コストを支えているのか」を理解することは、購買力の把握やマーケティング戦略に直結するからです。

ベトナムでは家族の結びつきが非常に強いです。子どもの教育にお金をかけるという行為は文化価値のように根づいています。そのため、教育費は家計に大きなインパクトを与え、日常の消費行動にも影響を及ぼすのです。

おわりに|ベトナムの“今”を正しく理解する

ハノイの授業料高騰は、単なる教育費の問題ではありません。それは、ベトナム社会の変化そのものを映し出しています。教育の高度化、家計負担増、選択肢拡大と格差拡大は、今のベトナムを理解する上で欠かせない視点です。

特に、これからベトナムで生活する日本人家庭、教育関連の事業を検討する企業、市場調査を行う個人・法人にとって、この “現地の生活感” を踏まえた判断はますます重要になっています。

ベトナムは急速に変化しています。そのため、正確な情報、そして「肌感」を伴う理解が必要です。でなければ、誤った前提に基づいた戦略を立ててしまう危険もあります。

MISSION.Hは、ハノイを拠点に “現地でしかわからない情報” と “リアルな視点” を日本語でお届けしています。ベトナム現地での判断材料がほしいという方は、お気軽にご相談ください。

その他、ベトナム教育に関する記事は、以下もご参考に。