【現地情報】ベトナムの電子タバコ事情|禁止・罰則ポイント

【現地情報】ベトナムの電子タバコ事情|禁止・罰則ポイント

はじめに|ベトナムでは電子タバコは禁止

ベトナムは電子タバコおよび加熱式タバコの生産・輸入・販売・保管・流通・使用を禁止しています。そして、禁止の実務運用(関税・没収・罰則の運用)は既に始まっています。そのため、駐在員でも「うっかり所持・輸入」した場合に行政処分や刑事処分の対象となる可能性があり、注意が必要です。

今回の記事では、ベトナムにおける電子タバコをはじめとしたタバコ事情を詳しく解説していきます。

1. 現状:電子タバコはなぜ禁止なのか(何がどこまでNGか)

何が禁止されているか(範囲)

ベトナム政府は2025年以降、電子タバコ、加熱式タバコ及びそれらに関連する装置や消耗品を対象に、製造・貿易(輸入・輸出)・保管・輸送・販売・使用を禁止しています。カスタム(税関)もこれらの商品を輸入不可品目として扱う公文書を出しています。

(出典:Government News – Viet Nam to ban e-cigarettes from 2025
(出典:CUSTOMS CONSULTING – Ban On E-cigarettes And Heated Tobacco Products From 2025

要点:個人輸入や宅配での持ち込みも、税関レベルで差し止め・没収される可能性が高い。

VietNam Parliament TVと呼ばれるベトナム国民向けのYouTube Channelでは、「加熱式タバコとは何か?」という動画も公開されています。良ろしければ、ご覧下さい。

なぜ禁止なのか(政府の理由)

主な理由は、公衆衛生上の懸念です。保健省などは、電子タバコがニコチン含有で依存性が高く、長期的な健康リスク(呼吸器疾患、発がん性リスクの懸念)や若年層への普及を問題視しています。そのため、社会秩序や公共の安全の観点から禁止措置を採ると説明しています。

(出典:Vietnam Net – Ministry of Health targets e-cigarette use with proposed legal changes

ベトナムのタバコ販売店もしくはタバコ販売コーナーでよく見かけるポスター
ベトナムのタバコ販売店もしくはタバコ販売コーナーでよく見かけるポスター

2. 罰則・行政処分(どのような罰があるのか)

罰則は法制度の層によって異なります。ですが、行政上の罰金、そして重大な場合は、刑事罰(懲役等)の可能性があります。具体例として報じられている内容は、次の通りです。

実務メモ:個人が持っているだけで直ちに懲役ということは一般的ではありません。ですが、輸入・販売・組織的な流通が絡む事案は重く扱われる点に注意してください。

3. 税関が出した公式文(Official Letter No.17)」の日本語要約

以下に、General Department of Vietnam Customs(ベトナム税関総局)が発出した 「Official Letter No.17/TCHQ-GSQL(2025年1月2日付)」 を日本語で要約しました。駐在員・日系企業の方向けに、ポイントを整理していますので、ご参考下さい。

Official Letter No.17/TCHQ-GSQL(日本語要約)

主な内容は次の通りです。

  1. 輸入・製造・通関手続きの停止

    2025年1月1日以降、電子タバコ、加熱式タバコ及びそれらの製造用部品・原材料を対象に、通関手続き(輸入・輸出)を行わないよう各地方税関局に指示。対象には、完成品だけでなく「部品・原材料・半製品・廃棄品」も含まれることを明示。

  2. 在庫調査および報告義務

    各省・市の税関局に対し、管轄内に残存する上記関連商品の在庫(部品・原材料・半製品・完成品・廃棄物等)を調査し、報告することを義務付け。報告期限として、2025年1月10日までに電子フォーマット(Excel等)で税関総局へ提出。

  3. 法的根拠への言及

    本指示は、Resolution 173/2024/QH15(2024年11月30日、ベトナム国会で可決)に基づくもので、2025年から電子タバコ・加熱式タバコ等の「製造・貿易・貯蔵・運搬・使用」を禁止する目的の一環。

また、指示文中では「2025年1月1日以降、通関手続き対象外の商品とする」と明記しており、個人・企業にかかわらず、輸入・通関・保管・販売目的の所持が禁止対象と解釈される旨が示唆されています。

(出典:Official Letter No. 17/TCHQ-GSQL
(出典:EY – Customs & Global Trade Update | January & February 2025

4. 紙タバコ(従来型タバコ)は合法か?

従来の紙巻きたばこ(燃焼式タバコ)は合法ですが、厳しい規制下にあります。

販売場所、年齢制限、パッケージの警告表示、公共施設での禁煙ルールなどが定められています。また、広告や未成年への販売禁止などの措置もあります。実際に、ベトナムのタバコ規制法に基づく運用が行われています。
(出典:Luat so 09/2012/QH13 cua Quoc hoi: LUAT PHONG, CHONG TAC HẠI CUA THUOC LA

スーパーでよく見る"CAMEL"
スーパーでよく見る”CAMEL”

つまり、現在のところ「紙タバコは買えるが、電子タバコはNG」という状態。屋内や公共の場での喫煙規制には十分注意してください。
(参照:WHO Extranet

555と呼ばれるベトナムで有名なタバコの銘柄
555と呼ばれるベトナムで有名なタバコの銘柄

5. ベトナムのタバコ消費状況(数字で見る現実)

WHOや現地調査によれば、ベトナムの成人喫煙率は依然高いようです特に、男性の喫煙率は40%台にのぼるなど深刻な状況です。また、国全体で1,500万〜1,700万程度の喫煙者がいるとのデータが出ています。さらに、タバコ関連の死亡・疾病負担も大きいと報告されています。

このため、政府は従来タバコの規制強化と並行して「新世代タバコ(電子タバコ・加熱式タバコ)」を別途重視して対策をとっています。
(出典:WHO – Align tobacco tax with Viet Nam’s goals for health and prosperity, urges WHO
(出典:NIH – Patterns and determinants of tobacco purchase behaviors among male cigarette smokers in Vietnam: A latent class analysis

6. 駐在員・外国人は「うっかり」では済まされないのか?

うっかり所持・輸入はリスクがあるため、自己責任で絶対に避けるべきです。というのも、税関は輸入禁止物に対して差止め・没収の措置を行っています。個人輸入であっても同様に押収されるケースがあり、関税当局の公式文書が出ているのも事実です。

さらに、所持や使用に対する行政処分案(少額の罰金)や重いケースでの罰金・刑事処分の報道もあります。駐在員でも職場や在留資格に影響が出る可能性があり、勤務先企業にも通知が行われる可能性が示唆されています。

実務的アドバイス(駐在員向け)

  1. 日本からの持ち込みは避け、出発前に廃棄・処分しておく。

  2. もしフリーで購入・所持を勧められても断る。違法商品を販売・所持している店舗は摘発対象。

  3. 会社の就業規則・駐在員向け案内に従う。違反が判明した場合、企業側にも影響が出る可能性を理解する。

日本では紙タバコよりも電子タバコの消費が目立ちます。ですが、ベトナムでは電子タバコは禁止されていることに留意して下さい。

7. 参考:実務でよくある質問と短い回答

  • Q:ホテルの部屋に持ち込めばバレないですか?
    A:税関や警察・空港検査、荷物検査で見つかれば没収・罰則の対象になります。リスクが高いです。

  • Q:友人が持っていて使っているのを見たら?
    A:使用を勧められても断る。周囲で摘発があれば当事者・居合わせた者への調査が入ることがあります。

  • Q:日本で買った正規品なら問題ない?
    A:ベトナム国内法が優先されます。ベトナム国内法で禁止されている品目は、正規品であっても違法です。治外法権ではありません。

おわりに|実務的まとめ

ベトナムは電子タバコに関して明確に禁止の方向を取っており、関税・行政処分・刑事罰の運用も進んでいます。直近でも、Hanoimoiから電子タバコ禁止を訴えるニュースが報道されています。そのため、駐在員・出張者・輸入業者は、個人所有・個人輸入を含めて避けるべきです。

万が一、疑わしい物を持ち込んでしまった場合は、速やかに廃棄または現地当局の指示に従って対応してください。企業としては社内周知(持込み禁止の明文化)と、入社時の注意喚起を推奨します。

その他、ベトナム現地情報でご質問等があれば、いつでもご連絡下さい。

また、その他のベトナム法に関する記事として以下もご参考に。