【体験談】日本企業がハノイでベトナム人を集客する方法
はじめに|ハノイの日本企業が抱える共通課題
私がこれまでお会いしてきたハノイの日本人事業者の多くが、ある共通の課題を抱えています。
それは 「ベトナム人のお客様がなかなか集まらない」 という問題です。
- 「日本人相手ならある程度上手くいくのに、ベトナム人には全然響かない。」
- 「広告を出しても問い合わせが来ない。」
- 「口コミも広がらない。」
これは私自身も、駐在員時代に最初にぶつかった壁でした。
しかし、現地の感覚・習慣・行動心理を理解し、集客のアプローチを“ガラッと”変えることで、結果は劇的に変わることがあります。ただし、そのためには「勇気を持ってやり方を変える決断」も必要です。
この記事では、私の体験をもとに、ハノイのベトナム人集客で日本企業が陥りやすい落とし穴と、効果的な現地アプローチを実体験も交えながら解説します。
1. ハノイのベトナム人集客が難しい理由とは?
なぜ日本企業はベトナム人の集客でつまずくのか。現場でよく見る代表的な要因を整理します。
ターゲット設定が曖昧
「ベトナム人を集客したい」という声は多いですが、“ベトナム人”だけではターゲットにならない点が落とし穴です。年齢、所得、居住エリア、ライフスタイル、SNS利用習慣……同じベトナム人でも行動は大きく異なります。効果を出すには、具体的なペルソナ(具体的な架空の理想顧客像)を設定し、その人物がどこで情報を得て何に価値を感じるかを描き切る必要があります。
伝え方が日本式
日本では商品の「機能」や「スペック」で刺さることが多いです。ですが、ベトナムではまず「ベネフィット(自分ごと)」や「安心感」を先に伝える方が有効です。例えば、商品の詳細説明よりも「この商品を使うと友人に褒められる/時間が節約できる」といった生活に紐づく訴求が響きます。加えて、ベトナムは視覚・動画が強いため、テキスト中心の訴求は弱まりがちです。
導線設計のズレ
日本の「HP→問い合わせ」型の導線は、ベトナム人には万能ではありません。ベトナムの主要チャネルは、現在もなお「TikTok・Facebook」が主流です。「どのチャネルを・どのタイミングで使うか」はターゲットによって違います。そのため、現地の生活観察が必須です。
信頼形成の壁
ハノイにおけるベトナム人集客では、「口コミ・紹介・実際の利用者の声」が強力な決定要因です。「まずは信頼を得る」ために、現地スタッフの顔出し、利用者の動画レビュー、実績の可視化(レビュー数・写真)といった施策が効果を発揮します。いきなりの販売訴求は避け、段階的に信頼を積み上げる設計が必要です。
ベトナム人集客を成功させるための掟
これらの“ズレ”を直し、「生活導線に沿った発信+低いハードルの行動誘導(初回割、紹介特典など)」を高速で試し、PDCAを回すことが成功への鍵です。
今すぐできる一歩(実践サンプル)
- 1週間:ターゲット層のTikTokとFacebookグループを毎日チェック。流行りの表現・ハッシュタグをメモする。
- 2週間:ベトナム語の短尺動画(15〜30秒)を2本作って現地スタッフに投稿してもらう。
- 1ヶ月:来店者にSNS投稿を促す仕組みを試す。
この例を実施し、得られた情報を整理します。そして、得られた情報からアプローチ方法を修正、このサイクルを回して当たりを探します。これらを繰り返すことで正確な情報を入手することができ、ベトナム人集客の明確なヒントが得られるようになります。
2. ハノイでのベトナム人集客|SNSが超重要
日本では今もなお、デジタルマーケティング(特にSNSを活用したマーケティング)に本格的に取り組んでいない企業が多いです。しかし、ベトナムでは状況がまったく異なります。ここを理解できるかどうかが、ベトナム人集客の成否を大きく左右します。
若くSNSリテラシーの高い人口構成
ベトナムの平均年齢は約30歳と非常に若く、労働人口・消費者層ともにボリュームゾーンは20代〜30代前半に集中しています。この世代はスマートフォンとSNSが生活の中心です。
- 1日の平均SNS利用時間は約2時間以上。
- SNS利用率は世界でも上位20位以内。
- 特に都市部では、ニュース・商品情報・口コミの多くをSNSから取得。
つまり、「検索して調べる」よりも「SNSで流れてきた情報から知る」という行動が主流です。
ハノイでは”HP”中心では戦えない
日本の場合は、HPは会社の顔です。なぜなら、日本人はGoogle検索でまずは調べるからです。そのため、日本での商戦の一つとして、まずホームページを整えそこから問い合わせを待つ「受け身」の集客モデルを取っています。
しかし、ベトナムではHPを見に来る人が少なく、HPがあっても“見つけてもらえない”という現象が起きます。
その一方で、現地企業やローカルブランドはSNSを活用して、
- 日常的な投稿
- ストーリーやライブ配信
- インフルエンサーやマイクロインフルエンサーとのコラボ
- 口コミを活かしたUGC(ユーザー生成コンテンツ)
などで、自然に見込み顧客の目に触れる機会を増やしています。
つまり、「HP=看板」ではなく「SNS=入口」なのです。
デジタルマーケティングを軽視すると“存在しない”のと同じ
日本では「まずは実店舗やHPを作ってから集客」という流れが一般的です。しかし、ベトナムではそれだけではほとんど人に認知されません。SNS上に存在していなければ、「そのブランドは存在しない」のと同じ扱いを受けます。
たとえどんなに良い商品・サービスを提供していても、
- TikTokにレビューがない。
- Facebookページの更新が止まっている。
- 投稿はするがAI生成のみで、実際の人が出てこない。
このような状態では、現地の若者に認知されず、口コミも広がりません。
ハノイでの集客は「SNSから始まる」
成功している日本企業・ローカル企業の多くは、まずSNSから仕掛けます。
HPを立ち上げますが、あくまで名刺のような存在。つまり、一つの信頼の構築程度に留めます。そして、HPよりも前に TikTok を運用したり、 Facebook のファンページを運用したり、“認知の種”を先に撒く戦略をとっています。
そして、ローカルスタッフや現地インフルエンサーを巻き込み、「ローカル目線の情報発信」を継続することで信頼を育てています。
3. 信頼の“積み上げ”が購入の決め手
日本では、「ブランド力」や「クオリティの高さ」が信頼を生み出し、それが購入の大きなきっかけになることが多いです。なぜなら、まずはお試しで購入する可能性があるからです。しかし、ハノイでは真逆です。まずは“信頼を得ること”が先で、購買はその後にやってきます。
ベトナム人は「口コミ」と「リアリティ」で判断する
ハノイでは、老舗好きな風潮があります。そのため、新しいブランドやサービスに対して非常に慎重です。特に日本企業の場合、現地の人々からすると「知らない海外ブランド」です。ですので、いくら品質が良くても、最初から信用されるわけではありません。
実際、現地の人たちが最初に気にするのは次のような点です。
- 「この店(会社)は本当に大丈夫なのか?」
- 「価格に見合う価値があるのか?」
- 「他の人はどう思っているのか?」
つまり、「誰が何を言っているか」が重要視されるのです。これは単なる“口コミ”というよりも、信頼の積み上げ型マーケティングといえます。
SNS上での“信頼づくり”がカギ
ベトナム人は毎日、SNSを通じて情報を集め、商品を比較し、判断しています。例えば、 TikTok や Facebook で話題になった店舗は、一気に行列ができることも珍しくありません。逆に言えば、信頼を積み重ねるための発信をしなければ、存在しないのと同じ状態になってしまいます。
私の体験では、以下の3つを実践して、問い合わせ数が大きく変わりました。
- 実際のお客様の声を動画で発信する。合わせて、そのお客様にもその動画を自身のチャネルで発信してもらう。
- 現地スタッフとのツーショット写真を投稿する。日本人も同時に映ると尚良し。
- ベトナム語での投稿とリアクション対応を徹底する。身近な存在として認知されることに徹底する。
これらは一見地味なことですが、ベトナムでは効果絶大です。特に動画と現地語での発信は、ベトナム人にとって「本物っぽさ」を感じさせる要素になります。
信頼は「一撃」ではなく「積み上げ」
信頼の形成には、時間がかかります。つまり、一度の投稿で大きな集客ができることは稀なのです。ですが、小さな信頼の積み上げを継続することで、“一見さん”が“ファン”に変わり、“リピーター”に育つ流れができます。「投稿 → 閲覧 → 興味 → 信頼 → 行動」このプロセスを踏ませることが、ベトナムでのマーケティング成功の鍵です。
つまり、ベトナム人の購買行動において、信頼は「入り口」ではなく「土台」です。いくら商品やサービスの質が良くても、信頼がなければ売れません。だからこそ、日本企業はまず「信頼の積み上げ」を戦略の中心に置く必要があります。SNSでの発信、口コミの活用、現地スタッフとの連携。この積み重ねが、最強の集客装置になるのです。
4. 体験談|ベトナム人を集客するも最初は“誰も来なかった”
私がベトナムで最初に家庭関連サービス事業を立ち上げたとき、ベトナム人の集客はまったく上手くいきませんでした。理由はシンプルです。ベトナムにはない新しいコンセプトだったサービスも、ベトナム人から見ると「既存サービスと同じようなもの」に見えていたからです。
その結果、
- 価格を勝手に比較される
- サービス内容を誤解される
- 本来の価値が伝わらない
という負のループに陥りました。
ハノイに住む日本人顧客はサービスの違いを理解していたため、特別な説明は不要でした。しかし、ベトナム人にはいくら説明してもピンとこない。まるで“宇宙人”と会話をしているような感覚でした。
戦略を“伝える”から“伝わる”に変えた
このままでは勝負にならないと感じ、私は戦略をゼロから見直しました。とにかく「比較させない」という軸を中心に「直感的に伝わる仕掛け」へと移したのです。
具体的には次の3つを実践しました。
-
投稿を見ればわかる動画コンテンツを連続配信
言葉よりも“見せる”ことで、インパクト重視で、説明不要の状態を作る。 -
顧客が自然に発信したくなる仕掛けを設計
利用したお客様が自ら動画や写真を撮影し、自身のSNSに投稿することで、口コミが爆発的に自動で広がる。 -
サービス内容の“逆行絞り込み”
伝えたいことを詰め込みすぎず、核となる価値だけに絞って訴求。
結果、ベトナム人比率が10%→85%へ
この“見せ方”の転換が大きな分岐点になりました。6ヶ月後、ベトナム人顧客の比率は 10%から85% へと急増。口コミと動画コンテンツの波及力が、予想をはるかに超える成果をもたらしたのです。
体験からの学び
この経験を通じて、私が痛感したことがあります。
それは、市場が成長曲線にある段階では、マーケットイン型のサービス・商品の方が圧倒的に成果を出しやすいということです。ローカルの人々がすでに持っている価値観・行動習慣に沿ってサービスを設計すれば、短期的な集客も加速しやすくなります。
一方で、日本で成功したものをそのまま持ち込む「プロダクトアウト型」の場合、本当に“発明品”レベルの革新性がない限り、なかなか刺さらないという現実があります。さらに重要なのは、その場合、仮に日本で上手くいっているモデルであっても、現地では一度まっさらにして考える必要があるということです。「日本ではこうだった」は一切通用しません。むしろ、ローカルの生活導線・心理・文化を深く理解することが、事業成功の大前提になると強く感じました。
そして、マーケットインであろうとプロダクトアウトであろうと、最終的に鍵を握るのは「信頼」です。この「信頼」の積み重ねが、爆発的かつ加速的なインパクトをもたらし、ベトナム人集客を大きく前進させるのです。
5. おわりに|ベトナム人の集客では「信頼」がすべて
日本企業がハノイで成果を出すための一番の鍵は、「信頼」です。どれだけ良い商品・サービスを提供しても、信頼がなければベトナム人の心は動きません。
信頼を得るためには、以下のような“積み上げ”が欠かせません。
- 実態を可視化する:スタッフ、サービス、店舗の雰囲気を積極的に発信する。
- 差別化の定義を変える:違いを強調するだけでなく、比較されない立ち位置を目指す。
- インパクトポイントを作る:小さくても“記憶に残る要素”を設計する。
- 等身大で発信する:作り込んだ演出よりも“リアル”が信頼を生む。
- 体験窓口をつくる:初めての人が気軽に試せる機会を用意する。
- 口コミの力を活かす:顧客自身のSNSや声を広げてもらう。
この積み重ねこそが、ハノイでのベトナム人の信頼を得るための一番の近道です。そして、単なる一方的なPRではなく、ローカルの感覚に寄り添った自然な口コミ導線を作ることが、長期的に成果を出す企業の共通点でもあります。
MISSION.Hでは、現地目線に基づく集客戦略の設計と実行をサポートしています。「広告を出しても集まらない…」と悩んでいる方は、まずは一度ご相談ください。現地で信頼を積み上げ、“本当に響く”集客へと変えていきましょう。
その他、ベトナム人の集客に関しては、以下もご参考に。