【体験談】ベトナム若者のリアルな消費行動と今後の動向

【体験談】ベトナム若者のリアルな消費行動と今後の動向

はじめに

近年、日本国内の市場が縮小する中、企業による海外進出や投資家による海外投資が伸び続けています。その中でも、ベトナムは進出数・投資額ともに増加している注目市場。人口の約半分が35歳未満という若い国で、都市部を中心にデジタルネイティブ世代が消費の主役となりつつあります。消費拡大が期待される、まさに成長市場です。

2025年現在、彼らのライフスタイルや価値観を理解することは大切です。特に、企業の市場参入や事業展開において欠かせない視点でしょう。本記事では、信頼できるデータに基づきベトナムの若者トレンドと今後の動向を解説。それとともに、現地での実体験や観察を踏まえ、日本文化・サービス・製品への受け入れ可能性について考察します。

1. マクロ概況:若年人口とデジタル普及

ベトナムは国家戦略の中にもデジタル化を推進しています。私が住むハノイでは、若者のみならず、年配の方でも”TikTok”を日頃から使用します。そのため、様相が日本とは随分と異なり、デジタルリテラシーが高い国民だと感じています。

インターネット普及とSNS利用

2025年初時点でベトナムのインターネット利用者は約79.8M(約78.8%の浸透)、ソーシャルユーザーは約76.2M、スマホ中心の接続がデフォルト(常時接続世代)です。また、スマートフォンの普及率は80%以上に達し、特に18〜34歳の若者の利用率が圧倒的に高い状況です。SNSの利用時間は一日平均3時間を超え、Facebook、TikTok、が主流です。特に、TikTokはベトナムで爆発的に普及し、2025年時点での利用者数は約5000万人以上と言われています。
(参考:DATAREPORTALSatista

Gen Zのプレゼンス

アジア太平洋地域でGen Zの比率が高まることは各種報告が示されています。実際にベトナムでも若年層が消費の主役にシフトしています。そのため、多くの企業は「若者の行動」を最優先で考えるべきだと言えます。例えば、日本ブランドが進出する際には、従来の広告媒体ではなく、TikTokやインフルエンサーを活用したPRが鍵となります。特に「体験型」「ストーリー性のある」動画コンテンツは、若者の購買行動に直結します。
(参考:Mckinsey & Company</a>)

2. ベトナムEコマース市場:「何を・どこで・どのように」買うか

2025年上半期、ベトナムのEコマース市場では7,000以上の販売者が撤退しました。その一方で、ShopeeやTikTok Shopを中心に市場は成長が続いています。

ECとショッパーテインメントの爆発

2025年上半期、主要ECのGMV合計は222.1兆ベトナムドンでした。これは、前年比で23%増加しており、TikTok Shopの急成長が顕著です。というのも、TikTok系の「ライブ+購入」という”Shoppertainment”が消費を牽引しているためです。特に若年層は「安さ」よりも「ライブ配信でのリアルな体験」や「限定性」を重視。その結果、購買行動はよりエンタメ化しています。
(参考:Vietdata

利用頻度

TGM Researchの公表によれば、「週次オンライン購買」が高く、週次購入率は50%です。また、購入のほとんどがスマホ経由で、スマホ1台で受取までを完結させています。こういったことから、ライブ配信や短尺動画での製品訴求(商品デモ・UGC)を実行できる体制を作ること、モバイルUX(ワンクリック購入、電子ウォレット対応、追跡性)を整備すること、が即効性のある投資となります。
(参考:TGM Research

デジタル+日本の安心感

これらの情報から考えると、Eコマースでの商品販売は売上に直結することがわかります。日本製品が持つ「品質の高さ」や「正規品への信頼感」は、偽物や低品質品が問題になりやすいベトナム市場において強み。そのため、ライブコマースで「日本式の丁寧な説明」を導入するなど、「デジタル+日本の安心感」を訴求することで、他国ブランドとの差別化が可能でしょう。

3. 消費の質的トレンド:若者の「何を重視するか」

複数レポートと現地動向から見える現代のベトナムの若者の志向は主に次のようになっています。

体験優先

通常動画やライブ動画での「使い方」・「見た目」が購買決定を左右することが明らかになっています。そのため商品そのものの機能より「見せ方」が重要です。
(参考:Vietdata

価格感度と即時性

割引やフラッシュセールに非常に敏感です。そのため、ハノイの街中、ネットショップ内でも毎日のように、あらゆるジャンルで、割引表示がなされています。また、即日〜数日で商品やサービスが届く迅速さもベトナム人にとっては購買を左右します。
(参考:TGM Research

ローカル志向・ブランド信頼

外資ブランドの参入が多いベトナムですが、若者は“ローカルブランド”やSNSでの評判を重視する傾向があります。外資ブランドは出店直後のプレオープンのみ売れ、安定化するのに時間がかかるのもそのためです。なるべく早い段階で信頼できる出品者となり、明確にブランド化することが重要です。
(参考:Chus

日用品(FMCG)の日常消費が躍進

経済が成長していて、これから伸びる国の特徴の一つに、「ベビー用品」や「育児用品」の売上が伸びるというものがあります。ベトナムもまさにその一つで、「食品・母子・ヘルスケア分野」が伸びています。これらはリピート性が高く、LTVを上げやすい領域です。
(参考:Vietdata

健康志向とウェルネス文化の台頭

ベトナムでは近年、健康・ウェルネスへの関心が急速に高まっています。Cimigoの調査によれば、特に18〜44歳の層で「予防医療」「美容」「栄養補助食品」への需要が拡大。また、ジムやフィットネス施設の利用者数も右肩上がりです。さらに、Ken Researchもベトナム消費財市場における健康・美容関連商品の成長を指摘しており、消費者は“自己投資”としての健康支出を重視する傾向を見せています。
(参考:Cimigo

日本企業の対応

商品カテゴリーごとにコンテンツ戦略を分けるのが良いでしょう。例えば、FMCGは「ライブ+定期購入」、耐久消費財は、「詳細動画+レビュー重視」と方向軸を明確にするのが得策です。また、日本の食品や健康グッズ、フィットネス関連サービスは高い親和性を持っています。そのため、「和食レストラン」「日本式ジム」「日本の健康食品EC販売」は、今後拡大の余地が大きい分野だと考えます。

4. 若者の価値観とライフスタイルの変化

急激な変化を見せるベトナム社会では、若者層と年配層とでは考え方も価値観も大きく異なります。

キャリア志向と起業志向の混在

就業率はベトナム全体で上がりつつも、若者は副業やクリエイター活動に関心が非常に高いです。そのため、プラットフォームでの売買やサイドビジネスが一般化しています。また、日本よりも起業意識が高く、ビジネスに対して積極的な志向を持っています。
(参考:DATAREPORTAL

健康・サステナビリティ意識の芽生え

特に都市部の若年層で健康・セルフケア関連の消費が伸長しています。これはポップカルチャー戦略に長けた韓国の影響を多分に受けているのも一要因として考えられます。また、ある調査では、緑色商品(sustainable/友好的素材など)に対して、44%の消費者が「通常より5〜10%高くても購入したい」と回答。そのため、プラスチック削減やエコ素材の商品は、価格が多少高くても選ばれる傾向があります。日本の「もったいない精神」やリサイクル文化は共感を得やすい領域かもしれません。ただし、持続可能な商品に対して支払う余裕がないといった声もあり、意識と行動にはまだ差があるのが実情です。
(参考:ReutersNhan Dan Online

5. 日本文化・サービスの受け入れ可能性

これまでの情報と私の実体験から日本文化やサービスの受け入れの可能性をまとめてみます。

以前として人気な日本のアニメと漫画

日本のアニメと漫画は若者の間で人気が継続しています。特に人気があるのは、ドラえもんと名探偵コナンです。マニアの領域にまで行けば単行本として実際の書店に行って買う友人もいれば、フィギュアを買う友人もいます。ですが、一般的に多いのはTikTokで視聴するパターンです。YouTubeよりもTikTokで実際のアニメを見る若者層が多いです。

日本製品の実態

40代以上のベトナム人は「日本製品=品質が良く長持ちする」という認識が強いです。私は過去400軒以上のご家庭にお邪魔した経験があります。そこでわかったことは日本の家電製品に対しての信頼の高さです。特に、冷蔵庫、エアコン、マッサージチェア等への信頼が高く、「とにかく長持ちする」と言っていました。ですが、この傾向は40代以上のベトナム人が持つ認識。日本に何ら関わりのあるベトナム人家庭の子供においては日本ブランドが通用しますが、それ以外の分野では韓国製品(特にSamsung)が強いです。

日本式接客

商品ではなくサービスの面にフォーカスすると、日系店では「接客が良い」という期待をベトナム人の多くは持っています。例えば、丁寧に梱包してくれる、笑顔で接客してくれる、なにか問題が起きたら謝罪と適切な対応をしてくれる。このような行動がベトナム人の中では反響を呼ぶ可能性が非常に高いです。私も実際に体験済みです。そのため、ベトナム人の現場教育は非常に大切だと言えます。

これらの背景から、日本ブランドを単なる輸出するだけでは不十分だとわかります。現地における「体験型マーケティング」や「ベトナム人のスタッフ教育」「現地の若者文化との融合」等を戦略に組み込むべきです。

6. リスクと注意点(政策・市場の流動性)

他方、リスクや注意点も存在します。

淘汰の進行

EC市場の注意点は淘汰の進行です。事業者の撤退・出店者の減少が観察されていて、その数は7,000店以上に及びます。そのため、単に「数」を増やすだけでは生き残れない市場と言えます。
(詳しくは、『【体験談】Shopee・TikTokショップの始め方と活用方法』をお読み下さい。)

規制・税政策の変化

ベトナムでは規制や税制の変化がよく起こります。飲料やたばこ等の増税、新規規制が消費構造に影響を与えると考えられるため、法規制の変更リスクに敏感になっておく必要があります。

7. 今後の予測(2026–2028)

ここからは、e-Conomy SEAの推計やYouNet、TGMなどの短期動向を組み合わせ、私なりに予測します。

Shoppertainmentのさらなる拡大

Google・Temasek・Bainが発表したe-Conomy SEAの最新推計によれば、東南アジアのデジタル経済は今後も年平均二桁成長を維持。特にベトナムは、成長率でトップクラスと予測されています。その中で、ベトナムEC市場をけん引するのが Shoppertainmentです。TikTok Shopを中心に、「エンタメから購買につながる」モデルは、2026〜2028年にかけて加速度的に普及すると見られます。

ベトナムはSNS利用率が世界的にも高いです。そして、Gen Zが動画視聴から即購入に移る習慣をすでに確立しています。YouNetの調査でも、EC利用者の半数以上が「ライブ配信や動画を通じて商品を知り、購入を決定した」と回答しており、今後もTikTokやShopee Liveといったプラットフォームが成長を牽引することは確実でしょう。
(参考:Temasek CorporateBAIN&COMPANYYouNet

淘汰の継続と集中

一方で、競争の激化と淘汰は避けられません。TGMやMetricの動向レポートでは、EC市場において「小規模・低差別化の出店者は収益化が困難になり、市場から退出する傾向」が加速すると指摘されています。2026〜2028年にかけては、次のようなシナリオが想定されます。

  • ブランド力・差別化がある企業 がシェアを拡大。
  • D2Cモデルを持つ企業がリピーターを囲い込み、長期的に優位を確保。
  • 物流・決済・顧客体験を強化できない事業者は生き残りが難しい。

結果として、ベトナムEC市場は「大手プラットフォーム × ブランド力を持つ事業者 × 差別化されたD2C」がシェアを取り合う構造へと移行すると予測します。

8. おわりに

日本企業が注目すべきベトナム若者トレンド(2025〜2028年)は、「デジタル消費」「健康志向」「サステナビリティ意識」の3つに集約されます。ここに日本文化や日本製品の強み「信頼性、品質、健康イメージ」を掛け合わせれば、大きなビジネスチャンスが生まれるはずです。

そして、将来性のある投資に欠かせないのは「これからの消費者の動きを調査・観察し、仮説を立てて検証する」ことです。特に、進出企業にとっては「現地若者のリアルな声」と「日本ブランドの価値」をどう結びつけるかが成功のカギとなります。

現地調査やブランディング、マーケティングで課題を感じられた際は、ぜひお気軽にご相談ください。

その他、ベトナムのデジタル市場やトレンドに関する記事は以下もご参考に。