【ベトナム進出/移住】失敗しないための市場調査の基本

【ベトナム進出/移住】失敗しないための市場調査の基本

はじめに

ベトナムは、ASEAN諸国の中でも特に経済成長が著しいです。人口約1億人という巨大な消費市場を背景に、製造拠点としても、消費市場としても注目を集めています。近年は日本企業の進出だけではありません。フリーランスやリモートワーカー、さらには家族での移住を検討する人も。また、駐在員がベトナム人と出会い結婚し、現地で永住するといったケースも増えています。

一方で、インターネットや噂だけの情報を頼りにベトナム進出や移住を決断してしまうと、現地で「思っていたのと違う」というギャップに直面するケースも少なくありません。ビジネスであれば市場ニーズのミスマッチ。個人や家族であれば生活環境の不一致。こういったことが大きなリスクとなり、せっかくの挑戦が失敗に終わってしまうことも。

そこで今回は、ベトナム進出や移住を検討する際に必ず押さえておきたい市場調査の基本をわかりやすく解説します。この記事を読むことで、データだけではわからない現地の実態を理解し、より確実な意思決定につなげることができるでしょう。

なぜ市場調査が必要なのか?

日本の常識が通じない市場環境

ベトナムは確かに急速に経済成長しています。ですが一方で、購買行動や価格感覚、ブランドに対する価値観は日本と大きく異なります。例えば、日本では「品質」は非常に重視されます。ですが、ベトナムでは「コストパフォーマンス」や「流行性」、「利便性」が重視されることが多いです。また、ハノイとホーチミンでは文化や消費傾向が全く異なります。そのため、同じ商品でも受け入れられ方が変わります。こうした情報は、ネット上のデータや統計だけでは決して把握できません。

失敗事例が多い

良い事例もある反面、失敗事例が多いのも事実です。実際に、十分な市場調査を行わずに「ベトナムなら安くビジネスができる」と考えて進出した企業が、想定外のコストやトラブルに直面して撤退するケースも数多くあります。

  • 「人件費は日本の1/3程度」と思っていたら、実際は人材の定着率が低く、採用や教育コストがかさむ。
  • 「物価が安いから利益率が高いはず」と考えていたら、都市部の賃料等は東京並みに高く、採算が合わない。
  • 「日本ブランドだから売れる」と思っていた商品やサービスが、現地消費者の生活習慣に合わず売れなかった。

こうした失敗事例は決して珍しくありません。

生活環境のギャップ

移住を検討する個人や家族にとっても、現地調査は欠かせません。治安・教育・医療・住宅環境などは、生活の質を大きく左右する重要な要素です。例えば、駐在員の家族が「治安が良い」と聞いて引っ越した地域で実際にはスリや詐欺が多発していたり、日本人学校までの通学手段が限られて子どもの生活に負担がかかったりすることもあります。事前に現地で調べていなければ、「想像していた生活と全く違う」と後悔するリスクが高まります。

ベトナム市場調査の基本ステップ

1. マクロデータの収集

まずは大きな視点から市場を把握することが重要です。政府統計やJETROのレポートを参照し、経済成長率・人口動態・主要産業の動きを確認します。

特にベトナムは人口の約7割が35歳以下という若年層中心の国、消費行動の変化が非常に早いのが特徴です。ただし、公的データは発表時点ですでに古く、現場感覚と大きく乖離していることが珍しくありません。例えば「平均所得は〇〇USD/〇〇VND」と書かれていても、ハノイ中心部と地方農村部では購買力に大きな差があります。

ポイント:数字だけで安心せず、必ず現地で裏取りを行うことが重要です。

2. 消費者ニーズの把握

ベトナムでは都市ごとに文化や価値観が異なり、同じ商品でも受け入れられ方が変わります。

  • ハノイ:老舗が好きで、ブランド力や品質を重視。新しいものへの慎重さがある。
  • ホーチミン:流行に敏感で、新しいサービスや商品を積極的に試すスピード感がある。
  • ダナンなど地方都市:所得水準が都市部に比べて低いため、価格重視の傾向が強い。

例えば、ホーチミンでは売れる日系商品やサービスが地方都市では受け入れられないことがあります。

ポイント:対象都市を明確にし、その都市の消費者特性に沿った調査を行うこと。

3. 競合調査

同業他社の動向を把握することは、成功への近道です。特に注目すべきは以下の点です。

  • 価格設定(現地企業と日系企業では価格戦略が大きく異なる)
  • 販路(オンライン販売/店舗販売/代理店活用など)
  • プロモーション(SNS活用が非常に強力、特にFacebookやTikTokが主流)

ベトナムのローカル企業は意思決定が早く、柔軟に戦略を変えることができます。そのため、表に出ない情報を現地で掴むことが競合優位性につながります。

ポイント:ローカル企業と外資企業のどこが違うのか、なぜ違うのかを調査して理解すること。

4. 法規制・許認可の調査

ベトナム進出で意外に見落とされがちなのが法規制です。業種ごとに異なる規制があり、必要なライセンスを取得していなければ事業が開始できません。例えば、教育関連や小売業などは外資規制が強く、事前調査を怠ると「進出したのに営業許可が下りない」という事態も起こり得ます。

また、労務規制も頻繁に改正されるため、人材採用や雇用契約の条件についても最新情報を確認する必要があります。

ポイント:市場調査だけではなく、法務調査も必ず行うこと。

まとめ

市場調査は「データ分析」だけでなく、現地のリアルを掴むプロセスが欠かせません。

  • 数字を鵜呑みにせず、現地で裏取りする。
  • 都市ごとの消費者特性を理解する。
  • 競合の価格や販路を把握する。
  • 法規制や許認可の壁を事前に調べる。

これらを徹底することで、ベトナム進出・移住のリスクを大幅に減らすことができます。

移住に必要な現地調査の視点

企業進出の際に行う市場調査と同様、家族での移住にも「事前の現地調査」が欠かせません。むしろ、生活の基盤となる分だけ慎重さが求められます。数字や制度上の情報だけではなく、実際の住み心地や文化的な違いを体感することが、移住後のストレスを大きく減らします。

住宅調査

移住先を選ぶうえで最も重要なのが居住環境です。どのエリアが治安面で安心できるのか、また同じ間取りでも地区ごとに家賃相場は大きく異なります。日本人が多く住むエリアは生活の利便性が高い一方、コストも上がりやすいという特徴があります。現地に足を運んで、昼と夜の雰囲気を比べてみることも大切です。

教育調査

お子様がいる場合、日本人学校やインターナショナルスクールの選択肢を把握することが不可欠です。授業料や入学金といった費用面だけでなく、通学にかかる時間や交通手段、安全性も考慮する必要があります。特に大都市では学校選びが住むエリア選びと直結することも少なくありません。

医療調査

移住後に病気やケガに直面した際、頼れる医療機関があるかどうかは安心感に直結します。日本語が通じる医師や通訳が常駐している病院の有無、診療費用、緊急時の対応体制を確認しておくと良いでしょう。医療水準やサービス内容は国によって差が大きいため、現地で実際に見学しておくことをおすすめします。

生活インフラ

日常生活を快適に送るためには、周辺のスーパーや市場、交通機関の利便性、インターネット環境の整備状況を事前に把握しておく必要があります。特にベトナムのようにエリアによってインフラの差が大きい国では、「住んでみないとわからない不便さ」を最小限にするために調査が有効です。

まとめ

こうした調査を怠ると、「思っていた生活と違った」というギャップに直面しやすくなります。実際、駐在員の方々が家族の生活環境によるストレスを理由に、日本へ帰任せざるを得ないケースも少なくありません。そのため、移住前にできる限りギャップを埋めておくことは、仕事への集中力を維持し、成果を高めるうえでも大切な準備となります。一方で、生活環境を具体的にイメージできていれば、家族にとっても安心でスムーズな新生活のスタートが切れるでしょう。

ネット情報では限界がある

Google検索やSNSで得られる情報は、あくまで「一部の事例」や「発信者の主観」に過ぎません。実際の生活やビジネス環境は、数字だけでは見えてこない部分が多いです。

例えば、「ベトナムは物価が安い」とよく言われます。しかし、外国人が住むエリアや輸入品を扱うスーパーでは、日本と変わらない、あるいはそれ以上の価格帯の商品も少なくありません。さらに、SNS上で紹介される飲食店やサービスもプロモーション目的で情報が誇張されていることもあります。

つまり、ネット情報を鵜呑みにして判断すると、実際の生活費やビジネスコストに大きなギャップが生まれてしまいます。

だからこそ、現地に足を運んで「実際に自分の目で確かめる」ことが不可欠です。この「現地調査」こそが、成功と失敗を分ける最大のポイントになります。

まとめ

ベトナム進出や移住を成功させるためには、「市場調査」と「現地調査」の両輪が欠かせません。そのため、経済統計やレポートといった公的データを確認するだけでは不十分。消費者の購買行動・競合他社の動き・法規制・生活環境などを多角的に把握する必要があります。

特に、インターネット上の情報には限界があります。現地を見ずに判断してしまうと、「想定外のコストが発生した」「生活のギャップに耐えられなかった」といったトラブルに直結しかねません。だからこそ、現地での生の情報収集が成功の鍵を握ります。

MISSION.Hでは、日本人が見落としがちな “リアルなベトナム” の現地調査を徹底的にサポート。そして、確実な意思決定を支援しています。ベトナム進出や移住を本気で検討している方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

その他、進出・移住に関する基本情報として、以下の記事もご参考に。