【体験談】ベトナムの不動産事情|賃貸契約の流れと注意点
はじめに
ベトナムでの生活を始める際、最初に直面する大きな課題の一つが「住まい探し」です。駐在員や留学生、日本から赴任する方の多くは、まず日系の賃貸仲介会社を利用します。しかし実際のベトナム不動産事情では、仲介会社を通さずオーナーと直接交渉するスタイルが根強く存在しています。
私自身も初めての賃貸契約で「日本と同じ感覚」で動いてしまい、確認すべき点や内見等で戸惑った経験があります。何も知らずに契約すると、「契約条件が一方的に変更される」「聞いてた話と違う」といったトラブルに巻き込まれかねません。
本記事では、ベトナムの賃貸契約の流れと日本との違い、さらに現地特有の注意点を、体験談を交えて詳しく解説します。
日系の賃貸仲介会社の存在
日本では当たり前の賃貸仲介ですが、ベトナムでは事情が少し異なります。
日本で部屋探しをする場合は「ピタットハウス」「エイブル」「SUUMO」といった仲介会社を通すのが一般的です。オーナーは物件の所有者であり、入居者とのやり取りや管理は基本的に業者が担います。
一方ベトナムでは、オーナーと入居者が直接交渉するスタイルが主流です。もちろんローカル仲介人も存在しますが、現地に慣れている人ほど「直接交渉」で進める傾向があります。
そのため、初めてベトナムに来る駐在員や留学生にとっては、日系の賃貸仲介会社が強い味方となります。
日系仲介会社を利用するメリット
-
希望条件(間取り・家賃・エリア)を伝えるだけで、候補物件を紹介してくれる。
-
内見に同行し、日本語で説明してくれる。
-
契約手続きをサポートし、不明点を質問できる。
特に「契約書」の内容確認やオーナーとの交渉を安心して任せられる点は、日本人にとって大きな利点です。
日系仲介会社のデメリット
一方でデメリットもあります。
-
賃料が割高に設定されているケースが多い。
-
仲介手数料(家賃1ヶ月分が目安)が発生する場合がある。
-
物件紹介が「提携オーナーの物件」に偏りやすい。
コストを抑えたい人や幅広い選択肢を求める人にとっては、やや物足りなく感じるかもしれません。
現地生活に慣れてきた頃には、ベトナム人の知り合いも増えるでしょうし、様々な出会いがあります。そういった場合には、オーナーとの直接交渉で良いと思いますが、ベトナム初心者の場合には、日系仲介会社を利用する方が良いでしょう。
賃貸契約の一般的な流れ(駐在・留学生向け)
-
日系仲介会社を通して物件探し
前節でも説明しましたが、日系の仲介業者では、日本語対応や契約手続きのサポート、トラブル対応などを含めたワンストップの支援が受けられます。そのため、初めてベトナムに来る人にとって安心な選択肢です。契約書の不明点を確認できたり、デポジット(保証金)に関する説明や退去時の精算についても丁寧に案内されます。 -
契約手続きと入居準備
契約書(Lease Contract)署名、デポジットの支払い、部屋の設備確認、鍵の受け取り、居住登録といった流れが一般的です。契約はベトナム語を中心に、英語併記という形式が採られることも多いです。 -
居住登録
ベトナムでは、外国人は住居に入居後、公安(警察署)での居住登録を行う義務があります。通常、入居した後24時間以内(都市部では12時間以内)に、滞在先の公共安全局に登録を申請する必要があります。仲介会社やオーナーが代行してくれるのが一般的です。
参考:Vietnam-Vasa.com -
契約更新および退去手続き
契約期間終了後の更新や解約のルールは契約書によって異なります。更新の可否および更新手続き、退去時の精算や返却のスケジュールを事前に確認しておきましょう。 - 入居中の問題
入居中に何らかの問題があった場合、仲介会社が連絡役になることも。ですが、仲介会社によってはオーナーや管理会社と直接やり取りするように求められる場合も。基本的に、そのどちらかを通さずにご自身で他の業者に依頼することを良く思わないオーナーもいるためご注意を。
日本との主な違いと、現地賃貸の特徴
日本の場合
- 主流:不動産仲介会社による仲介が主流。
- 仲介会社の役割:オーナーの代わりにあらゆることを代行する。
- 敷金・礼金:敷金・礼金、更新料などの費用が一般的。
- オーナーの影響力:入居者と契約後の管理は管理会社・不動産会社が担当。
- 保証金リスク:返却が比較的透明・標準化されている。
ベトナムの場合
- 主流:ローカルではオーナーと直接交渉が主流。
- 仲介会社の役割:オーナーとの連絡役に留まる。
- 敷金・礼金:礼金はほとんどなく、敷金(保証金=デポジット)のみ。
- オーナーの影響力:オーナーの裁量が強く、契約の内容や入居判断に直接関与する事が多い。
- 保証金リスク:返還をめぐるトラブルもあり、契約書に明記されないと返ってこないリスクあり。
私の体験談:日系仲介から直接交渉へ
駐在員時代は日系の賃貸仲介会社を利用していました。しかし、独立して起業した後に引っ越した際は、現地生活に慣れていたため、自分でオーナーと直接交渉して契約をしました。
正直、慣れていれば直接交渉の方がメリットは大きいです。ここで言う「慣れている」とは、単に賃貸契約に詳しいということではなく、例えば次のような力を持っている状態を指します。
- ベトナムでの契約や取引の進め方に慣れている。
- 現地のローカル側の生活知識を理解している。
- ベトナム人の気質を理解し、交渉に自信がある。
- トラブルを想定し、起きたときに対応できる。
直接交渉のメリット
オーナーと直接やり取りすることで、次のような利点があります。
- 家賃が割安で良い物件を見つけやすい。
- 選べる物件の幅が広がる。
- 水道・電気代などの初期設定が安い。
- 契約内容に柔軟なオーナーが多い。
ただし、慣れていないと交渉や契約時にトラブルに発展しやすいです。そのため、初めての方には日系賃貸仲介会社の利用を強くおすすめします。
物件オーナーの見つけ方
現地の人々は主にFacebookやアプリ、友人の紹介で物件を探します。連絡後すぐに内見し、そのまま契約するケースがほとんどです。私の場合は、仕事を通じてオーナーと知り合う機会が多く、それも大きな利点となりました。
ただ、「どうやって探すの?」「誰に聞けばいいの?」という疑問を持つ方も多いはず。最初のうちはやはり仲介サービスを使った方が安心でしょう。
ハノイのおすすめ|日系の賃貸売買仲介会社
ここからは、私が知っているハノイにある日系の賃貸仲介会社をいくつかご紹介します。
- エヌアセットベトナム
ホーチミンやダナンといった主要都市でもビジネスを展開、とても丁寧に対応してくれます。 - スターツベトナム
日本のみならず海外拠点も多い大手。ハノイの支社長はベトナム歴30年以上の超ベテランです。 - ハノイリビング
ハノイに特化、長く賃貸仲介をされていて、動画での物件案内が非常にわかりやすいです。
おわりに
初めてのベトナム生活では、日系仲介会社を利用することが安心ルートです。ですが、現地ではオーナーとの直接交渉型市場が根強いのも事実。そのため、将来的に長くベトナムに住む場合、直接交渉の可能性も視野に入れておくのが良いでしょう。
少ないとは思いますが、日系の仲介会社を利用せず、いきなりローカル感を味わってみたいといった場合には、いつでもご相談ください。