
【現地情報】ベトナム自動車市場トレンド分析
今もバイクが主流なベトナムですが、近年では自動車を所有する家庭も増えています。かつて自動車といえば「富裕層の象徴」でした。しかし、2010年以降はローン販売の普及や小型車が登場、一般家庭にも広がりを見せています。
私が住むハノイでも車の所有率は年々増加しています。一方で、駐車場不足や地下道の未整備も相まって交通渋滞は深刻化。それでもなお人気が衰えない自動車。最近では同じ車種ばかりが街中を走っているのをよく目にします。
旅行者や駐在員の方も、街の風景の変化を感じているのではないでしょうか。では実際に、ベトナム自動車市場で「いま最も売れている車」と「これから人気が高まりそうな車」はどんなモデルなのか、解説していきます。
ベトナムで人気の自動車メーカー
2024年の売上台数実績から、ベトナムにおける人気の自動車メーカートップ3位をまとめました。
- 1位:VinFast(ベトナム)
国内販売台数は約87,000台、断トツのトップ。 - 2位:Hyundai(韓国)
国内販売台数は約67,168台、堅実な人気を維持。 - 3位:Toyota(日本)
国内販売台数は66,576台、Hyundaiとほぼ並び、市場の主要プレイヤー。
また、2025年上半期では、“VinFast”が市場シェアの32.9%で首位、”Toyota”が”Hyundai”を抜いて2位に躍り出るなど、3社の構図が続いています。
参考:The Investor
参考:Focus 2 Move
ベトナムで人気の車種
2024年の売上台数実績から、ベトナムにおける人気の車種をまとめました。
- 1位:VinFast VF 5(EV/AセグメントSUV)
約32,000台を販売し、堂々のモデル別売上トップ。 - 2位:VinFast VF 3(EV)
2025年前半だけで約23,083台売れるなど大ヒットモデル。 - 3位:以下のICE車
Mitsubishi Xpander(MPV)、Ford Ranger(ピックアップ)、Mazda CX-5(SUV)など
参考:The Dunne Insights Newsletter
参考:The Investor
参考:Forcus 2 Move
これらの車が売れた理由分析
全体的なベトナムの傾向を把握しつつ、以下の理由が挙げられます。
VinFast VFシリーズ(EV)が売れた理由
最も大きいのは、政府による優遇策です。具体的には、特別消費税・登録税の軽減です。さらに、充電インフラの整備が進展、EV運用コストの低さへの消費者意識の高まりが追い風になったと考えられます。
特別消費税・登録税については、以下のようになっています。
EVに対するベトナム政府の税制優遇
- 登録税(ナンバープレート費用)
2022年3月〜2025年2月:新車EVは免税(0%)。
2025年3月〜2027年2月:通常の登録税の50%に軽減。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>例:車両価格約1,000万円(約4万USD)の場合、登録税はわずか数十万VND程度に抑えられる。 - 特別消費税(SCT)
EV(9座席以下)はわずか3%(ガソリン車は35〜150%)。
この優遇は2027年2月末まで有効。
一部報道では「15%」との解釈もあるが、現行法令では3%が正確。
ICE車(Xpander・Ranger・CX-5など)が売れた理由
信頼性の高い日本・韓国ブランド、広い室内空間や耐久性、価格とのバランスの良さが評価されたことが考えられます。主な顧客層としては、ファミリー層や業務用途での支持が根強い印象です。
市場全体としてEVの台頭
EV・ハイブリッド車の販売が、前年比25〜30%増と予測されています。つまり、従来のガソリン車からの急速なシフトが進んでいるのがベトナムの自動車市場と言えます。
参考:VIETNAM BRIEFING
参考:VIETNAM PLUS
参考:Tilleke & Gibbins
参考:AInvest
Honda Civic Type R が売れない理由
THANH NIÊNの記事によると、2025年現在、Honda Civic Type R(高性能スポーツモデル)は国内で約30台程度しか販売されていません。この数字は平均すると月に1台レベルです。
売れていない理由は、
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価格が約3億ドンに設定され、一般的なBセグメント車2台分の価格に相当すること
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性能を重視した仕様で、顧客層が非常に限られていること
が考えられています。このことからも、市場の動向や価格設定は、どんな業界でも大切なことがわかります。
今後どんな車が人気になるか?
今後は、EV車と中心に、ベトナム国内ブランド及び海外ブランドが人気を博すと考えます。
電気自動車(EV)全般
政府の「2050年カーボンニュートラル」政策、都市部での電動二輪車規制など、環境政策が需要を後押しすると考えます。また、様々な報道からもEV市場自体が、2030年には約74億USDに成長すると見込まれており、年平均成長率は18〜19%に達するとの予測もあります。
“VinFast”ブランドの拡大
“VinFast”は、技術・ラインナップ・価格の競争力があります。それに加え、2025年前半には販売モデルのトップ3を独占(VF3・VF5・VF6)。そして、市場シェアは約30%と脅威の数字に達しています。また、インドのタミル・ナードゥ州に出資し、現地初の海外組立工場建設を開始するなど、今後も海外進出に意欲的です。
中国系EVメーカーの進出
中国自動車メーカーの”Geely”が、ベトナムに年間7.5万台の組立工場の設立計画中。そのため、今後は価格競争力のあるEVやICE車が市場に登場する可能性があります。また、中国戦略として「小型・低価格EV」の展開がアジア新興市場で成功しており、ベトナムにおいても同様の影響力が期待されます。
ベトナム市場の重要性
ベトナムという市場は、自動車業界にとってはとても重要なポジションになると考えます。
急成長市場としての魅力
ベトナムは、ASEAN内で自動車市場が成長している数少ない国です。また、消費者所得は上昇し、都市化による需要増も増しています。さらに、投資誘致による生産拠点としてのポテンシャルも高い国です。そのため、数多くの外資企業がベトナムへの投資に積極的で、市場が急激に成長しています。
環境政策への対応力
電動化推進政策やインフラ整備(充電網整備、電力補助など)が進んでいます。グリーン車の普及が国家戦略と一致しており、市場の魅力を高めていると言えます。また、ベトナムは変化の早い国。利害が一致し、重要な国家戦略と判断された場合、急速に動き出す可能性が高いです。