ベトナムの労働契約の基本

【現地情報】ベトナムの労働契約の基本

ベトナムの労働契約

「ベトナムでスタッフを雇いたいけど、契約とか法律はどうなってる?」
「試用期間ってどのくらい?社会保険は必要?」
「雇った後のトラブルは避けたいけど、みんなどうやってるんだろう…」

ベトナムで事業を行う際、現地スタッフの雇用は大きなテーマになります。しかし、日本とは法律も慣習も異なります。そのため、基本を知らずに雇用するとトラブルの元になりかねません。

今回は、ベトナムの労働契約と現地雇用の基本を解説します。

ベトナムでの労働契約は原則書面

当たり前のことかもしれませんが、ベトナム労働法では、口頭契約は禁止されています。

また、契約書はベトナム語で作成される必要があります。日系企業では、日本語併記の労働契約書を使用することが多いです。もちろん、日本語併記は可能ですが、公式効力はベトナム語版です。

また、労働契約の中には、次の内容を盛り込む必要があります。

  • 勤務地
  • 業務内容
  • 契約期間
  • 賃金・支払い方法・締日
  • 勤務時間・休憩時間・休日
  • 社会保険・健康保険加入の有無
  • 労働保護(安全衛生など)

労働契約書は外注化して作成してもらうことも多いですが、基本は知っておくことをおすすめします。

ベトナムでの労働契約の種類

ベトナムでは主に3種類の労働契約が定められています。

  • 無期契約(期間:期限なし)
  • 有期契約(12ヶ月超〜36ヶ月以下)
  • 有期契約(12ヶ月以下)

同じ社員に対して、2回まで有期契約が可能です。3回目以降は無期契約に変更する必要があります。

ベトナムでの試用期間

ベトナムでは、試用期間は労働法で以下のように定められています。

職種区分 試用期間上限 試用給与
専門職・技術職(大学卒以上) 60日 本給の85%以上
中等教育卒業職 30日 本給の85%以上
その他の職種 6日 本給の85%以上

現地スタッフを雇用する場合、試用期間を設定するのは基本です。試用期間中は給与の支払い義務があります。無給試用は違法に該当します。また、試用期間中は社会保険未加入でも問題ありません。

ベトナムでの社会保険・健康保険・失業保険

ベトナムでの現地スタッフとの間で労働契約を結ぶ場合、以下の保険加入が義務づけられます。

保険種類 会社負担 従業員負担
社会保険 17.5% 8%
健康保険 3% 1.5%
失業保険 1% 1%
合計 21.5% 10.5%

社会保険未加入の場合は、行政処分や追徴金のリスクがあります。そのため、ベトナム労働法を遵守するのが賢明です。

就業規則の届け出

社員が10名以上いる場合、就業規則の作成と労働局への届け出が義務です。

  • 社員数9名以下:就業規則の作成義務なし(※ただし、作成推奨)
  • 社員数10名以上:労働局認可が必要

実際にベトナム人スタッフを雇用するとわかりますが、就業規則は10名以下でも作成を推奨します。特に職場に日本人の数が少ない場合、秩序の乱れは起こりやすく、就業規則をたてに補正が可能になります。

よくあるトラブル事例

口頭で採用していた

契約不履行や解雇時に、企業側が違法と判断されます。そのため、必ず書面で労働契約を取り交わしてください。

試用期間を過ぎても正式契約を交わしていない

「試用終了=自動的に無期雇用契約」となりえます。そのため、必ず試用期間終了間際に、正式な労働契約を取り交わしてください。

社会保険に加入させていない

労働局監査で指摘対象となります。追徴金と罰金が待っているため、必ず社会保険に加入させてください。

ローカル企業の実態

ローカルの大手企業では、このような内容は一般的に守られています。しかし、ベトナムでも中小企業は多く、その実態は、ド・ローカルと言えます。

お前はもうFIRE!次の日から来るな!で翌日退職

「働かない」「言うことを聞かない」「職場に来ない」このようなケースは普通にあります。日系企業に応募する人材は、比較的日本人寄り発想を持っているため、あまり見ないでしょう。しかし、ローカル企業ではこのような例は普通にあります。「もういいよ、来なくていいよ」であっさり契約解除、相手も「OK」といった具合です。

試用期間が終わっても正式契約を結ばない

2ヶ月間の試用期間が終わっても、そのまま「試用扱い」で働き続けさせることもよくあります。社会保険負担を回避するためや、法的手続きの煩雑さを避けるためです。労働者側には、「今の方が手取りが増えるよ」というような誘惑で、上手くコントロールするところもあります。実際に、「社会保険に加入すると手取りが減るから加入したくない」と言う従業員もいて、双方合意で加入しないケースも頻発しています。

無給で数日試用させる

「仕事ができるか確認するためです」という謳い文句で、数日〜1週間無給で試用。このような正式採用前の“お試し”は、ベトナム全土で慣習的に見られます。ですが、これはもちろん労働法上は完全に違法です。「え!お試し労働ないんですか?」というようなことを聞かれたら、その子は「やられていたんだ」、と気づいてください。

このように、ローカル企業では横行している本当は良くないケースも、MISSION.Hは十分に熟知しています。これからベトナム進出を検討している方で、ベトナム現地のリアルな情報を入手したいという方は、ご連絡ください。