
【現地情報】ベトナムのキャッシュレス事情
先日、こんなご質問を受けました。
「大学生の息子が友達とベトナム(ハノイとその周辺)に旅行に行きます。あまり現金を持たせたくはないと考えています。現地でクレジットカードは使用できますか?」
この後もやり取りが続き、話はクレジットカードだけにとどまらず、キャッシュレスの話へと進みました。質問者の方が知りたかったことは、“現地の支払い”に関することだったわけです。現金?クレカ?キャッシュレス?
結論から言うと、ベトナムは今、“急速にキャッシュレス化が進んでいる国”です。(ただし、都市部と地方、店舗の規模や世代によって大きな差もあります。)
今回は、実際にハノイで暮らしている立場から、ベトナムにおけるキャッシュレス決済の普及状況や、現地での体感をお伝えします。
90%はキャッシュレス決済
ここ数年、レストラン、カフェ、コンビニ、個人商店に至るまで、QRコード決済が一気に普及してきました。私が住むハノイでは、路上で果物販売をしているおばちゃんもQRコード決済で買い物ができます。特に以下のような場所では、確実にキャッシュレスが利用可能と考えてください。
・大手チェーン(Highlands Coffee、Circle K、Lotteria など)
・アパレル店や書店
・Grab や Xanh SM などの配車アプリ/フードデリバリー
日本と違って、「決済端末」ではなくQRコードをスマホで読み取る方式(スキャン支払い)が主流です。つまり、店舗側はタブレットやレジがなくてもOKという、ハードルの低さが普及を後押ししています。
日本のクレジットカードが使える場面は30%
一方、日本のクレジットカードが使えないところが多いです。“日本の”と書きましたが、正確には“外国の”クレジットカードがあまり使用できません。ただし、以下のような場所では使用できることが多いです。
・日系スーパーマーケットやショッピングモール(イオンモールなど)
・現地の大型スーパーマーケットやショッピングモール(vincomなど)
・外資系ブランドショップ( Louis Vuitton や NIKE など)
銀行の通帳やキャッシュカードはない
ベトナムでは個人の銀行口座を開設する際に、アプリ登録を行います。つまり、基本はスマホアプリのみで操作します。スマホアプリがあれば、支払いから入出金が可能になるわけです。ただし、外国人の場合、入金は銀行窓口まで行かなければならないケースもあるため注意が必要です。
つまり、銀行口座を開設してスマホアプリが登録できれば、キャッシュレス決済の準備は整ったことになります。
ちなみにキャッシュカードは別途申し込めば可能ですが、ベトナム人はほぼ持っていません。また、通常のキャッシュカードではなく、デビットカードになります。
通帳もなければ、キャッシュカードもない。日本からしたら不思議な光景ですが、ベトナムでは一般化された光景です。
主流なQRコード決済でよく使用されるアプリ
ベトナムでは、銀行のお金管理もアプリでする。つまり、アプリがそれだけ普及していることを意味します。SNSではZaloというアプリが、ショッピングでは MoMo や Shopee がよく使用されます。ちなみに、 TikTok は日本よりも普及しており、 TikTok 内でショッピング機能が利用できます。
またそのアプリ普及に合わせて、以下のような決済アプリが多く使われています。
MoMo
ベトナムで最も利用されている電子ウォレットです。使える店が非常に多く、ローカル屋台でも対応できます。水道代、電気代、スマホ料金の支払いも可能です。キャンペーンやポイント還元が豊富なこともあり、利用者が多いと考えられています。
ZaloPay
Zalo(LINEのようなベトナムのSNS)と連携して使える決済アプリです。Zaloユーザー同士の送金が簡単で、ベトナム人に重宝されています。
Viettel Money / VNPT Pay など
通信キャリア系のウォレットです。地域によって使用率に差がありますが、都心部では頻繁に使用されています。
現金主義もまだまだ健在
ベトナムは、いくらキャッシュレス化が進んでいるとはいえ、完全なキャッシュレス社会ではありません。特に、2025年7月1日からは法改正が行われ、それに乗じて現金主義が加速する可能性も示唆されています。ちなみに、以下のような場面では、いまだに現金を使用することも多いです。
・地元の食堂や屋台(特に年配の経営者)
・市場や個人商店
・バイクの駐車場の支払い時
・地方都市・農村エリア
また、「QRコードが貼ってあるが実際は使えない」「アプリが一時停止中」というケースもあり、結局“現金は必要”というのが現地でのリアルな感覚です。
旅行者や短期滞在者の注意点
キャッシュレス決済の登録には、様々なステップがあり、就労許可証と滞在許可証が必要な場合があります。そのため、旅行者や短期滞在者の場合、以下の方法で対応するのが一般的です。
・Grabアプリにクレジットカード登録 ▶ 移動・デリバリーはキャッシュレスOK
・大手カフェ・飲食店では、Visa/Masterなどのクレジットカードで対応
・現金で決済対応
つまり、短期滞在者の場合、完全なキャッシュレスは難しく、“一部キャッシュレス”の活用になります。ベトナムでの生活が長期化する予定であれば、銀行口座開設と合わせて、キャッシュレス対応を進めてください。
若者に合わせたキャッシュレス普及
実際に現地で生活していると、以下のような傾向が強く見られます。
世代/エリア | キャッシュレス利用率 |
---|---|
都市部の若者 | 非常に高い |
中高年層 | やや高い(現金派も混在) |
地方都市 | 店舗による差が大きい |
観光エリア | 高いが、英語対応&カード対応もあり |
特に20〜30代の若者は、MoMoやZaloPayも日常的に使っていて、財布なし生活も浸透してきています。
ベトナムは若者がつくる国という印象がうかがえます。
キャッシュレス社会の背景にある3つの要因
スマホ普及率の高さ
ベトナムはスマートフォン普及率が高く、国民の大多数がスマホを所有しています。特に韓国企業のベトナム進出影響が大きく、安価で性能の高い Samsung のスマホは相当普及しています。アプリ利用に対する抵抗が少ないことが後押しになっていると考えます。
国策としてのデジタル化推進
ベトナム政府はデジタル化を推進しています。そのため、政府でさえ「キャッシュレス経済」を掲げている状況です。行政手続きや公共サービスのデジタル化が急速に進行していることも背景にあります。
少額決済文化
元々ベトナムは少額の現金決済が多いです。そのため、数千ドン単位でも気軽に使える電子マネーは相性が良いと言えます。
ベトナムは“東南アジアでも有数のデジタル国”
日本よりもあらゆる面で後進国だと思われがちなベトナム。ですが、実際に住んでみると、都市部では“日本以上に進んでいる”と感じることも多々あります。それは特にデジタル分野においてです。今回紹介したキャッシュレス決済をはじめ、デジタル分野の成長は著しいと感じます。
MISSION.Hでは、こうした現地のリアルな生活・商習慣も解説しています。ベトナムで生活する以上、ビジネスの現地展開だけでなく、生活インフラや消費者行動の把握も不可欠です。
そのため、ベトナムに実際に暮らしながら得たリアルな情報をもとに、「地に足のついたサポート」を提供しています。気になった方は、ぜひお気軽にご相談ください。