【体験談】ベトナム進出で差がつくブランディングの価値

【体験談】ベトナム市場で差がつくブランディングの価値

はじめに|ブランディングは“装飾”ではなく“戦略”

ベトナム市場は近年、競争が一段と激化しています。特に外資企業のマーケティングは上手く、単なる“良い商品”だけでは顧客の支持を得にくくなっています。そこで重要になるのがブランディングです。これは単なるロゴや広告ではなく、顧客や市場に対して自社の価値をどのように認識してもらうかを戦略的に設計する行為です。

ブランディングは外部への発信だけではありません。組織内部へ浸透させる“インナーブランディング” も不可欠です。一貫したブランド価値に基づき社員が行動することで、顧客接点全てで同じ価値体験を提供できます。

本記事では、私自身のベトナムでの実体験を共有しつつ、なぜブランディングが重要なのか、海外研究・報告に基づいて解説します。

ブランディングとは何か?

ブランディングとは、消費者の心の中にブランドを形成することで、企業・商品・サービスに意味を持たせる戦略プロセスのことです。

ブランド自体は単なる商品ではありません。他社と区別される独自の存在価値です。名前・ロゴ・デザインなどの物理的特徴だけでなく、消費者が抱く感情的なイメージや連想も含まれます。ブランドは消費者にとって選択の際の意思決定を簡略化する役割を果たします。

(出典:The Branding Journal – What is branding?

ブランディングが企業にもたらす本質的価値

顧客の認知と購買行動への影響

ブランディングの最も基本的な価値は何でしょうか?

それは、顧客が企業や商品・サービスを一貫した価値として認識できるようになること。海外研究では、ブランディング活動が消費者の認知・品質評価・ブランド連想を高め、ブランド資産(Brand Equity)を強化すると報告されています。

そして、消費者の購買意欲・忠誠心が向上するという結果が出ています。これは、感情的・象徴的な反応が、ブランドの変化後に最も敏感に反応することから明らかです。

(出典:BP – Assessing the impact of rebranding activities on customer

競合との差別化と成果への寄与

ブランディングは価格競争からの脱却を可能にします。

例えば、グローバルなブランド戦略解説では、次のように言われています。

ブランドは企業を競合他社から際立たせ、顧客とのエモーショナルな結びつきをつくる重要な要素であり、それが長期的に企業価値に寄与する

Apple や McDonald’s などの事例では、ブランドが価格以外の価値基準を形成し、顧客が同じカテゴリ内でも選択基準として作用していることが示されています。

(出典:Investompedia – Building a Strong Brand: Strategies for Success

ベトナム市場でブランディングが重要な理由

消費者行動の変化とブランド価値

ベトナム国内でも、ブランド価値を重視する動きが見られます。

Brand Finance が公表した「Vietnam 100 2025」では、複数の業界においてブランド力が経済価値として捉えられており、銀行・通信などの主要ブランドが高い評価を持っています。つまり、ブランド価値そのものが市場で評価される構造が形成されつつあることが読み取れます。

(出典:Lao Dong – Brand Finance cong bo bang xep hạng thuong hieu Viet Nam nam 2025

デジタル空間におけるブランド体験の重要性

デジタル空間でも多くの企業がブランドを意識しています。

ベトナム市場では急速なデジタル化が進んでいます。ですが、ブランドストーリーや感情的な繋がりが、消費者に強く影響します。電商やオンライン接点が増える中、企業はブランドの物語性や顧客との感情的な結びつきを重視する傾向が報告されています。これは単に商品を知ってもらうだけではありません。ブランドとしての共感を形成する上で重要な要素です。

(出典:VIETNAM.VN – Xay dung thuong hieu Viet tren khong gian so

インナーブランディングとは何か?

インナーブランディングとは、社員一人ひとりの 行動・価値観・思考をブランドの価値や約束に一致させるプロセスです。

単なる社内コミュニケーションや研修だけではなく、ブランドを内部で「体験し・実践する」状態を創る戦略的取り組みを指します。(英語では、”Internal Branding”と書きますが、本記事では日本人に馴染みのある表現として「インナー」を採用。)

(出典:Brand Trust – Internal Branding

インナーブランディングの価値

インナーブランディングとは、社員一人ひとりが「ブランド価値・方向性」を理解し、行動に落とし込むことです。

これにより、顧客との接点全体に一貫した価値体験を提供することが可能になります。海外のマーケティング理論でも、ブランド体験と社内行動の一致が顧客の忠誠心(Brand Loyalty)や信頼形成に強く影響するとされています。ブランド体験・ブランド資産の向上が、持続的な企業成長を支えることが示唆されています。

インナーブランディングの目的

インナーブランディングは、明確な内部戦略です。

  • 社員がブランドの「使命・価値観」を理解する
  • 社員がブランドの価値を自ら説明できる
  • 社員の行動がブランド価値の提供につながる

という状態をつくることです。これは、社外向けのブランドメッセージと、実際の顧客体験との間に生じがちなギャップを縮める役割を持っています。

ベトナム市場で実践すべきブランディング戦略

ターゲット理解と価値設計

ブランド戦略の出発点は、徹底した顧客理解と、それに基づく価値設計にあります。

自社が提供するサービス・商品を、

  • 「誰が」購入しているのか。
  • 「どのような悩み・欲求」を背景に購入しているのか。
  • 競合は「どのような価値」を提供し「どのようなメッセージ」で顧客に訴求しているのか。

こうした問いに具体的に答えられなければ、ブランド戦略は成立しません。言い換えれば、自社サービス・商品のフィールド理解こそが、すべての土台になります。

中でも特に重要なのが、顧客の心理や文化的背景の理解です。これは海外マーケティング理論においても繰り返し強調されているポイントです。「ペルソナ設計」と「価値訴求」が一致してはじめて、ブランドは正しく伝播します。

答えは常に現場にある

顧客がサービス・商品を手にする瞬間、そこには必ず感情が生まれます。

喜び、満足、不安、怒り、期待。これらはすべて、重要な一次情報です。

  • 顧客の表情を観察する。
  • 顧客と直接対話する。
  • 顧客から率直なフィードバックを受け取る。

顧客との接点は無数に存在し、その一つひとつの中に「答え」があります。顧客理解を起点として、提供価値を再定義する。そして、そこからブランドメッセージ、カラー、イメージを設計していく。この順序を誤ってはいけません。

日本からベトナムへ進出する企業の多くは、規模の大小を問わず、初めての市場で必ず壁にぶつかります。私自身も例外ではありませんでした。解決策はシンプルで、現場に足を運び、一次情報を自分の手で取りに行くことです。

現場ではよく昼食をご用意していただきました。お断りするも「早く食べなさい」ということで、200軒以上のベトナム人のご家庭料理を馳走になりました。
現場ではよく昼食をご用意していただきました。お断りするも「早く食べなさい」ということで、200軒以上のベトナム人のご家庭料理を馳走になりました。

ベトナムでの実体験|現場で見つけた答え

私は日本から初めてベトナムへ進出した際、ハウス関連事業を行う日系法人に所属。海外事業責任者兼ベトナム支社長として現地に赴きました。

当初は、「日本で提供しているサービスを、そのまま忠実に届ける」ことを実行しました。しかし、ベトナム市場の反応はほぼゼロ。何をしても手応えがないことが、早い段階で明確になりました。

大企業であれば、資金力を背景に長期的な投資が可能です。しかし、中小企業の場合、限られた時間と資源の中で、できるだけ早く成果を出す必要があります。

そこで私は考え方を切り替え、ボランティアに近い価格でサービスを提供。徹底的に現場へ出るという判断をしました。目的はただ一つ、「答えを見つけること」です。

お客様から「あなたの会社の宣伝用にプロのカメラマンを準備してあげる。無料で良いからぜひ役立てて。私も宣伝するわ。」と言ってもらえ、無料で宣材を用意してくれました。その時の一枚です。ブログには編集写真のため、画質が落ちている点はご了承を。
お客様から「あなたの会社の宣伝用にプロのカメラマンを準備してあげる。無料で良いからぜひ役立てて。私も宣伝するわ。」と言ってもらえ、無料で宣材を用意してくれました。その時の一枚です。ブログには編集写真のため、画質が落ちている点はご了承を。

現場に入る大切さ

現場ではベトナム人スタッフに通訳を依頼しました。そして、通訳には「感情や考えは入れず、率直に通訳」してもらいしました。そして、現場では、次のような問いをお客様に、そして、自分自身にも投げかけ続けました。

  • なぜ、この顧客は自分たちのサービスを選んだのか。
  • 他社と比べて、どこに価値を感じたのか。
  • なぜ日本のサービスに魅力を感じたのか。
  • そもそも、なぜこのサービスを必要としているのか。
  • なぜこのような質問をしてきたのか。
  • この価格では注文したが、正規価格ならいくらまでなら支払うのか。
  • この顧客と前の顧客の共通点・相違点は何か。
  • 別のサービスを追加で注文する可能性はあるのか。
  • なぜリピートしてくれたのか、なぜ定期利用を望んだのか。
  • この顧客は単発で終わる可能性が高いのか。

こうした問いを抱えながら、合計417件の顧客宅を自ら訪問しました。ベトナム人スタッフからの間接的な情報ではなく、すべて自分自身の目と耳で得た情報です。

およそ150件を超えたあたりで、明確な共通項が見え始めました。

この方向性でブランディングを組み立てれば、精度は高い

そう確信し、そこからインナーブランディングにも着手しました。

こちら旧市街のお客様からは「非常に満足した。こんなサービスは初めてだ。」とのことで定価の倍の金額を支払っていただけました。お断りすると、「チップとして受け取りなさい。」とのことでした。
こちら旧市街のお客様からは「非常に満足した。こんなサービスは初めてだ。」とのことで定価の倍の金額を支払っていただけました。お断りすると、「チップとして受け取りなさい。」とのことでした。

インナーブランディングがもたらした効果

インナーブランディングでは多くの工夫を重ねましたが、起点は採用面接です。価値観の共有を最優先し、ブランドの考え方を理解できる人材を採用することに注力しました。

結果として感じた最大のメリットは、

  • 社員が一人も辞めなかったこと。
  • 共通の判断基準のもと、一貫した行動が取れるようになったこと。

制服の着こなし、何が良くて何がダメかという基準、顧客対応の姿勢。これらを社員自身が自律的に判断できるようになり、海外事業の運営は格段にやりやすくなりました。

まとめ|ブランド価値が成果をつくる

ブランディングとは、単なる見た目やロゴの装飾ではありません。

戦略的な価値設計によって顧客の心に「選ばれる理由」を創り出す行為です。ベトナム進出を検討する企業は、文化・価値観に寄り添い、ターゲット理解を深めつつ一貫性のあるブランド戦略を設計する。この行為が、現地で選ばれるブランドを築く鍵となるでしょう。

その土台には、なるべく「正確な情報・情報の切り口」が必要です。ベトナムの現地情報でお困りの場合は、いつでもご連絡下さい。

その他、私が実体験から学んだことは、以下の記事もご参考に。