【体験談】日本人が意外と気づいていないベトナム文化のズレ
はじめに
海外で生活していると、「自分の国では普通のこと」が、実はそうではないと気づく瞬間があります。
特に日本人は、礼儀やマナーを重視する文化で育っています。そのため、海外でも「日本と同じ感覚」で行動してしまうことがあります。しかし、文化は国によって驚くほど違います。
例えば、日本では普通の食べ方でも、ベトナムでは少し驚かれることがあります。反対に、日本人が驚くようなことでも、ベトナムではごく自然な行動だったりします。
今回は、ベトナムで生活する中で感じた日本人が意外と気づいていない文化の違いについて紹介したいと思います。
日本人が意外と気づいていない「文化のズレ」
日本人はよく「海外に住んでいる=その国の文化を理解している」と思われがちです。
しかし実際には、
- 日本人コミュニティを中心とした生活
- 日本食が中心の食生活
- 日本語だけで完結する環境
- 取引先も日系企業が中心
という生活になり、意外とローカル文化に触れる機会が少ないこともあります。
そのため、何年住んでいても気づかない文化の違いが存在します。
その一つが、日常生活の中にある小さなマナーや習慣です。
①麺はすすらずに食べる
日本ではラーメンやうどんをすすって食べることは普通です。
むしろ「美味しそうに食べている」という意味になることもあります。
しかしベトナムでは少し違います。
例えば、「Pho, Bun, Bun cha」などの麺料理は、日本のように音を立ててすすって食べる文化はほとんどありません。
ベトナムでは、スープはレンゲで飲み、麺は箸で静かに食べる人が多いです。そのため、日本のように大きな音を立てて麺をすすって食べると、少し驚かれることがあります。
この違いは、ベトナムの食文化の背景とも関係しています。
ベトナムの食事文化は、
- 中国の儒教文化
- フランス統治時代のテーブルマナー
の影響を受けているとされています。
そのため食事は、「落ち着いて静かに楽しむもの」という意識が比較的強いのです。
なお、ベトナムのテーブルマナーについては、以下のサイトも参考になります。
(参考:Dining Etiquette in Vietnam – 24 Tips to Avoid Embarrassment)
②ベトナムでは年齢をよく聞かれる
日本では、初対面で年齢を聞くことは少し失礼だと感じる人も多いでしょう。
しかし、ベトナムでは年齢を聞くことはとても普通のことです。
なぜなら、ベトナム語には相手の年齢によって変わる呼び方があるからです。
例えば、次のようなものがあります。
- Anh(年上の男性)
- Chị(年上の女性)
- Em(年下)
つまり、年齢が分からないと適切な呼び方ができないのです。
これはベトナム語の大きな特徴の一つでもあります。
ここで一つ注意したいことがあります。
年上の女性を呼ぶときは、なるべく 「Chị」 を使うと無難です。
たとえ自分より年上であっても、「Bà」 を使うと「かなり年配の女性」という意味になるため、失礼に感じられることがあります。
私もベトナム人のお客様と接する際、相手がかなり年上の女性に見える場合でも、よく 「Cô ơi」 と呼びかけて会話をしていました。
ベトナム語では、このように相手との関係や年齢によって呼び方が変わるため、日本人にとっては少し難しく感じる部分でもあります。
ベトナム語の単語や文法については、次のサイトがよくまとまっており参考になります。
>ベトナム語を学んでいる方は、ぜひ一度見てみてください。
(参考:東京外国語大学言語モジュール)
③関係が重視される
日本でも人間関係は大切ですが、ベトナムではそれがさらに強いと言われています。
例えばビジネスの場面でも、
- 契約そのものよりも信頼関係
- 知人からの紹介
が重視されることがあります。
日本では、企業同士が初めて取引をする場合でも、契約内容や条件が整っていればビジネスが始まることが多いでしょう。しかしベトナムでは、まず「誰から紹介されたのか」が重要になることがあります。
信頼できる人からの紹介であれば話が進みやすくなる。
反対に、紹介がない場合は関係を築くまでに時間がかかることもある。
この背景には、東アジアに広く見られる儒教文化の影響があるとも言われています。
儒教文化では、社会は個人よりも人間関係のつながりによって成り立つという考え方が強くあります。
ベトナムでは、このような人間関係のネットワークを「Quan hệ(クアンヘ)」 と呼びます。
この言葉は、単なる知り合いという意味ではなく、
- 信頼関係
- 人脈
- 社会的なつながり
といった意味を含んでいます。
そのため、ベトナムではビジネスの場面でも、いきなり仕事の話をするより、まずは食事や会話を通じて関係を築くことが大切だと言われることがあります。
なお、この「関係性の重要性」については、学術研究でも指摘されています。
興味のある方は、以下の論文も参考にしてみてください。
(参考:Marketing Insights from Quan He)
④クラクションは「怒っている」わけではない
日本では、クラクションは一般的に 「危険」や「怒り」 を示すサインとして使われることが多いです。
しかし、ベトナムでは少し意味が異なります。クラクションは 「ここにいるよ」 という合図のように使われることが一般的です。
特にバイク社会のベトナムでは、以下のような場面で頻繁にクラクションが鳴らされます。
- 追い越すとき
- 曲がるとき
- 自分の存在を周囲に知らせるとき
日本人の感覚で聞くと、道中クラクションが鳴りっぱなしで 「みんな怒っているのでは?」 と驚いてしまうかもしれません。しかし実際には、ほとんどの場合は単なるコミュニケーション手段です。
どんなときにクラクションを鳴らせばいいのか、正直なところこの感覚は、ベトナムで普段からオートバイに乗っていると少しずつわかってきます。(ちなみに、日系企業ではオートバイ通勤を承認していない会社も多く、経験する機会が少ない人もいるかもしれません。)
このような交通習慣は、ベトナムならではの 人口密度の高い都市とバイク中心の交通文化 が背景にあります。
慣れると、道路の流れをスムーズにするためのサインとして理解できるようになります。
⑤「Yes」が必ずしも同意とは限らない
ベトナムでは、会話の中で「Yes」や「OK」と言われても、必ずしも完全な同意を意味するわけではありません。
これはベトナム文化において、相手に失礼にならないよう配慮したり、直接的な否定を避けたりする傾向に由来しています。
そのため、ベトナム人が「Yes」と言った場合、それは単純に 「聞きました」 という意味であることもあります。
日本人の感覚では「同意」と受け取りがちですが、注意が必要です。
私も業務連絡やメッセージで、最初は 「本当に理解しているのかな?」 と感じたことがよくありました。
こうした間接的な表現は、東南アジアの多くの国に共通するコミュニケーションスタイルです。
特にビジネスや目上の人との会話では、相手の言葉の裏にある意図を読み取ることが重要になります。
私が経験して苦労した文化のズレ
私がベトナムで事業運営や経営をする中で、最初は多くの戸惑いがありました。
例えば、
- 言ったこと以上の業務を行わない習慣がある
- マニュアル通りに事を進める習慣があまりない
といったことです。
最初は「なぜこうなるのか?」と戸惑いました。しかし、よく観察してみると、これはベトナムの文化的背景や働き方の特徴に起因する部分が多いことがわかります。
例えば、
- 柔軟な対応を重んじる文化
- 形式よりも現場の状況を優先する習慣
といった文化的特徴が影響しています。
そのため、文化を理解した上で働き方やコミュニケーションの仕方を工夫することが重要だと学びました。
例えば、
- 指示はなるべく具体的に、言葉だけでなく書面や図で示す
- 重要タスクとそうでないタスクを分け、重要タスクのみ進捗をこまめに確認する
といった工夫で、スムーズに業務を進められるようになりました。
結局のところ、文化の違いは苦労するポイントであると同時に、新しい学びのチャンスでもあります。
ベトナムでの経験を通じて、私も柔軟性とコミュニケーション力の重要性を改めて実感しました。
海外で生活や仕事をする際には、文化の違いを「批判するポイント」として捉えるのではなく、理解し、工夫して楽しむことが大切だと感じています。
おわりに
ベトナムでの事業運営や経営には、文化の違いからくる小さな戸惑いや困難がたくさんあります。しかし、こうした経験は決してネガティブなものばかりではありません。むしろ、柔軟性やコミュニケーション力を磨く絶好の機会でもあります。
「最初は戸惑うのが当たり前」です。
ほとんどの問題は解決することができます。
文化の違いを理解し、観察し、工夫する。そうすれば、必ずスムーズに仕事を進めることができます。
もし、ベトナムでの事業運営や経営で困ったことがあれば、ぜひ気軽にご相談下さい。