【ベトナム進出/移住】ベトナムでの家政婦・秘書の雇用と注意点

【ベトナム進出/移住】ベトナムでの家政婦・秘書の雇用と注意点

はじめに

ベトナムに長く在住している日本人の中には、家政婦を雇用しているご家庭も少なくありません。実際に私が知るケースでも、単なる“雇用関係”を超え、家族の一員のように信頼関係を築いている例があります。家政婦の表情から、その関係性の質が伝わってくるほどです。

また、事業を経営されている方であれば、家政婦に限らず、秘書やパーソナルアシスタントを雇用するケースも増えてきています。

一方で、現実の運用はどうでしょうか。

「紹介で雇えば問題ないのか?」
「労働契約書は本当に必要なのか?」
「社会保険や法的義務はどこまで発生するのか?」

実務では、慣習や紹介ベースで曖昧に進められているケースも少なくありません。しかし、その曖昧さは、将来的な労務トラブルや信頼関係の破綻につながるリスクを内包しています。

本記事では、ベトナムにおける家政婦・秘書の雇用について、法的枠組み、実務プロセス、そして見落とされがちな注意点を体系的に整理します。

ベトナムにおける家政婦の雇用

家政婦とは何を指すのか?

Luat so 45/2019/QH14では、家政労働は正式な労働形態として規定されています。そして、対象となる業務例としては以下のものが挙げられます。

  • 掃除/洗濯
  • 料理
  • 育児/ベビーシッター
  • 高齢者介護
  • 運転手 など

つまり、家政婦は「非公式な手伝い」ではなく、法律上の労働者です。

家政婦には雇用契約は必要か?

原則、書面による労働契約が必要です。また、契約書には以下を明記する必要があります。

  • 業務内容
  • 勤務時間
  • 給与
  • 支払方法
  • 休暇
  • 住み込み条件(該当する場合)
  • 契約解除条件 など

そして、契約解除の場合は、通常15日前通知が求められます。

参考:VIETNAM.VN – Quy dinh ve lao dong la nguoi giup viec gia dình

家政婦の社会保険・健康保険

法的には、雇用主は保険加入義務を負います。ですが、実務では以下のケースが依然として多いのが現状です。

  • 口頭契約のみ。
  • 保険未加入。
  • 現金支払いのみ。

そのため、「慣習」と「法律」は一致していないことを理解しておく必要があります。Viet Nam Newsの記事でも取り上げられており、記事としては2017年と少し古いもの。ですが、実際、私が知っている家政婦も現金で給与を受け取るのみであり、今でも実態には差異があることは明らかです。

参考:VIETNAM BRIEFING – VIETNAM LABOR LAWS

家政婦の採用方法

①直接雇用(紹介・口コミ)

  • コミュニティ紹介
  • 近隣ネットワーク
  • 既存家政婦からの紹介

紹介や口コミの場合、信頼がおけるのが特徴として挙げられます。
一方で、契約管理が曖昧になりやすいというデメリットがあります。

②家事代行アプリの利用

  • 時間制
  • アプリ決済
  • レビュー評価あり
  • スポット利用可能

ベトナムの都心部では、住み込み型の家政婦から、時間制・オンデマンド型へシフトしています。
具体的には、bTaskee などの家事代行アプリが普及しています。

③どんなところで探すのか

以下、実際に家政婦を探す際に利用されるネット掲示板やFBグループ等をまとめてみました。

掲載はハノイのものをまとめましたが、ベトナム全域でも上記のようなコミュニティが存在します。

ベトナムにおける秘書の雇用

家政婦と異なり、秘書は企業労働者としての正式採用になります。

雇用形態

秘書の雇用形態は様々です。

  • 正社員
  • 有期契約
  • 派遣契約
  • 業務委託

企業規模や用途によって、選択肢が変わります。

外国人秘書を雇う場合

外国人を雇用する場合は、以下が必要です。

  • 労働許可証(Work Permit)
  • 労働契約
  • 社会保険手続き

申請は通常、採用前に行います。他の職種でも見られる外国人採用と同様です。

秘書に求められるスキル

  • 言語能力(日本語/ベトナム語/英語)
  • 事務処理能力
  • スケジュール管理
  • 高度なコミュニケーション能力

特に駐在員向け秘書は、文化的調整能力が極めて重要です。また、ベトナム人秘書は日本人秘書とは特質も異なるため、採用時には注意が必要です。

実務上の注意点

①契約書を必ず整備する

トラブルの多くは「曖昧な口約束」から生じます。

  • 業務範囲を明確化する。
  • 残業の扱いを明確化する。
  • 試用期間の定義する。
  • 解雇条件の明記する。

これだけでもリスクは大幅に下がります。特にベトナムに初めて進出した日本人や日本企業の場合、契約文化にまだ馴染みがないこともあり、口約束で事を進めがちなため、ご注意下さい。

②労働時間・休暇の理解

ベトナムでは旧正月(テト)など長期休暇があります。特にテトのような長期休暇中、必ずと言っていいほど、ベトナム人は故郷に帰省します。そのため、長期休暇は家政婦・秘書ともに影響します。

休暇期間の取り決めは事前に合意しておくべきです。また、合意しても休暇が近づくと条件を変えられることもあります。そのため、休暇が近づいた際には必ず休暇期間中の取り扱いを念押しで確認しておきましょう。

③文化的配慮

同じアジアでも、ベトナムは日本とは異なる文化があります。特に以下の点には気をつけて下さい。

  • 直接的な叱責は関係悪化につながる。
  • 公平性への感度が高い。
  • 家族事情を重視する文化がある。

長期雇用には、信頼関係の構築が不可欠です。そのため、文化配慮が必要です。

④よくあるトラブル例

  • 業務範囲が曖昧で追加要求が増える
  • 突然の退職
  • テト前の給与トラブル(給与前払い/テトボーナス)
  • 個人情報管理の不備(秘書)

特に秘書の場合、情報管理体制(NDA締結など)は必須です。

おわりに

ベトナムでの家政婦・秘書雇用は、以下の3点に注意して下さい。

  • 法律を理解する。
  • 契約を整備する。
  • 文化を理解する。

「周囲がやっている方法」ではなく、法的・実務的に整備された雇用体制を構築することが、お互いにとって長期的な安定につながります。

ベトナムライフ、ベトナムビジネスを楽しむためにも、これらの点に注意して下さい。その他、ベトナムの現地情報や現地調査でお困りのことがあれば、お気軽にご連絡を。