【ベトナム進出/移住】出張の限界|現地調査の必要性
はじめに
少子高齢化で国内市場が縮小するなか、日本では大手企業だけでなく中小企業や個人投資家までもが、成長の余地が大きい海外市場へ目を向けるようになっています。さらに近年は、「日本での生活に息苦しさを感じる」「もっと自由に暮らしたい」といった理由から、海外移住を検討する人も増えています。
その中でもベトナムは、急速な経済成長と若い人口構成を背景に、ビジネスと生活の両面で注目度が高まっている国のひとつです。
とはいえ、ベトナムでの進出や移住を成功させるためには、事前の調査が欠かせません。なぜなら、正確でリアルな情報こそが成否を左右するからです。ところが、短期の出張や表面的なデータだけでは把握できない「現地ならではの実態」が存在します。
本記事では、企業進出と個人移住の両方の視点から、「現地調査でしか得られない情報」 の重要性を解説していきます。
ベトナム出張調査の限界
短期の出張でも、ある程度の情報を得ることは可能です。
- 会議や商談を通じて、現地パートナーや顧客から一次的な情報を収集する。
- 競合店舗やその他ローカル店をまわり、価格帯や商品ラインナップを確認する。
- 不動産会社や学校案内を通じて、住居や教育環境について説明を受ける。
こうした活動自体は重要ですが、実際には、“表面的な情報” にとどまりやすいのが現実です。
なぜなら、消費行動や生活パターンも時間帯・季節・地域 によって変化するからです。
- 平日の昼と夜、休日では、飲食店や小売店の客層がまったく違う。
- 乾季と雨季では、消費される商品やサービスの需要が変わる。
- マーケティングが日本とは異なり一時的な流行商品やサービスが多い。
短期出張の数日の滞在では、これらの「時間軸・空間軸の違い」を十分に把握することは困難です。
したがって、表面上の印象や一部のデータに依存するのではなく、より体系的で継続的な現地調査を取り入れることが、成功の分かれ目となります。
企業進出編:現地調査でしか得られない情報
ベトナム市場に新たに参入しようとする企業にとって、現地調査は「机上の数字を現実に落とし込む」ための鍵となります。短期出張や報告書だけでは掴みきれないリアルを知ることで、進出の成功確率は大きく変わってきます。
1. 数字では見えない購買行動
統計データや業界レポートは有益ですが、それはあくまで平均値の集合です。
実際の現場では、
- 誰が(年齢層・職業・ライフスタイル)
- どこで(都市中心部/郊外/地方都市)
- どの時間帯に(通勤前/昼休み/仕事帰り)
商品やサービスを購入しているかが重要な判断材料になります。例えば、カフェ市場では「若者がSNS映えを求めて集まる店」と「朝7時に地元民が集まるローカルカフェ」では、戦略がまったく異なります。こうした差は、現場での観察・ヒアリングなしには見えてきません。
2. 競合店舗のリアルな戦略
競合分析においても、現地調査は不可欠です。公式資料やパンフレットでは「企業の理想像」しかわかりません。
ですが実際には
- 店舗の立地条件(人通りの多さ、近隣施設との相乗効果)
- 陳列の工夫やプロモーションの実態
- スタッフの教育レベルや接客スタイル
といった“現場の肌感”が競争力を決めています。あるブランドが「なぜ現地で支持を集めているのか」を理解するには、実際にお客様として店に足を運び、徹底的に観察することが求められます。
3. 人材市場の実態
人材確保も進出企業にとって最大の課題のひとつです。紹介会社や求人票で得られる情報は「表面的な相場観」に過ぎません。
現実には、
- 求職者が本当に求めている条件
- 給与と離職率の関係性
- モチベーション維持の要因(評価制度、福利厚生、人間関係)
といった要素が離職率や採用成功率を左右します。これらは現地の企業担当者や候補者本人へのヒアリングを通じて初めて見えてくる情報です。机上のプランと実際の労働市場の差を埋めるには、現場での確認が必須となります。
移住編:現地調査でしか得られない情報
進出だけでなく、ベトナムへの移住を検討する個人や家族にとっても、現地調査は欠かせません。インターネットや不動産業者の情報だけでは、生活の「継続性」や「安心感」までは把握できないからです。
1. 住宅環境と周辺生活
不動産サイトで見えるのは、美しく撮影された写真と簡単なスペックのみ。
実際に訪れてみると、
- 夜になるとクラブ音楽が響いて眠れない
- 隣が工事現場で常に騒音があり、土日もひっきりなしに騒がしい
- 周辺のスーパーや病院が実際に行ってみると想像と違った
などの現実が見えてきます。「立地」「環境」「生活動線」を直接体感することが、長期生活の快適さを大きく左右します。
2. 教育や医療の現場感
特に子育て世帯にとって、教育と医療は最重要ポイントです。パンフレットやウェブサイトでは学校や病院の雰囲気は伝わりません。
実際に訪問することで、
- 教師や医師がどの言語で対応してくれるのか
- 生徒や患者への接し方に安心感があるか
- 設備や衛生管理は十分か
を確かめることができます。これは家族全員の安心感に直結する要素です。
3. 日常生活のストレス要因
移住生活を続ける上で軽視できないのが、日常の小さな不便やストレスです。
- スーパーの品揃えが日本人の生活習慣に合うか
- 通勤・通学の交通渋滞がどの程度か
- オーナーはどこまで対応してくれるのか
これらは短期滞在では気づきにくい部分ですが、毎日の快適さに直結します。現地調査を通じて実際の生活リズムに近い行動をしてみることで、将来の生活のしやすさを冷静に判断できます。
ベトナムの現地調査の必然性
ベトナム進出や移住は、大きな挑戦であると同時に大きなチャンスでもあります。しかし、短期の出張やインターネット調査だけではどうしても限界があります。そのため、実際に現地を歩き、観察し、人と話すことで初めて「数字では見えない真実」が見えてきます。
企業にとっては、競合や消費者のリアルな姿を知ること。移住者にとっては、日常生活の快適さを肌で感じること。どちらも 「現地調査なくして成功なし」 と言っても過言ではありません。
もしベトナムでの進出・移住を真剣に考えているなら、ぜひ一度、現地調査を実践してみてください。
あなたの仮説を裏付ける答えが、きっとそこにあります。
現地調査に関するお困りごと、調査前の仮説設計、マーケティングやブランディングに関するご相談はいつでもご連絡下さい。
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