【ベトナム進出/移住】中小企業でもできる低コスト市場調査法

【ベトナム進出/移住】中小企業でもできる低コスト市場調査法

はじめに

ベトナムは「人口約1億人」「平均年齢32歳」と若い労働力と消費者層を抱える、東南アジアでも特に注目される市場です。そのため、日本からも中小企業やスタートアップが進出を検討するケースが増えています。さらには、個人・家族の移住先としても人気を高めています。しかし、予算が限られている法人や個人の場合、大手企業のように数百万〜数千万円をかけて、進出や移住前の市場調査を行うのは現実的ではありません。

そこで本記事では、「中小企業や個人でも低コストで実践できる市場調査の方法」を紹介します。

低コスト市場調査の基本方針

「市場調査」と聞くと、専門のリサーチ会社に依頼する大掛かりなものを想像するかもしれません。ですが、中小企業や個人レベルでも十分に実践できる調査方法があります。ポイントは次の3つです。

ネット上の公開データを徹底的に活用する

政府統計や各種レポートは無料で入手可能。市場全体のトレンド把握に有効。

小さな規模で消費者の声を拾う

SNSや口コミ、ミニアンケートを通じて、ターゲット層のリアルな意見を得る。

実際に現地を歩いて確かめる

生活コストや購買行動などは数字だけではわからない。短期でも現地確認が重要。

この3つをバランスよく組み合わせることで、多額の調査費を投じなくても、十分に実用的で精度の高い市場理解が可能です。

海外市場調査は“仮説”から始める

海外市場は不透明で、すべてを調べ切ることはできません。だからこそ 「仮説⇒調査⇒分析⇒修正」 というサイクルを意識することが非常に重要です。

  • 仮説を立てる:「ターゲットは20代女性」「この価格帯なら売れるはず」など、ビジネスの前提を明確化する。
  • 調査する:オンライン・オフラインの方法で情報を収集する
  • 分析する:得られた情報を整理し、事前に立てた仮説が正しいかを判断する。
  • 修正する:外れた部分は大胆に修正し、再び調査へ戻る。

このプロセスを繰り返すことで、「現実に合った戦略」が見えてきます。特にベトナムのように変化の早い市場では、完璧な答えを最初から探すよりも、仮説を持って素早く試し、修正していくことが成功への近道になります。

オンラインでできる市場調査

低コストで取り組みやすいのが「オンライン調査」です。公開されているデータやSNSの情報を組み合わせることで、消費者の傾向や競合環境をある程度把握できます。

公的データ・業界レポートを活用する

※これらのデータは「参考値」として活用することが大切です。統計は古かったり、現実と乖離している場合もあるため、必ず現地情報で裏付けをとる必要があります。

SNSで消費者ニーズを探る

  • Facebook:生活に密着しており、口コミやグループ投稿からリアルな声を確認できる。
  • TikTok:トレンドや購買行動のヒントを得やすい。

※SNS分析では、「何が良い評価を受けているか」よりも「不満や改善点」が参考になります。進出前に顧客がどこで困っているのかを掴むきっかけになります。

ECサイトで価格・レビューを確認する

ShopeeやLazadaといったECサイトがベトナムでは有名です。競合製品の価格帯、レビュー数、星評価から、市場ニーズや顧客満足度を推測することができます。特にレビューコメントは、現地消費者が「なぜその商品を選んだのか」「何に不満を持っているのか」を知る上で有益です。

※オンライン調査だけでも「価格帯の目安」「人気カテゴリ」「消費者層の特徴」まで把握できます。

このように、オンライン調査は「初期段階の方向性をつかむ」目的に向いています。次のステップとして、現地調査で実際の状況を確かめることで精度が一気に上がります。

現地でできる市場調査

オンライン調査で全体像をつかんだ後は、必ず「現地確認」で数字と実態をすり合わせることが大切です。机上の情報では見えない生活感や商習慣は、現場に足を運んで初めて見えてきます。

店舗や市場を観察する

  • 小売店やスーパーや市場を訪れる:商品の価格帯、売れ筋商品、客層の年齢や性別を直接確認できる。
  • 競合店舗の比較:同業他社がどんな立地にあるか、とのような商品を並べているか、を観察することで、自社の強み・弱みを見極めるきっかけが生まれます。

※「誰が・どんな商品を・どんな時間帯に買っているか」を現場で見るだけでも、数字以上の発見があります。

現地消費者へのヒアリング

  • 顧客インタビュー:店頭で購入している人や、SNSで繋がったユーザーに簡単な質問をするだけでも有効。
  • 小規模アンケート:Googleフォームなどを活用すれば、低コストで現地の声を集めることができる。

※ポイントは「数字に表れない意見」を拾うこと。商品に対する感情や生活の不便さは、データだけでは見えてきません。

短期滞在で生活インフラを体感する

  • 住宅環境:外国人が多く住むエリアの家賃相場、周辺の治安や利便性を確認。
  • 交通事情:実際に通勤時間帯に移動して、交通量や渋滞状況を体感。
  • 生活インフラ:スーパー、病院、インターネット環境の使い勝手を試す。

特に移住や駐在員派遣を伴う場合、生活環境の差が仕事のパフォーマンスに直結します。短期滞在を通じて「家族が快適に暮らせるか」を確かめることもビジネスにおいて大切な要素となります。

移住者・中小企業が特に確認すべき項目

調査範囲は広いですが、特に重要なチェックポイントをまとめると以下の通りです。

移住の場合

  • 住宅:賃料相場、安全性、外国人が借りやすい物件の有無など。
  • 教育:日本人学校やインターナショナルスクールの費用や通学時間など。
  • 医療:日本語対応または英語対応可能な病院があるか、医療費や保険の条件など。

ビジネス進出の場合

  • 競合調査:同業他社の立地・価格帯・客層など。
  • 購買力の確認:ターゲット層が実際に払える金額や許容範囲の金額など。
  • ローカルとの違い:外資とローカルで実行する戦略やマーケティングの違いなど。

いずれも「ネット調査との差分」を確認することが重要です。つまり、データは“地図”、現地調査は“コンパス”の役割を果たします。そして、机上の情報で見えなかった現実を補うことで、失敗リスクを大きく減らせます。

まとめ

海外進出や移住は、多くの人にとって大きな挑戦です。特にベトナムのように、成長著しく変化のスピードが速い国では、正確な情報を得ることが成功の分かれ道となります。

この記事では、以下のポイントを押さえてきました。

仮説思考の重要性

いきなり情報を集めるのではなく、「仮説 ⇒ 調査 ⇒ 分析 ⇒ 仮説の再設計」というサイクルを回すことが、未知の環境に挑む際の最大の武器になる。

低コストでも可能な現地調査の方法

公的統計や業界レポートなどの二次情報調査。
現地の市場・店舗・人々を観察する一次情報調査。
直接のヒアリングやアンケートによる顧客理解。
SNSやレビューを活用した生活者視点の情報収集。

調査結果の活かし方

得られた情報を鵜呑みにするのではなく、必ず最初に立てた仮説と照らし合わせて検証する。必要であれば仮説を修正し、再び調査へと進める。この繰り返しが実際の戦略を磨き上げる。

最も重要なこと

ベトナム進出や移住は決して大企業だけのものではありません。中小企業や個人でも、仮説を持ち、現地でリアルな情報を得ることで、十分に可能性を切り開けます。

重要なのは「大きな一歩をいきなり踏み出すこと」ではなく、小さくても具体的な仮説を持ち、それを現地で確かめながら進むことです。そうすれば、リスクを抑えながらも、ベトナムというダイナミックな市場で自分なりの成功をつかむことができるはずです。

現地調査や市場調査、ベトナムでのマーケティング戦略に関してご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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