【ベトナム進出/移住】進出前に現地調査が必要な理由
はじめに
ベトナムはASEAN諸国の中でも高い経済成長を続ける新興国です。「若い人口構成・安定した成長率・外資に開かれた政策」は、日本企業や個人にとって大きなチャンスを生み出しています。
しかし、いざベトナム進出や移住を実行に移すと「想定外のリスク」に直面するケースが後を絶ちません。その大きな理由のひとつが、事前の現地調査不足。つまり、情報不足です。なぜ、「情報」が大切なのでしょうか。
この記事では、なぜ現地調査が不可欠なのかを、新興国特有の課題を踏まえて解説します。
新興国ベトナムのデータは不完全で不正確なことが多い
新興国の統計データや公的資料には「最新性」と「信頼性」の両面で課題が残っています。これは、日本や欧米諸国と比較すれば明らかです。そして、ベトナムも例外ではありません。
表向きの数字は整って見えても、その背後には未計上の経済活動や税務の不透明さが存在します。そのため、データが現実と乖離していることは少なくありません。
経済統計
公式発表されるGDP成長率や投資額には、国の方針や政策的な意図が反映されることがあります。例えば、外資誘致を進めるために「魅力的な数字」が強調される傾向があり、実態よりも楽観的に見えることがあります。私が実際に企業調査を行った際も、公式データでは成長率が二桁とされていた業界が、現場の声では「前年とほぼ横ばい」という感覚だった例もありました。
物価データ
全国平均で算出される統計は、都市部と地方の格差を吸収してしまいます。そのため、ハノイやホーチミンといった大都市の実際の物価水準が反映されにくいです。特に外国人が暮らすエリアや外資系企業が集中する地域では、家賃やサービスコストが日本と同等かそれ以上になることも珍しくありません。例えば、公式の家賃統計では月300ドル前後とされていても、実際に駐在員向けのアパートは1,000ドルを超えるケースが一般的です。
労務・雇用統計
公表される平均賃金は、実際より低く見えます。なぜなら、副業や非公式ルートでの収入が反映されにくいためです。さらに、労働市場の実態は数字だけでは把握できません。例えば、優秀な人材ほど給与水準が高く転職も活発です。そのため、採用や教育コストが予想以上にかかるという現実があります。公式統計を信じて「安価な労働力が豊富」と考えてしまうと、採用戦略の段階で大きな誤算を抱えるリスクがあります。
つまり、「ネットや資料で調べた情報をそのまま鵜呑みにする」のは危険だということです。特に新興国では、“公式データ=現実”ではないという前提を持つことが重要です。机上の数字に加えて、現場での観察やヒアリングから得られる「生きた情報」こそが、事業の成否を左右するカギになります。
日本の常識が通じないビジネス環境
ベトナム市場は、日本のビジネス慣習をそのまま持ち込んでも成功しにくい独自の特徴を持っています。文化・価値観・消費行動が異なるため、「日本では当たり前」が「ベトナムでは通用しない」ケースが少なくありません。
価格感覚
ベトナムでは、現代においても「値段交渉」が日常の一部。市場や小規模店舗だけでなく、サービス業でも価格の柔軟性が求められることがあります。その影響で様々なショップでは、当然のごとく「◯%OFF」という割引提示が毎日されています。日本のような「定価=絶対」という文化は強くなく、「割引・交渉」が購買の決め手になる場合もあります。そのため、現地の価格心理を無視すると、販売戦略がずれてしまうことがあります。
ブランド認知
「日本で売れている=ベトナムでも売れる」とは限りません。例えば、日本では高品質・高価格で評価される商品も、ベトナムでは「高すぎて手が届かない」と受け取られることがあります。一方で、「品質」よりも「デザイン性」や「流行性」や「利便性」が重視される場合が多く、ブランド戦略を一から見直す必要があります。
購買行動
ベトナムの消費者は、SNSや口コミの影響を非常に受けやすい傾向にあります。FacebookやTikTokなどのプラットフォームが購買行動を左右するのは当たり前です。日本のようにテレビCMや雑誌広告というものが一般的ではありません。特に若年層は、「友人の投稿」や「インフルエンサーのレビュー」を信頼します。つまり、プロモーションの設計は根本的に異なるのです。
このような違いは、統計データやネット記事からは見えてきません。現地で消費者に直接インタビューしたり、実際の購買行動を観察する「現地調査」こそが、マーケティング戦略を成功させる唯一の方法です。
進出企業の失敗事例に学ぶ
安易な期待だけで進出を試みるのは避けて下さい。
- 「人件費が日本の1/3だから採算は合うはず」
- 「人口が増えているから売れるに違いない」
このような淡い期待だけでベトナムに進出。しかし、数年で撤退を余儀なくされた日本企業もあります。進出が失敗に終わる典型的な理由を見てみましょう。
人件費は安いが、離職率が高い
確かに平均賃金は日本より低いものの、実際には「優秀な人材ほど引き抜きが頻繁」「すぐに辞める」という現実があります。その結果、教育コストや採用コストが膨らみ、「人件費が安いはずが、日本より割高になってしまった」というケースも少なくありません。また、近年では都市部を中心に人件費も随分と高騰しています。リアルな情報に基づき、販売価格と人件費のバランスをよく考えたプランニングが必要です。
想定していたターゲット層に商品が受け入れられない
日本では人気の商品やサービスでも、ベトナムの消費者には響かないことはよくあります。例えば、品質は高くてもデザインで選ばれない、あるいは、価格が現地の所得水準に合わなすぎるといった理由で販売が伸びないケースです。市場調査を怠ると、根本的にニーズとずれた商品を投入してしまうリスクがあります。
このようなことは、「現地をよく知らなかった」という「情報不足」が原因です。逆に言えば、市場調査・現地調査を徹底していれば、未然に防げる失敗ばかりです。成功している企業は例外なく、進出前の段階で現地を徹底的に分析し、想定外のリスクを最小化しています。
移住を考える家族にも現地調査は必須
企業のベトナム進出だけでなく、個人や家族の移住においても現地調査は欠かせません。「物価は安いから生活できるだろう」「駐在員が多い都市だから安心できるはず」と思って準備不足のまま移住すると、実際の生活環境とのギャップに直面し、想像以上のストレスを抱えることになります。
住宅
エリアによって治安や生活の快適さは大きく異なります。もちろん、ハノイやホーチミンやダナンには外国人向けの住宅街があります。ですが、家賃は日本と同等もしくはそれ以上になるケースも。そのため、「安全性・利便性・家族構成」に合った住環境を事前に調べておくことが不可欠です。
教育
子どもがいる家庭にとって、日本人学校やインターナショナルスクールの有無は最重要ポイント。学費は年間数百万円に達する場合もあり、通学の交通手段や距離も含めて事前に把握する必要があります。教育環境の確認を怠ると、移住後に大きな負担となりかねません。
医療
現地の医療水準は地域や病院によって大きく差があります。日本語・英語が通じる国際病院は安心感があるものの、費用は高額です。日常の診療から緊急時の医療体制まで、事前に確認しておくことが家族の安心につながります。
生活インフラ
見知らぬ土地では、スーパーやコンビニ、病院や学校といった生活環境は、生活の満足度を大きく左右します。特にベトナムのような新興国では、生活インフラで不十分に感じることが多いです。現地を訪れ、実際に様々な施設やサービスを利用してみることで、生活インフラの実態を把握することができます。
こうした要素を確認せずに移住すると、
- 「思っていた生活と違う」
- 「家族が全く馴染めない」
といった不満が積み重なり、結果的に駐在員本人の仕事パフォーマンスにも悪影響を及ぼします。逆に、事前に調査を行い生活を具体的にイメージできれば、移住はスムーズで安心感のあるスタートを切ることができるでしょう。
おわりに:現地確認の大切さ
Google検索やSNSの情報はあくまで一部に過ぎません。特に、「物価」「不動産」「飲食」といった生活にもビジネスにも直結する情報は大事で、広告目的で実態と異なることがあります。
だからこそ、現地に足を運び、自分の目で確かめる「現地調査」 が成功と失敗を分けるポイントになります。
- 統計だけでなく「現場の実態」を知る。
- 消費者行動・競合・法規制を多角的に調べる。
- 移住の場合、生活環境のリアルを把握する。
これらを怠ると「想定と違う」というギャップに直面し、企業にとっては撤退リスク、個人にとっては生活不安へとつながります。
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