【ベトナム進出/移住】公的データの落とし穴

【ベトナム進出/移住】公的データの落とし穴

「高額なコンサルタント費をかけて、数百枚の資料をもらったけれど、現地で全く役に立ちませんでした。」

これは、実際にベトナムに進出した日系法人の代表者の言葉です。

せっかく投資した情報が無意味になってしまうのはなぜでしょうか。本記事では、その背景にある公的データの不正確さと、信頼できる調査のあり方について解説します。

ベトナム進出を考える企業にとって「数字」の落とし穴

海外進出の検討段階で、まず参考にするのは「市場規模」「人口統計」「消費データ」などの公的統計です。日本では政府統計や官公庁の発表値は比較的信頼性が高く、経営判断の基礎となることが多いです。しかし、ベトナムでは事情が異なります。

実際に進出した日系企業が「公的データの不正確さ」に直面しており、そのまま鵜呑みにすると大きなリスクを抱えることになります。実に、私も当時は同じ状況でした。「聞いていたこと、調べていたこと」が全く違うという現実がそこには待っています。

ベトナムの公的データはなぜ不正確なのか?

ベトナムでは以下の理由から、公的データに大きな誤差や偏りが生じやすいのが実情です。

  • 集計方法の違いと更新速度
    地方自治体や省庁ごとにデータ集計基準が異なる場合があり、全国統一性が乏しいです。また、統計の更新スピードも遅く、実際の市況と乖離しているケースが少なくありません。さらに、統計インフラがまだ十分ではなく、現場でのサンプリング精度に課題が残ります。

  • 政治的要因
    経済成長率や貿易データなど、政治的に「良い数字」が優先されます。特に、GDP成長率や輸出入統計等は、他国データと突合すると齟齬が見られることがあります。

  • 非公式経済の存在
    ベトナムでは露店、現金商取引、家内制工業など、統計に表れない「インフォーマル経済」が依然として大きな割合を占めています。公式データだけでは、実際の消費行動や市場規模を正確に把握できません。そのため、現地向けの価格設定が上手くいかないケースが目立ちます。

日本との違い|数字の「信頼度」

日本では総務省や経産省、各業界団体が公開する統計は比較的正確です。また、日本国民が規律正しいこともあり、データ収集が容易にできるという特性もあります。そのため、データが企業の戦略立案に大きな誤差をもたらすことは少ないでしょう。

しかし、ベトナムでは「政府の数字=現場の実態」とは限りません。例えば、よくあるケースとしてベトナム人材採用で見られます。というのも、平均賃金の統計と実際の求人市場の給与水準が大きく乖離しているためです。

このように、日本と同じ感覚で統計を信じてしまうと、現地で予想外のコストや需要不足に直面するリスクが高まります。

公的データを信じすぎた日系企業の失敗例

ある食品関連の企業は、「統計上は市場規模が年間数百億円規模」と見込み、工場投資を実行。しかし、実際には消費の多くがインフォーマル経路(市場や露店)で行われており、想定ほどの販売網を築けず、投資回収に苦しむケースがありました。また、労働統計の不正確さにより、人材確保コストが予想以上に高騰した例もあります。

日本企業が取るべき対策

ベトナム進出を検討する際には、公的データを参考にするだけでなく「現地調査」との突合が不可欠です。

  • 現地でのフィールドワーク
    実際に市場やスーパーを視察し、数字と体感を比較することが重要です。

  • 第三者調査の活用
    信頼できる調査会社を通じ、複数ソースのデータをクロスチェックする必要があります。

  • 現地人ネットワーク
    統計に現れない部分を知るためには、現地の小売業者や消費者の声を直接拾うことも有効です。

信頼できる調査とは?

注意すべき調査データ

ただし、多くの調査会社やコンサルタントは、「ネット調査」や「形式ヒアリング」だけで終わるケースが多くあります。また、「調査⇒分析⇒仮説」のマーケティングでは、一般的な見解による浅はかな仮説も跡を絶ちません。

数百枚にもなる調査データを渡されれば、誰もが信用してしまうのも無理はありません。もちろん、全体像を把握するのには良いでしょう。しかし、それが実務で使えるかどうかは別物です。

使える情報

どのようにすれば「使える情報」を得られるのでしょうか。ポイントは次の3つです。

  1. 公式データと現場調査の両輪
    公的データをベースにしつつ、必ず現地でのヒアリングや観察を組み合わせます。平均数値とピンポイントの数値では大きな乖離が生まれます。そのため、「思っていたのと違う」を減らすためにも現場調査は必須です。

  2. 多角的な情報源の比較と情報の選別
    業界団体、民間調査会社、そして現地の声を照合することで偏りを減らします。また、実態のない嘘の話や目の前のものを鵜呑みにするケースもあります。そのため、情報の選別が大切です。

  3. 小規模テストマーケティングと実踏調査
    進出前に現地で小規模に試し、統計では見えない消費者行動を直接確認するのも大事です。また、動線分析やミステリーショッパーなどの実踏調査によるリアル情報が大切です。

数字より「リアル」を見る

ベトナムは成長著しい魅力的な市場です。しかし、「机上の戦略」が現場で通用しないことも珍しくありません。進出や移住を検討する際には、現地に足を運び、リアルな情報に基づいた意思決定を行うことが重要です。

情報はゴールではなく、スタート地点です。計画の見直しや戦略の立案・修正に活用され、仮説設計やマーケティングの基盤にもなります。つまり、情報は未来の方向を決める「羅針盤」と言えるのです。

リアルな情報の有無が、進出の成功を大きく左右します。

MISSION.Hでは、実踏調査を中心に多様な手法を組み合わせ、意思決定を支援しています。ご相談やご依頼は、ぜひメールよりお気軽にご連絡ください。