【ベトナム進出/移住】ベトナムのフルーツ輸出急増の裏側

【ベトナム進出/移住】ベトナムのフルーツ輸出急増の裏側

ベトナムに住むと驚かされてしまう一つがフルーツ。ベトナムは「フルーツ王国」と呼ばれるほどで、様々な種類の果物が栽培されています。また、南国フルーツが多く、日本には販売されていないフルーツもたくさんあります。

実はこのフルーツ、現在世界へ向けた輸出が急激に拡大しています。そして、今やフルーツはベトナムの経済成長を支える重要な柱の一つとなっています。今回の記事では、ベトナムのフルーツ輸出急増の裏側を解説します。

輸出大国ベトナム

現在ベトナムは、世界の輸出額の国別ランキングで21位という輸出大国です。輸出総額で見ると、

  • 2023年の総輸出額:約3,540億USD
  • 2024年の総輸出額:約4,060億USD

となっており、1年で大幅に輸出額を伸ばしています。また、2024年の貿易収支は249億4,500万ドルの黒字です。これにより、9年連続の黒字となっています。(参考:ベトナムの貿易投資年報

フルーツは成長のエンジンの一つ

その中でも好調に輸出額を伸ばすのがフルーツです。フルーツ・野菜の輸出額は、

  • 2023年:56億USD
  • 2024年:71億USD

と大幅に増加しています。中国向けが約65%を占める中で、嗜好性の高いドリアンなどが急成長しています。

注目のフルーツ

ライチの好調ぶり

関税総局のデータによると、2025年上半期のライチ輸出額は、4,540万USDと前年同期比で92%の伸びを記録。主に中国、日本、オーストラリア、アメリカなどに輸出されています。特に中国への輸出が多く、2025年上半期には輸出額が前年同期比で約3.63倍の約2700万USDに達しました。(参考:VTV

伸び続けるドリアン

様々な種類のフルーツがある中、ドリアンの輸出量が安定的に伸びています。ドリアンの2024年の輸出額は約33億USDです。これは、果物・野菜全体の輸出額の約半分を占めています。(参考:VIETNAMNET GLOBAL

ベトナムがフルーツ輸出で強い理由

ベトナムがフルーツ輸出で強い理由は、「熱帯だから果物が育つ」という一言では片づけられません。それには、大きく5つの要因が絡み合っていると分析します。

1. 地理的・気候的優位性

ベトナムは南北に細長く、熱帯モンスーン気候と亜熱帯気候の両方を持ちます。南部(メコンデルタ)はドリアン・マンゴー・バナナなど熱帯果物に最適です。また、北部ではロンガンやライチのような亜熱帯果物も栽培可能です。

そのため、年間を通じて複数回の収穫が可能で、「オフシーズンの穴埋め供給」ができるため、国際市場で有利となります。

2. 中国市場という巨大な隣国

ベトナムから中国へは陸路で運べるため輸送コストが低く、鮮度を保ったまま大量輸送できます。また近年、中国は「正式な検疫手続き付き輸入」を条件にする国が増えており、ベトナムはこのルールに迅速に対応しました。

結果として、中国の「果物食文化」と「輸入依存度」がベトナムの成長を後押ししています。

3. 作物選択と集中戦略

輸出額トップのドリアンを筆頭に、ドラゴンフルーツ・バナナなど、国際的需要が高く高単価な品目に集中しています。例えば、ドリアンはタイやマレーシアと比べ栽培拡大スピードが早く、コスト競争力も高いです。

さらに、ベトナムでは農家と輸出企業の連携が進んでおり、品種改良や品質統一も強化されています。

4. 労働力と生産コストの競争力

ベトナムでは農業労働力が依然豊富です。そのため、人件費が低く単価を抑えながら利益を確保できます。

さらに、国内輸送コストも比較的低く、港や国境までの物流網が南部を中心に整備されています。

5. 政府の輸出促進政策

農産物の「輸出市場多様化」を国家戦略に掲げ、中国・韓国・中東・EUなどと市場開拓や検疫協定を積極的に締結しています。加工施設や冷蔵倉庫、物流センターへの投資も増加し、生鮮果物の長距離輸出が現実的になっています。

また、輸出統計や市場調査の公表頻度を上げ、企業の戦略判断をサポートしている状況です。

競合近隣国との比較

1. 地理と気候

  • ベトナム
    熱帯+亜熱帯、南北に長く多様な栽培環境/年中出荷可能、品目の幅が広い/台風・洪水の影響あり
  • タイ
    熱帯モンスーン、果物の種類は多い/ランブータンなど東南アジア果物の宝庫/農地の一部が乾季に干ばつ
  • フィリピン
    熱帯海洋性、主にバナナ・パイナップル向きで大量安定供給/台風リスク高、果物品目が限られる

2. 主力果物と輸出額

  • ベトナム
    主力:ドリアン、ドラゴンフルーツ、バナナ/2024年輸出額:約71.5億USD/ドリアンが牽引
  • タイ
    主力:ドリアン、マンゴスチン、ランブータン/2024年輸出額:約57億USD/ドリアン特化+観光消費も強い
  • フィリピン
    主力:バナナ、パイナップル/2024年輸出額:約29億USD/バナナが7割超えで依存度高く市場変動に弱い

3. 輸出市場

  • ベトナム
    最大市場:中国/陸路国境で鮮度保持可能/ 中東、韓国、豪州、EUなど広がり中
  • タイ
    最大市場:中国/ 海路輸送メイン/ASEAN、日本にも強い
  • フィリピン
    最大市場:日本、米国、中東/海路輸送メイン/日本市場に強いが、中国は弱い

4. コスト競争力

  • ベトナム
    労働コスト:低い/物流コスト:低い/生産性: 中〜高、特定品目は急拡大中
  • タイ
    労働コスト:やや高い/物流コスト:高い/生産性: 高品質安定だが拡大余地少
  • フィリピン
    労働コスト:低い/物流コスト:高い/ 生産性:バナナは世界トップ級の効率

5. 政策・制度対応

  • ベトナム
    輸出許可取得:中国向け検疫許可を迅速取得/政府支援:活発/加工投資:冷蔵・冷凍・乾燥加工施設が急増
  • タイ
    輸出許可取得:早いが柔軟性は低め/政府支援:観光と一体で支援/加工投資:進むが内需依存も大
  • フィリピン
    輸出許可取得:やや遅く官僚的/政府支援:重点はバナナ・パイナップル維持/加工投資:缶詰やジュース中心

おわりに

ベトナムは最大の輸出相手国の中国が陸路で繋がっています。そのため、他の近隣国と比較しても輸送コストを抑えることができます。中国の経済成長に支えられ、大幅にベトナムのフルーツ輸出が増加していると言えます。

今後も中国の経済は右肩上がりに成長する見込みです。それに合わせて、ベトナムの経済もどのように伸びていくのかウォッチするのはとても面白いでしょう。また、それに合わせてベトナム現地での中国企業の進出や中国人向けの商売がどのように動いているのかを見るのも面白いですね。

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