【ベトナム進出/移住】ベトナムの外資規制

【ベトナム進出/移住】ベトナムの外資規制

外国人がベトナムへ投資(進出)する場合、外資規制があります。そして、外資規制は禁止分野と条件付き参入分野に分かれているため、進出前にはチェックが必要です。もちろん、私も初めてベトナムに進出した時には、外資規制確認を行いました。

そこで、皆さんのベトナム進出の一助となればと考え、ベトナム進出に伴う「外資規制一覧」をまとめました。今回のジャーナルも最後までお読みいただければ幸いです。

はじめに

本記事は、公開時点で入手可能な情報および一般的な情報源に基づき作成しています。そのため、実際の事業計画や投資判断の際は、必ず専門家・当局への確認、最新法令の精査を行ってください。

なお、内容の正確性・最新性については万全を期しておりますが、法改正・通達変更等により実際と異なる場合があります。よって、本記事を利用したことによるいかなる損害についても、当方では責任を負いかねますので、ご了承ください。

外資規制とは?

「外国の企業や個人が、特定の国(この場合はベトナム)の国内で事業活動を行う際に、その国の政府が設けるさまざまな制限や条件のこと」です。

外資規制の目的

  • 国内産業の保護
    特定の産業(例えば、国の基幹産業や新興産業)が、外国資本によって支配されたり、競争によって衰退したりすることを防ぐため。
  • 国家安全保障の確保
    国の安全保障に直結する分野(例えば、通信、エネルギー、防衛関連など)への外国資本の過度な参入を制限するため。
  • 社会・文化的な配慮
    国民の生活や文化に大きな影響を与える分野(例えば、メディア、教育、医療など)において、国の管理下で発展させるため。
  • 技術流出の防止
    自国の重要な技術が海外に流出するのを防ぐため。

ベトナムの外資規制の特徴

ベトナムでは、長年にわたり外国からの投資を積極的に誘致していますが、上記の目的から特定の分野で外資規制を設けています。

  • 禁止分野
    外国資本が一切参入できない分野。国の安全保障や社会秩序に深く関わる分野が該当。
  • 条件付き参入可能分野
    外国資本の参入は認められるが、出資比率への上限や特定のライセンス取得、最低資本金などの条件が課される分野。金融、通信、一部の流通業などが該当。

これらの規制は、ベトナムが経済発展を進める中で、国内経済の安定と持続的な成長を図るために重要な役割を果たしています。そのため、ベトナムでのビジネス展開を計画する際には、自社の事業がこれらの規制に該当しないか、どのような条件を満たす必要があるのかを事前に確認することが極めて重要です。

禁止分野(外資100%禁止|25業種)

下記分野では、原則として外資による事業参入はできません。

  1. あらゆる形式での報道・ジャーナリズム活動
  2. 公共サービスに関する情報収集活動
  3. 国家の遺物、古物、宝物の調査、収集、購入、販売、修復、運送、展示、プロモーション
  4. 海産物の捕獲および開発(養殖・加工は条件付きで可能)
  5. 公共安全保障に関する調査サービス、警備サービス
  6. 天然森林の調査、評価および開発サービス
  7. 軍事物資、設備の生産、取引
  8. 麻薬物質の製造・取引
  9. 特定の中毒性精神薬に関する製造・取引
  10. 特定の化学物質、鉱物に関する製造・取引、使用
  11. 絶滅のおそれのある野生動植物、動物の標本に関する取引
  12. 売春事業
  13. 人身、人の身体組織、部分の売買
  14. 人の無性生殖に関連する事業活動
  15. 爆竹の製造・売買
  16. 債権回収事業(2021年の法改正により新たに追加)
  17. 農業・地方開発省の評価を受けていない家畜の遺伝子情報の調査や使用
  18. 軍隊と警察で使用する兵器弾薬、機器、資材、装備などの取引と、それらの製造に使用する特殊機器と技術
  19. 有害廃棄物の運搬、処理、保管、処分
  20. 公安、国防に関する秘密文書、情報、データの販売、交換、リース、公開、共有
  21. ベトナム国民の政治的権利の侵害となる事業活動
  22. ベトナムの国家主権、領土保全を侵害する事業活動
  23. ベトナムの社会主義体制を破壊する事業活動
  24. ベトナムの民族大団結を破壊する事業活動
  25. その他、ベトナムの法律により明示的に禁止されている事業活動

条件付き参入可能分野(59業種)

下記分野では、出資比率制限、事業範囲の制限、ライセンス要件、最低資本金、などの条件が課されます。

金融・保険・投資サービス

  • 銀行事業
  • 保険事業(外資100%可能だが、法定保険事業の取り扱い等に制限)
  • 証券事業(外資100%可能となる場合もあるが、条件あり)
  • 資産管理会社
  • 融資会社
  • リース会社
  • 外国為替取引

通信・放送・ITサービス

  • 通信ネットワークサービス(固定電話、移動体通信、インターネット回線など)
  • 付加価値通信サービス(インターネットコンテンツ、VoIPなど)
  • 放送サービス
  • テレビ・ラジオ番組制作
  • オンラインゲームサービス
  • サイバーセキュリティサービス

商業・貿易・流通サービス

  • 卸売業(原則外資100%可能だが、特定の品目や独占的流通契約に制限)
  • 小売業(原則外資100%可能だが、2店舗目以降の開設にENTが適用される場合あり)
  • フランチャイズ
  • マルチレベルマーケティング(特定の厳格な要件あり)
  • 輸出入関連サービス(原則外資100%可能だが、一部品目に制限)
  • 商取引仲介サービス
  • 倉庫サービス

運輸・物流サービス

  • 海上運送サービス
  • 航空運送サービス
  • 陸上運送サービス(道路・鉄道)
  • 内陸水路運送サービス
  • 港湾サービス
  • 空港サービス(航空管制を除く)
  • 国際宅配便サービス

専門サービス

  • 法律サービス(外資系法律事務所の設立は可能だが、ベトナム法に関する助言には制限)
  • 会計・監査サービス
  • 税務コンサルティングサービス
  • エンジニアリングサービス
  • 建築サービス(一部の建設活動を行う外国の請負企業は許可書が必要)
  • 測量・地図作成サービス
  • 広告サービス
  • 市場調査サービス
  • セキュリティサービス(公共安全保障に関する調査サービスは禁止)

観光・レジャーサービス

  • 旅行代理店サービス(国内外旅行)
  • 観光開発、リゾート運営

人材・不動産サービス

  • 労働者派遣サービス
  • 人材紹介サービス
  • 不動産取引、不動産仲介、不動産管理

製造業

  • 爆薬の製造(工業用)
  • 特定の化学品、危険物、有毒化学品の生産
  • タバコの製造(加工を除く)
  • 酒類の製造
  • 医薬品の製造
  • 医療機器の製造
  • 防衛・安全保障関連製品の製造

農林水産・加工業

  • 陸上での漁業養殖
  • 森林の植林、管理、開発(天然森林の開発は禁止)
  • 農産物の加工

教育・医療・環境サービス

  • 教育訓練サービス(幼稚園から高等教育まで)
  • 職業訓練サービス
  • 病院、診療所の運営
  • エンターテイメントサービス(電子ゲーム、カラオケなど)
  • 映画、ビデオ制作・配給・上映サービス
  • 博物館、美術館、図書館、アーカイブサービス
  • 廃棄物処理サービス(有害廃棄物処理は禁止)
  • 環境監視、分析サービス

*「禁止分野」と「条件付き参入可能分野」のリストは、ベトナム新投資法(61/2020/QH14)・政令31号(31/2021/ND-CP)を参考にしています。

重要な注意点

  • 個別法規の確認
    上記リストの各分野には、投資法以外にも、その分野を管轄する省庁の個別の法令(例:銀行法、通信法、建設法、教育法など)が適用されます。そのため、これらの法令による詳細な条件や制限を合わせてご確認下さい。
  • WTO公約
    ベトナムがWTOに加盟する際に約束したサービス分野の開放公約も外資規制の判断基準ですが、公約に反する形での規制は原則行われません。しかし、国家の安全保障や公衆の健康といった正当な理由があると、例外が認められる場合があります。
  • 事業ライセンス
    多くの条件付き分野では、投資登録証明書(IRC)の取得に加えて、事業開始前に別途「事業ライセンス」や「許認可」を取得する必要があります。そのため、プロセスが複雑化したり、裁量的な判断が介在したりするケースがあります。
  • 専門家への相談
    ベトナムへの投資を検討される際には、必ず現地の法律事務所、コンサルティング会社、会計事務所などの専門家にご相談ください。また、最新かつ正確な情報を入手されることを強くお勧めします。

外資条件の目安

  • 金融の場合:許可制・外資比率30~49%制限
  • 電力・輸送の場合:外資参入可能だがライセンス・最低資本要件あり
  • 教育・医療・法律の場合:現地資格や許認可条件が必須

また、詳細な情報等は、ベトナム計画投資省(MPI)が支援する “eRegulations Vietnam” や “MPIの公式ポータルサイト” でも、ご確認いただけます。

進出前に行うべきチェック

  • まず、対象業種がどちらのリストに入るかを確認
  • 次に、条件付き分野なら、外資比率・JV義務・許認可要件を全て確認
  • また、地域ごとの追加規制(例:省ごとの特別ルール)も確認
  • 合わせて、WTO・FTA・二国間投資協定による例外措置があるかを確認
  • 最後に、リーガルチェック+必要に応じて省庁レベルで事前意見照会を行う

原則、未リスト業種は自由参入です。しかし、事前調査と専門家によるリーガルチェック、省庁確認は失敗しない進出の鍵となります。そのため、上記の確認は行うようにして下さい。