
【体験談】「日本人だから信頼された」現地で感じたブランド力
「えーあなた日本人!?本当に来てくれたの!?」
これは、私がハノイで初めてベトナム人のお客の家に行った時に言われた言葉です。
私は以前は、日系企業の駐在員でした。駐在員とは言え、ベトナムを自ら選らんで来た支社長。そのため、仕事への姿勢や物事の見方は通常の駐在員とは少し違ったのかもしれません。
基本的に、日本人はベトナムで経営を行います。つまり、現場に立つのはベトナム人。このスタイルは多くの企業で見られます。このスタイルはビジネスにおいても王道のスタイルでしょう。
しかし、私の場合は小さなベンチャー企業でしたので、資金は限られていました。ベトナム人を雇用してしっかり準備して…そのような資金や時間はありません。自走する必要がありました。商売をベトナムでやっている感覚です。
前職はハウスサービスの企業ですので、サービスはお客さま宅で行われます。日本人が自ら客先へ行きサービスを提供する。そのような光景はまず当時のベトナムではありません。そのため、ベトナム人はびっくりして信じられないというような表情でした。もてなし方もすごく、どちらがお客かわからないくらいでした。
今回は、そのような不思議な環境の中で、ハノイで実際に経験した「日本人というだけで得られた信頼」について、そしてそこから見えた“日本ブランド”の持つ力と責任についてお話しします。
日本人=信頼できる 空気感
ベトナム人のお客と直接会ってまず感じたのは、「日本人に対するポジティブなイメージの強さ」です。正確な表現をすれば、ハノイでは「外国人が提供するもの=良いサービス・良い商品」という考えがあります。その中でも「日本のサービス・商品=特に良質」という感覚があるようでした。
お客の中には、「日本人を尊敬している」「日本人なら安心できる」という言葉がありました。もちろんこれは全員ではありません。サービス提供中はずっとそのサービスを見ているお客もいました。ですが、総体的に日本のサービスは良いサービスだと考えるベトナム人は依然多くいます。特に、35歳以上のベトナム人に多い印象です。
中には家に行くだけで、握手を求められたり、一緒に写真を撮ってもらうこともありました。何か問題が起きても、私が話せば笑顔になって落ち着くということもよくありました。これは私が日本人であるが故に起きた現象です。
なぜ、そこまで信頼されるのか?ベトナム人の視点
その後、現地の友人やスタッフに聞いてみたり、自分でも考えてみました。なぜ日本人にそこまで好印象を持つのか?共通点は次のようなものです。
・日本製品への信頼性(特にバイクへの信頼性が強く、ホンダのバイクは所有者も多い)
・日本への留学と出稼ぎ(現在訪日外国人トップのベトナム、何かと日本との関わりが強い)
・サービス業の日本の進出(イオンを筆頭に日本サービスが徐々に身近な存在になってきている)
つまり、長年の積み重ねによって、日本人=信頼できる、というイメージが形成されたというものです。これは、ある意味で「先輩たちが築いてきた日本ブランド」です。ただし、以下のようなこともわかりました。
・あくまで、35歳以上の年齢層に日本ブランドは強い
・どこかで日本と接点があるベトナム人に対して日本ブランドは強い
反対に日本ブランド力は若者層にはそこまで強くなく、また訴求性が少しずつ薄れてきていると感じます。これは日本ブランドのマーケティングの弱さを表しています。「日本ブランドは今がまさに正念場」というイメージを私は感じました。
信頼は“責任”
ただ、まだまだ日本人であるというだけでベトナムでは信頼されます。これは確かにありがたいことです。ですが、これは「評価」ではなく、「信用枠を先に渡されている」ということだと、私は考えます。
つまり、「裏切らなければ、その信頼は続く」が、何かの失敗が“日本人全体の評価”に影響を与えてしまう可能性があるということです。
実際、現地では日本人のサービス品質が悪かった例や、「名ばかりの日系企業」による不誠実な対応が話題になったことは何度もあります。だからこそ、日本人であることは“アドバンテージ”であると同時に、“覚悟”でもあるのだと、私は思うようになりました。
おわりに
信頼は一朝一夕には築けません。ですが、外国へ来て、日本という“国籍”が背中を押してくれるというのは非常に大きなアドバンテージです。“日本”が“ブランド”になるのは、ビジネスでも生活でもプラスに働くことは多いです。
ベトナムは日本よりもデジタル化が進んでいます。特に、デジタル広告やサービスの利便性の高さでは、日本よりも格上です。一方で、商品やサービスの“品質”は、日本の方が遥かに格上です。そしてこれこそが“信頼”に直結しています。
たとえ小さな仕事でも、真摯に・正直に・心を込めて、サービスやものづくりを行う。同時に、多くの人にその良さを訴求できるようにマーケティングに力を入れる。これが、海外でさらに「日本ブランド」を加速度的に広めることに繋がる思います。
MISSION.Hでは、信頼される“現地パートナー”として活動しています。ベトナム進出・調査・移住にまつわる、現地の奥深くまで入り込んだリアルな支援を提供しています。気になった方は、ぜひご連絡ください。