【現地情報】ベトナムで集客するなら、「売る」ことから考える

【現地情報】ベトナムで集客するなら、「売る」ことから考える

はじめに|「売りながら」を恐れない

商売を始めるとき、最初に大事なことは何でしょうか。

私は、まず「売上」だと思っています。

もちろん、利益も大切です。キャッシュフローも重要です。

しかし、そもそも誰もお金を払ってくれなければ、事業そのものが成立しません。
いくら商品やサービスの品質を高めても、誰にも知られなければ売れません。

だから私は、特に事業の初期段階では、商品やサービスを完璧に作り込むこと以上に、

「誰が買ってくれるのか」「どうすれば買ってもらえるのか」

を考えることが重要だと思っています。

これは、いわゆる「Customer Development」の考え方にも近いものです。

起業家のSteve Blankは、事業初期には顧客に直接向き合い、自分たちが立てた顧客課題や商品仮説を検証することが重要だと説明しています。最初から完璧な商品を作るのではなく、顧客からの「買う」という反応を確認しながら、必要に応じて商品を修正していく考え方です。

Y Combinatorも、スタートアップへの基本的な助言として「まずローンチする」「人々が欲しがるものを作る」「顧客と話しながら改善する」といった考え方を掲げています。

つまり、「作ってから売る」だけではなく、「売りながら学び、学びながら作り直す」という考え方です。

海外で事業をする場合、私は特にこの考え方が重要だと思っています。

「品質・時間・価格」だけではない

商品やサービスには、「品質・時間・価格」という3つの要素があると思っています。

品質を高くしようとすれば、時間もコストもかかります。
一方で、安く、早く提供しようとすれば、品質とのバランスを考えなければなりません。

私は日本での経験から、一般的な日本の消費者には、「良いものには、それなりの時間と価格が必要である」という考え方が、比較的受け入れられやすいように感じています。

もちろん、日本でも「安い・早い・便利」は重要です。
ただ、ベトナムで事業をしていると、ここにもう一つの要素が加わるように感じます。

それが、「便利さ」です。

PwCが、2025年にベトナムで実施した消費者調査では、価格が依然として購買判断の重要な要素である一方、利便性への需要も高まっているとされています。特に、サブスクリプションやオンデマンド型サービス、パーソナライズされた体験など、消費者の利便性を高めるモデルが注目されています。実際に、多くのベトナム人のお客様と接すれば、わかります。

また、同調査では、ベトナムの消費者は店舗とオンラインを組み合わせて購買する傾向があります。そして、若い消費者を中心にGrabやShopeeFoodなどを利用した自宅配送も広がっているとされています。事実、ベトナムに身を置く私も、この点は強く同意します。

つまり、ベトナム市場では単純に、「高品質なら高くても売れる」と考えるのではなく、

「品質・便利さ・時間・価格」

この4つのバランスを考える必要があるのではないでしょうか。

これは、私がベトナムで事業をしてきた中で感じていることの一つです。

まず市場に出る

では、このバランスを考えたら、次に何をするべきでしょうか。

私は「集客」だと思っています。

良いものを提供するために、社内の仕組みを完璧に整えてから市場に出る。
もちろん、それが必要な業種もあります。

しかし、特に資金に限りのある中小企業が海外市場に進出する場合、私はこの順番には少し疑問があります。

なぜなら、海外市場では、「自分たちが考えていること」と「現地の顧客が本当に求めていること」が一致するとは限らないからです。

日本で成功した商品だからといって、ベトナムでも同じように売れるとは限りません。
日本では当たり前だった価値が、ベトナムでは価値にならないこともあります。

むろん、逆もあります。私はそれを実際に痛感してきました。

だからこそ、仮説を持って市場に出て、実際の顧客の反応を見ながら修正することが重要です。

どこで集客するのか

SNS

ここからが本題です。

ベトナムで集客を考えるなら、まず、「人がどこにいるのか」を考えます。

2026年版のDataReportalによると、2025年10月時点でベトナムには約7,900万人のソーシャルメディア・ユーザー・アイデンティティが存在し、人口の約77.6%に相当します。

また、インターネット利用者は約8,560万人、インターネット普及率は84.2%でした。さらに、インターネット利用者の92.3%が少なくとも一つのソーシャルメディアを利用していたとされています。

Facebookについては、Metaの広告関連データをもとにしたDataReportalの分析で、2025年末時点のベトナムにおけるユーザー数は約7,900万人とされています。TikTokについても、18歳以上の広告到達可能ユーザーが約7,610万人とされています。

この数字を見るだけでも、ベトナムで集客を考えるなら、SNSを無視することは難しいと言えるでしょう。

そして、ここで重要なのは、「自分が売りたい場所」ではなく、「顧客が普段いる場所」に出るということです。

ShopeeやTikTok Shopも重要

ネット販売であれば、ShopeeやTikTok Shopも重要です。

Metricの2025年ベトナムEC市場データによると、Shopee、TikTok Shop、Lazada、Tikiの4大プラットフォームにおける2025年のGMVは約429.7兆VNDとなり、前年比34.75%増加しました。

そのうちShopeeの売上シェアは56.04%、TikTok Shopは41.31%でした。

特にTikTok Shopは、2024年の29%から2025年には41.31%までシェアを拡大しています。Metricは、この背景の一つとして「エンターテインメントと購買を組み合わせたモデル」の拡大を挙げています。

つまり、「商品を売る場所そのものが、メディアになっている」とも言えます。

ベトナムで集客=動画

ショート動画の重要性

では、その場所で何を見せるのか。

私は、ここで「動画」が重要になると思っています。特にショート動画です。

TikTokが2026年7月に発表したベトナム市場のデータによると、TikTok Shopの2025年GMVは前年比66%増加しました。また、ベトナムでは月間7,000万人を超えるユーザーがTikTokを利用しており、2025年にはTikTok内の検索経由の売上が前年比55%増加しています。さらに、ショート動画にショッピングカートを付けた動画の数も前年比45%増加しました。

これは非常に興味深い変化です。動画が単なる「広告」ではなく、

認知
↓
興味
↓
情報収集
↓
比較
↓
購買

という一連の行動の入口になっているからです。

TikTok自身も、ベトナムの消費者の76%が「リアルなコンテンツ」に触れた後、商品を検索したり、クリックしたり、カートに追加したりする傾向があると発表しています。また、95%のベトナム消費者が、リアルなコンテンツが購買意思決定に直接影響すると回答しています。

もちろん、これはTikTok自身が公表したデータなので、その点は差し引いて見る必要があります。

それでも、「動画を見る場所」と「商品を探す場所」が近づいているという変化は、ベトナムで集客を考える上で無視できないでしょう。

「長い動画は見られない」とは考えない

私は以前、「ベトナムでは長い動画は見られない」と考えていました。
しかし、これは少し言い過ぎでした。

重要なのは、「長いか、短いか」だけではありません。
「その人が、その動画を見る理由があるか」です。

もちろん、ベトナムで集客をするなら、ショート動画は非常に重要な選択肢です。
しかし、商品によっては長尺動画、レビュー、解説、インタビューなども必要になります。

「短くすれば売れる」のではなく、目的に合わせて、顧客が見る形式を選ぶ。

これが正しい考え方だと思います。

動画は「一発勝負」ではない

では、どんな動画を作ればいいのでしょうか。

ここで重要なのが、最初から正解を当てようとしないことです。
自分が売る商品の領域は、ある程度決まっているはずです。

  • その領域で再生回数が多い動画。
  • インタラクションが多い動画。
  • コメントが多い動画。
  • 保存やシェアがされている動画。
  • さらに、自分とは異なる業界でありながら、なぜか非常に伸びている動画。

こうしたものを徹底的に分析します。

  • 「なぜ、この動画は見られているのか」
  • 「最初の数秒で何をしているのか」
  • 「どんな構成なのか」
  • 「どんなコメントが多いのか」

こうしたことを見ていくと、自分が市場の中でどこにポジションを取るべきなのかが少しずつ見えてきます。

そして、

  • 動画を作る。
  • 出す。
  • 数字を見る。
  • また作る。
  • 少し変える。
  • また出す。

この繰り返しです。

つまり動画は、作って終わりではありません。
仮説を出して、数字を見て、改善する。その繰り返しです。

スポーツをしたことがある人なら分かると思います。
例えば、野球の素振り。ただ100回振ればいいわけではありません。

  • 少し角度を変えてみる。
  • バットの出し方を変える。
  • 体重移動を変える。
  • 構えを変える。

そして、少しずつ「当たる感覚」を探していきます。

勉強も同じです。

  • 同じ問題を何度も解く。
  • 似た問題を解く。
  • 間違えた箇所を見極める。
  • 弱い部分を強化する。
  • もう一度やる。

小さな修正を繰り返しながら、少しずつ正解に近づいていきます。

動画も同じ。最初から完璧な動画を作る必要はありません。
もちろん、方向性は必要です。

  • 誰に何を伝えるのか。
  • どの市場を狙うのか。
  • 自分の商品にはどんな価値があるのか。

そこを決めた上で、あとは市場に出します。
そして、反応を見ながら小さな「あたり」を探していく。

私は、これがベトナムにおける集客の本質の一つだと思っています。

最後に、一つ気づいたこと

最近、ベトナムで集客が上手くいっている人たちを見ていて、一つ気づいたことがあります。

それは、彼らがあまり、

  • 「ベトナム人を集めています」
  • 「ハノイっ子を集めています」

という言い方をしないことです。

もちろん、ターゲット設定は必要です。年齢も、所得も、住んでいる場所も、興味関心も考えます。
しかし、最終的に顧客が求めているものは、「ベトナム人向けの商品」ではありません。

  • 自分にとって必要な商品。
  • 自分にとって便利なサービス。
  • 自分が欲しいと思う体験。

そこに価値を感じて、お金を払います。

本当に売れている店、本当に売れている商品は、人種に関わらず売れています。

だからこそ、私は海外で集客するときに、

「現地人を集める」という発想から、あえて少し離れた方がいい

と思っています。

「ベトナム人だからこうする」のではなく、

「この市場にいる人たちは、何を見て、何に反応し、何にお金を払うのか」

を見ることです。国籍ではなく、行動を見る。そして、仮説を立てて、市場に出す。
反応を見る。修正する。また出す。これを繰り返す。

もう一度言います。優れた商品やサービスは、国籍だけを理由に売れるものではありません。
逆に言えば、優れた集客も、国籍だけを理由に設計するものではないと思っています。

海外で事業をするからこそ、まず市場を見る。
そして、売る。売りながら学ぶ。学んだことを、また商品と集客に反映する。

私は、それがベトナムで事業を始めるときの、非常に基本的な考え方だと思っています。

参考データ