【体験談】ハノイはなぜ治安が良いのか?

【体験談】ハノイはなぜ治安が良いのか?

はじめに

『ハノイって、なんでこんなに治安が良いんだろう。』

私はハノイに住んで、間もなく3年になります。
この間、暴力事件に遭遇したことも、危険な目に遭ったこともありません。

夜に外を歩いていても、私自身は日本と大きな違いを感じることはありません。

もちろん、スリやひったくり、詐欺などの軽犯罪はあります。
しかし、その多くは外国人だけを狙った犯罪というより、日本でも見られるような軽犯罪です。

では、なぜハノイは東南アジア有数の大都市でありながら、比較的治安が良いのでしょうか。

本記事では、犯罪データや政治体制、公安制度、そして過去の歴史をもとに、その理由を事実ベースで整理していきます。

本当にハノイは治安が良いのか?

世界中の利用者が犯罪や安全性を評価している“NUMBEO”では、ハノイはホーチミンよりも犯罪指数が低く、安全指数が高いという結果になっています。

2026年8月3日現在、”NUMBEO”によれば、ハノイはオーストラリアのシドニーよりも犯罪指数が低いという結果です。

もちろん、”NUMBEO”は公式統計ではありません。
しかし、世界中の居住者や旅行者が評価しているため、「実際に住んで感じる治安」を知る一つの指標として広く利用されています。

日本の外務省もベトナム全土を「危険情報レベル0」としています。
ただし、スリやひったくりなどの軽犯罪への注意喚起は行われています。

つまり、「一定の防犯意識は必要だが、渡航自体を控えるような治安状況ではない」というのが、公的機関の評価です。

ハノイはベトナムの政治の中心

ハノイの治安を語る上で、最も重要なのが「首都である」という点です。
ベトナムの人口は約1億人。その国家中枢機能のほとんどが、ハノイに集中しています。

例えば、

  • ベトナム共産党中央本部
  • 国会
  • 国家主席府
  • 首相府
  • 各省庁
  • 外国大使館

など、国家運営に欠かせない施設が集まっています。
これは東京に国会議事堂や首相官邸があるのと同じです。

つまり、ハノイで大規模な事件や暴動が発生すれば、「国家の安定」に関わる問題になります。
そのため、首都ハノイでは他都市以上に治安維持が重視されています。

もちろん、これはベトナムに限った話ではありません。
首都は一般的に警備体制が厚く、政府施設周辺では警察や警備部隊の配置が強化されています。

ハノイも同様に、「国家の中枢を守る都市」という役割を担っているのです。

その結果として、市内では交通警察や公安を見かける機会が少なくありません。
また、外国人でも「警察が多い街」という印象を持つことがあるのです。

これは、「首都として当然の警備体制」であるとも言えます。

ベトナムの公安という組織

「ハノイは公安が多い。」

ハノイに住んでいると、このような話を耳にすることがあります。

実際、市内では交通警察を中心に、公安を見かける機会が日本より多いです。
そのため、「警察の存在感が強い国」という印象を受ける人も少なくありません。

その理由の一つは、ベトナムの公安 “Cong an” が、日本の警察とは異なる組織だからです。

日本では、

  • 警察庁・都道府県警察
  • 出入国在留管理庁
  • 公安調査庁

など、役割ごとに組織が分かれています。

一方、ベトナムではこれらの多くの機能を公安省 “Bo Cong an” が担っています。

公安省の主な任務には、

  • 犯罪捜査
  • 刑事警察
  • 交通警察
  • 国家安全保障
  • テロ対策
  • 出入国管理
  • 外国人管理
  • 身分証明・住民データベース管理

などが含まれています。

つまり、日本で複数の行政機関が担当している業務を、一つの省庁が幅広く担当しているのが特徴です。
このため、「公安」という言葉を日本語の「警察」とだけ訳すと、実際の役割を十分に表しているとは言えません。

公安省は、治安維持だけでなく国家安全保障まで含めた広い権限を持つ組織なのです。

なぜベトナム公安の権限は強いのか

ベトナム公安は、日本の警察と比較すると、より幅広い権限を持つ組織です。
その背景には、ベトナムの政治体制があります。

ベトナムはベトナム共産党による一党制国家です。
憲法では、ベトナム共産党が国家と社会を指導する立場にあることが定められています。

この体制では、国家が重視するのは「社会の安定」と「公共秩序」の維持です。
もちろん、犯罪を取り締まることも重要ですが、それだけではありません。

公安省には、

  • 国家安全保障
  • 社会秩序の維持
  • テロ対策
  • 重要施設の警備

なども重要な任務として与えられています。

これは、「犯罪が起きてから対応する」というよりも、「社会の混乱を未然に防ぐ」という考え方に近いと言えます。

ベトナムでは、公安・検察・裁判所が、それぞれの役割を担いながら刑事司法制度を構成しています。
また、国家安全保障や社会秩序の維持は国家の重要政策と位置付けられており、こうした事案では迅速な対応が取られる傾向があります。

一方、日本の警察は、「捜査手法の適法性」が厳しく問われ、令状主義が徹底されています。
警察が捜査を行い、検察官が起訴・不起訴を判断するという「警察と検察のチェック機能」が比較的明確です。

他にも様々な違いがありますが、ベトナムでは公安が社会の様々な場面で存在感を示しているように感じられます。

過去のハノイは今ほど安全ではなかった

実は、ハノイには治安が悪い時期もありました。

特に、1990年代から2000年代初頭にかけての頃です。
この時期、ハノイでは市場や繁華街を拠点とする犯罪組織が活動していました。

代表的な人物として知られるのが、

  • カイン・チャン “Khanh Trang”
  • フック・ボー “Phuc Bo”

などです。

カイン・チャンは、市場の管理や用心棒業を背景に勢力を拡大し、恐喝や暴力行為などで知られていました。
その後、公安による大規模な捜査が行われ、1990年代後半には組織は摘発、本人も有罪判決を受けています。

また当時はハノイだけでなく、ハイフォンやホーチミンでも「*giang ho」の摘発が相次いでいました。

そのため、1998年には政府が国家犯罪防止プログラム(So: 138/1998/QĐ-TTg)を策定し、組織犯罪や暴力犯罪への対策を国家レベルで強化しました。

つまり、現在のハノイの治安は、犯罪組織への継続的な取締りや制度整備を経て築かれてきたものと言えます。

おわりに

ここまで見てきたように、ハノイの治安は一つの理由だけで説明できるものではありません。

  • 首都であり政治・行政の中心であること
  • 公安省が幅広い権限を持ち、治安維持を重視していること
  • 1990年代以降、組織犯罪への継続的な取締りが進められてきたこと

これらの理由の他にも、

  • 地域社会のつながりによる非公式な社会統制が一定程度残っていること
  • 経済発展と都市インフラの整備が進んできたこと

も理由に挙げられるでしょう。

そして、これらが複合的に重なり、現在のハノイの治安が形成されていると考えられます。

海外進出先を検討する上で、「治安」は重要な判断材料の一つです。
本記事が、ハノイという都市を客観的に理解する一助になれば幸いです。

また、現地を知らずに進出を判断するのではなく、「実際に見て、知って、判断する」ことが重要です。

MISSION.Hでは、ベトナム進出に向けた現地調査や視察サポートを行っています。
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